ProFuture代表の寺澤です。
先月、大企業の採用責任者数名とお話しする機会があり、現在の2024年卒採用の状況を話題にしたところ、「いや~、今年は本当に苦労していますね」との声を多くの方から聞きました。就職ナビが実施する就活生の内定率調査の結果が定期的に報道され、例年以上に早いペースで内定率が上昇していることは皆さんもご存じでしょう。企業の採用活動が早期化しているため、それだけ企業の内定出しが早く進んでいるのは確かですが、すべての企業の採用活動が同様に早期化しているわけではありません。
第148回 新卒採用の「早期化」が「長期化」を招く原因にも。採用の現場で人事担当者が苦労している点や学生への所感とは
人気企業や学生の第一希望の企業の選考が進まない場合、内定を出した学生からの内定承諾は遅れ、1カ月以上待たされた末に内定辞退というケースも多くあります。中には、理系の大学推薦経由で応募してきた学生ですら、内定を辞退することもあるという報告もありました。推薦応募の学生の内定辞退など、これまでであれば考えられなかった事態ですね。

選考の「早期化」は、決して採用活動の「早期終了」につながるわけではなく、「長期化」を招く原因にもなっているようです。採用担当者の切実なコメントや具体的なデータについては本編で詳しく紹介します。

採用ホームページを重視する大企業

さて、今回は、HR総研が人事採用担当者を対象に2023年6月に実施した「2024年&2025年新卒採用動向調査」の結果から、2024年卒採用のトピックを紹介します。

まずは、「2024年新卒採用で重視した施策」から見ていきましょう。[図表1]は、全体の回答結果と、他の企業規模と異なる傾向を示した1001名以上の大企業の回答結果だけを並べることで、比較しやすくしています。
図表1 2024年新卒採用で重視した施策(複数回答)
全体、大企業ともに最も多かったのは「自社採用ホームページ」でした。しかし、全体の48%に対して大企業では64%となり、16ポイントも差があります。ちなみに、301~1000名の中堅企業では47%と全体とほぼ同じですが、300名以下の中小企業では37%にとどまり、大企業とは30ポイント近い差が生じています。大企業はセミナー・会社説明会や面接を対面形式ではなくオンライン形式で実施することが多く、採用ホームページでいかに自社の仕事内容や会社の魅力、社員の紹介を効果的に伝えていくかを重視した取り組みを行っているものと推測されます。近年では、よりリアルに情報を伝えられることから、動画コンテンツにも注力しています。

その他、全体よりも大企業のほうが重視している施策としては、「オンライン型のインターンシップ」(全体:16%、大企業:31%)、「リファラル採用」(全体:9%、大企業:19%)、「リクルーター(OB/OG)の活用」(全体:8%、大企業:19%)などがあります。

ターゲット層に変化は見られるも、企業規模によって理由に違い

さて、コロナ禍や事業変革、DX推進の流れなど、社会情勢や企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する中で、新卒採用における各企業のターゲット層となる学生の条件は、これまでと比べて変化しているのでしょうか。

全体の回答を見ると、「変化してきている」(9%)と「やや変化してきている」(33%)を合わせた「変化あり」派(以下同じ)が42%となり、「変化していない」(12%)と「あまり変化していない」(25%)を合わせた「変化なし」派(以下同じ)が37%と、やや「変化あり」派のほうが多くなっています[図表2]。企業規模別に見ると、「変化あり」派の割合は、大企業で40%、中堅企業で45%、中小企業でも44%と、規模による差異はそれほど見られません。昨年同時期の2023年卒採用の調査では、「変化あり」派の割合は、大企業で48%、中堅企業で37%、中小企業では34%となっていましたので、中堅企業・中小企業においても変化させざるを得なくなってきていることがうかがえます。

一方の「変化なし」派は、大企業で26%、中堅企業で36%、中小企業では45%と、企業規模が小さくなるほど「変化なし」派の割合が高くなっています。この傾向は2023年卒採用と変わっていません。
図表2 ターゲット層となる学生の条件の変化(単一回答)
では、ターゲット層が変化してきている主な理由は何なのでしょうか。複数選択で回答してもらったところ、従業員規模により大きく異なる結果となりました[図表3]。中堅・中小企業では、「入社後のミスマッチ防止対策」がいずれも47%で最多だったのに対して、大企業では29%にとどまっています。大企業で最も多かったのは、「事業変革に伴う人材要件の変更」で42%、次いで「DX推進等による理系人材のニーズ増加」が35%で続きます。「事業変革に伴う人材要件の変更」は、中小企業でも38%と比較的高いものの、中堅企業では中小企業よりも低い27%となっています。さらに、「DX推進等による理系人材のニーズ増加」は、中堅企業13%、中小企業18%と、大企業(35%)の半分程度かそれ以下にとどまっています。「オンライン採用による地域間格差の解消」は、オンライン説明会やオンライン面接の実施割合や応募者の地域的広がりにも影響されますので、大企業の32%に対して、中堅企業23%、中小企業では15%と、企業規模が小さくなるにつれ低くなる傾向が見られます。
図表3 ターゲット層が変化してきている主な理由(複数回答)

大企業の4割がリファラル採用に注力

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