ChatGPTは様子見の企業が大半

新卒採用において、多くの企業が応募意欲の確認や書類選考の手段としてエントリーシート(ES)を活用しています。企業規模ごとに見てみると、「ESを導入していない」とする企業は、大企業では7%、中堅企業でも28%と少数派ですが、中小企業では61%と6割以上が導入していないことが分かります[図表6]。中小企業では「ESを導入していない」企業のほうが多い傾向にありますが、これは応募のハードルをわざわざ上げる必要性をあまり感じていない企業が多いためと考えられます。
図表6 エントリーシートの通過率と「導入していない」割合(単一回答)
具体的な通過率を見てみると、「100%(全員通過)」は大企業で10%、最も割合の高い中堅企業でも19%となっています。中小企業ではそもそもESを導入している企業は4割未満であり、「100%(全員通過)」は15%ですが、「80~100%未満」を合わせると24%となり、ES導入企業の61%は「ほぼ通過」となっています。中堅企業でも「80~100%未満」が19%で、「100%(全員通過)」と同じくらいの割合となっており、ES導入企業の半数以上が「ほぼ通過」としているようです。

一方、大企業で最も多い割合を占めるのは「40~60%未満」であり、ES段階の選考で落とされる割合が約半数となっています。「100%(全員通過)」と「80~100%未満」を合わせた「ほぼ通過」は24%にとどまり、ESは主に応募者を絞り込む手段として導入されていることが分かります。

最近注目されている会話型生成AI「ChatGPT」は、就職サイト等のエントリーシート作成サービスなどで活用されているほか、学生自身でもChatGPTを使ってエントリーシートの文章を作成することが可能です。では、書類選考の手段としてもエントリーシートを活用している企業側は、ChatGPT対策を行っているのでしょうか。

エントリーシートにおけるChatGPT対策の有無を調査したところ、すべての企業規模で「様子を見ている」と回答した企業が最も多く、大企業・中堅企業では約65%、中小企業でも54%が「様子を見ている」と回答しました[図表7]。一方、「対策をしている」と回答した企業は大企業でも8%と1割にも満たず、中堅企業では3%、中小企業に至ってはゼロという結果になりました。
図表7 エントリーシートにおけるChatGPT対策の有無(単一回答)
逆に、「対策する予定はない」と回答した企業は、大企業では15%と少数派ですが、中堅企業では32%、中小企業では42%となっています。企業規模が小さいほど、対策を諦めた企業が多い傾向があります。対策する場合でも、「文面の内容を改めて面接で確認し、齟齬(そご)がないか、自分自身の言葉で話しているかを確認する」(情報処理・ソフトウェア)という声に代表されるように、面接で候補者を見極めることに重点を置いているようです。仮に、ChatGPTの使用有無を確認できたとしても、実際にChatGPTで生成された文章をどの程度使用しているのか、カスタマイズしているのかは判別できません。そのため、エントリーシート自体で対策をすることは難しいといえます。今一度、エントリーシートの在り方を考え直す必要があるでしょう。

中小企業の最終面接は、ほぼ対面形式で実施

今度は面接に関する結果を見ていきましょう。まず、面接の実施時期(予定を含む)についてです。面接時期を複数選択で回答してもらった結果を[図表8]に示しました。
図表8 面接実施時期(複数回答)
企業規模によって、面接のピーク時期が異なります。大企業では、「2022年12月」から20%以上の企業が早くも面接を実施しており、「2023年1月」には33%に達し、その後も30%台が続き、「2023年4月前半」には43%と4割を超え、「2023年4月後半」にはピークとなる50%を記録しました。その後、「2023年5月前半」以降は30%台に低下し、「2023年7月前半」からはさらに20%台にまで落ち込みます。

中堅企業では、「2023年1月」に23%、「2023年3月前半」32%、そして「2023年3月後半」45%と増加し続け、ピークは「2023年5月後半」の53%でした。その後は30%台に落ち着きました。大企業と比較して、ピーク時期が1カ月遅れています。

中小企業はというと、顕著なピークはなく、「2023年3月後半」になってようやく23%となり、その後は2~3割程度で推移しました。採用人数が少ない企業では、面接期間が長期化することなく、特定の時期に面接を集中的に実施することができた企業も少なくないと推測されます。

次に、面接の形式についても見てみましょう。コロナ禍では、最終面接を含むすべての面接をオンライン形式で実施した大企業も多かったのですが、2024年卒採用ではどのような状況だったのでしょうか。比較のために、大企業と中小企業について、「一次・二次面接」と「最終面接」に分けて、それぞれ面接形式を聞いた結果が[図表9]です。
図表9 面接形式の比較(単一回答)
大企業では、一次・二次面接は36%が「オンライン形式を主軸に対面形式でも実施」と回答し、さらに「オンライン形式のみ」を合わせた「オンライン形式」派は64%を占め、「対面形式のみ」はわずか10%でした。ところが、最終面接になると、状況は大きく変わります。最終面接では、最も多い回答が「対面形式のみ」の57%であり、「対面形式を主軸にオンライン形式でも実施」を含めた「対面形式」派は71%となり、一次・二次面接時の割合と比較して大きく逆転しました。以前から、企業や学生の両方がオンライン形式だけでは訴求や理解が不十分だという意見がありましたが、それが払しょくされた形になっていることが分かります。

一方、中小企業では、一次・二次面接ですでに「対面形式のみ」が最も多く40%を占めており、「対面形式を主軸にオンライン形式でも実施」を含めた「対面形式」派は67%と3分の2に達しています。最終面接ではこの傾向がさらに加速し、「対面形式のみ」だけでも85%を占め、「対面形式を主軸にオンライン形式でも実施」をも含めると、実に93%が「対面形式」派となり、ほぼコロナ前の状態に戻っているといえます。2025年卒採用では、大企業でもさらに「対面形式」派が増えるでしょう。

内定辞退率50%の大企業で3割

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