企業価値向上や持続的成長のために、ますます重要性が高まっている「人的資本投資」。そうした中、2023年5月に政府が『三位一体の労働市場改革の指針』を取りまとめた。この改革は、「雇用形態」、「賃金」、「労働移動」といった従来の雇用システムの変革を目指すものである。これを機に、企業には更なる“人的資本投資の強化”が求められるようになるだろう。本講演では、厚生労働省の中井雅之氏と、働き方改革研究センターの伊藤健二氏が、「三位一体の労働市場改革」のポイントやインフラ整備、労働市場改革に向けた人的資本投資の効果などを解説する。
なぜ日本企業の“人的資本投資”は遅れているのか。労働市場改革のための3つの柱と「データエビデンス」の重要性

「労働市場改革」に向けた“人的資本投資”の効果

厚生労働省 政策統括官(総合政策担当)付 労働経済特別研究官 中井 雅之氏

労働市場の現状と企業の課題点

なぜ日本企業の“人的資本投資”は遅れているのか。労働市場改革のための3つの柱と「データエビデンス」の重要性
はじめに、「労働市場の現状」についてお話しします。日本は既に人口減少社会となっている一方、近年では女性や高齢者の労働参加が進んだこともあり、労働力人口・就業者数は2019年まで増加傾向にありましたが、2020年以降はその傾向が鈍化しました。コロナ前から続いていた人手不足は、コロナ禍で一時的に過剰となりましたが、その後は再び人手不足感の高まりが見られます。また、日本社会でいま大きな課題となっているのが、「賃金が上がらない」ことです。この20年間、日本の賃金はほぼ横ばいで、主な先進国と比較しても取り残されているような状況が続いています。

こうした中、日本においては、企業は従業員に対して学ぶ機会を与えず、従業員も学ばない傾向が強いというのが現状です。民間企業における教育訓練費の割合の推移をみると、1980年代には上昇していましたが、90年代以降は低下・横ばい傾向にあります。

次に、転職者数の推移をみると、コロナ前までは増加傾向にありましたが、2020年から大幅に減少し、2022年は3年ぶりの増加となりました。

また、従業員の働きがいなどメンタル的な健康度を示す「従業員エンゲージメント」を国際比較した調査によると、日本企業は世界全体でも非常に低いスコアとなっています。そうした中で、企業にとっては「働きがい」をもって働くことのできる環境づくりが不可欠となるでしょう。働きがいを向上させることで、「定着率」、「離職率」、「ストレス」、「労働生産性」、「顧客満足度」などが改善する可能性もありますので、企業はそういった点に取り組む必要があるでしょう。

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