少子高齢化により労働人口が減少する中、新卒採用においても学生が有利な売り手市場が続いています。そうした中、企業が優秀な学生にアプローチし、自社を選んでもらうためには、現在の学生の本質を理解し、マッチング精度の向上を図ることが必要不可欠です。そこで本講演では、神戸大学大学院経営学研究科 教授の服部泰宏氏をお招きし、採用力の要件や学生に選ばれるためのポイント、Z世代の意識やニーズなどを採用学の観点から解説いただきました。
2025卒採用に向けて採用トレンド・課題を把握する

企業が採用を行う理由と、組織を活性化するメカニズム

はじめに「企業はなぜ採用するのか?」について考えてみたいと思います。
まず1つ目の理由として、「企業が設定した目標と経営戦略を実現するために、ある時点で不足している、あるいは将来時点で不足すると予想される分の人材を獲得する」というものが挙げられるでしょう。
そして2つ目の理由として挙げられるのが「職場や組織の活性化」のためです。経営学の古典的研究では、一つの職場に同じメンバーが長期にわたって所属し続けると、ディスカッションや情報交換の頻度が下がり、外部に対しても閉塞的になり、人間関係における緊張感がなくなることが報告されています。

一方で、意識的にきちんと採用活動を行わなければ、組織は必ずしも活性化しないことも分かってきています。それを理論的に説明しているのが、シュナイダーのASA理論です。組織文化は、惹きつけ(Attraction)、選抜(Selection)、自然減(Attrition)というメカニズム(ASA)によって維持されると言われています。もう少し詳しくご説明すると、まず惹きつけ(Attraction)のフェーズでは、企業による募集情報の提示と求職者による自己選択が行われ、続いて選抜(Selection)のフェーズでは、企業による求職者の選抜と求職者による企業の選択が行われます。そして自然減(Attrition)のフェーズでは、内定辞退や退職などを通じて異質なものが徐々に削ぎ落されていく。その結果、同質性がどんどん強まり、個人が組織に馴染み、業績が上がっていきます。

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