仕事を円滑に進めるために欠かせないビジネススキルの一つが、「コミュニケーションスキル」だ。社会環境やビジネス環境が大きく変わりゆくなか、その重要性がますます高まっている。企業が行う採用面接でも、最重点評価項目に位置づけられ、人材育成を進めていく上でも重きを置かれている。そこで今回は「コミュニケーションスキル」に着目し、その意味合いからスキルの種類、能力アップのポイントなどを一挙に解説していきたい。
「コミュニケーションスキル」とは? 人事が研修に向けておさえておきたい種類や能力アップのポイントなどを解説

「コミュニケーションスキル」が高い人・低い人の特徴とは

「コミュニケーションスキル」とは、相手との情報共有や意思疎通をスムーズに行うための能力や技術を意味する。相手に、自分の想いや持っている情報を上手く伝えることに重点を置きがちだが、それだけではない。相手からしっかりと情報を受け取ることもポイントになる。

また、性格的に内向的な人よりも外交的な人の方が「コミュニケーションスキル」が高いと思われがちだが、これも一概には言えない。相手の話を聞かずに、自分だけが一方的に話しているようでは、そもそもコミュニケーションが成り立っていない。むしろ、口数が少なくても、相手の気持ちを察しようとする姿勢があれば、会話のキャッチボールはできる。

●「コミュニケーション」の手段

「コミュニケーション」の手段は、言語と非言語に大別される。言語は、まさに言葉そのもの。言語を用いて会話をしたり、文章を読み書きしたりすることで、お互いの考えや価値観、知識を共有しあうことができる。

一方、非言語(ノンバーバル)とは目の動きや表情、身振り、手振り、声のトーンや抑揚などを言う。それらには、言葉には表されてない本人の真意が込められている。言葉以上に相手の本音が見えてきたりするものである。また、非言語は第一印象の形成にも大きな影響を与えるのだ。

このように、「コミュニケーション」の手段には二種類あるので、そのスキルを高めるには、言語領域のスキルを磨くだけでは十分ではない。非言語領域も重要になってくるだろう。

●「コミュニケーションスキル」が高い人の特徴

「コミュニケーションスキル」が高い人には、いくつかの共通した特徴がある。

(1)相手の話を聞くのが上手い
話し上手である前に、聞き上手である。話をどんどん引き出し、その想いをしっかりと受け止めてくれるので相手も心を開いてくれる。

(2)相手の気持ちを読み取れる
「コミュニケーションスキル」が高い人は、相手の言葉だけでなく、非言語な領域の情報からも相手の気持ちを素早く察していける。

(3)前向きな発言が多い
前向きな発言が多いのも、「コミュニケーションスキル」が高い人の特徴だ。当然ながら、周囲の人にも良い影響を与えてくれるので、信頼関係を築きやすい。

(4)自ら積極的に行動していける
人とどんどん関わっていくので、良いアイデアを取り入れ行動に移していく傾向が強い。

(5)わかりやすい話し方をする
「コミュニケーションスキル」が高い人は、話し方にも気を配っている。何を、どんな言葉で伝えるか。どんな表情、身振りをすれば良いかを常に工夫しているのだ。

(6)相手を楽しませようとする
人を楽しませる意識を持っていると、「もっとこの人と話をしたい」、「この人に私の話を聞いてもらいたい」と思うようになる。

(7)いつも気持ちに余裕がある
穏やかな性格の人と一緒にいる場合、思っていた以上に色々と話し込んでしまう。「コミュニケーションスキル」が高い人は、気持ちにゆとりを持って話す傾向にあり、相手に安心を与えていることにつながるのだ。

(8)結論から先に話す
「コミュニケーションスキル」が高い人は、結論から先に話す傾向が高い。端的に物事を伝えることで相手と共通認識を持ちやすくなる。

●「コミュニケーションスキル」が低い人の特徴

「コミュニケーションスキル」が低い人にも共通した特徴が見られるので、紹介しよう。

(1)相手が何を求めているのかを読み取れない
「コミュニケーションスキル」が低い人は、相手が何を伝えようとしているのかを受け取るのが苦手だ。わからなければ質問をすれば良いのだが、それもできないことがある。

(2)自分だけで一方的に話しがちである
片方が話してばかりでは、相互理解につながらず、信頼関係も築くことはできない。それを理解しているつもりであっても、一方的に相手に話す傾向が見られる。

(3)自分のことをあまり話さない
「コミュニケーションスキル」が低い人のなかには、相手のことはあれこれ聞いても、自分自身のことはほとんど開示しないという人も多い。オープンなマインドがないと相手は本音を言いにくいものだ。

(4)自分の気持ちや感情を上手く表現できない
「コミュニケーションスキル」が低い人は、感情を言葉や表情で表現するのが苦手である。その結果、相手に「この人は何を考えているのかわからない」といったマイナスな印象を抱かせてしまう。

「コミュニケーションスキル」にはどのような種類があるのか

次に、「コミュニケーションスキル」の種類について見ていこう。

●伝える力

「書く」、「話す」などによって、自分が思っていること、言いたいことを相手に正確に、かつわかりやすく伝える力である。完結に伝えることができると、物事をスムーズに進められるだろう。

●論理的な表現力

ビジネスは自分一人ではできない。同僚や上司、顧客など、自分以外の人たちと一緒に進めていくことになる。それだけに、わかりやすく整理して相手に伝える論理的な表現力が求められる。

●感じの良さを表現できる力

これは、「好感表現力」と言い換えても良い。誰かから何かを依頼された時に、感じの良い人だと思わず協力したくなるだろう。相手に好感を持ってもらえるような態度・姿勢を表現できる力も重要になる。これも、大切な「コミュニケーションスキル」の一つなのだ。

●聴く力

これは、相手が伝えたい言葉を最後までしっかりと聴き、理解する力である。聞くではなく「聴く」という文字を用いていることがポイント。単に話を聞くのではなく、真摯に耳を傾けるという姿勢を意味する。

●非言語を伝える力

相手の言うことにしっかりと耳を傾けているという態度を非言語で伝える力を意味する。これには、“相手の目を見て聞く”、“相槌を打つ”などと言った対応も含まれる。

●非言語を読み解く力

相手の表情や言葉だけでは全ては見えない。むしろその裏に隠された真意をくみ取るために欠かせないのが、非言語を読み解く力だ。本心がどこにあるのかを推測できる。

どのような場面で「コミュニケーションスキル」は活きるか

ここでは、「コミュニケーションスキル」がどんな場面で役立つのかを紹介したい。

●人間関係の構築

仕事を円滑に進めるには、どうしても他者との良い人間関係の構築・維持が不可欠となる。そのためにも重要になるのが、「コミュニケーションスキル」だ。“相手の話をしっかりと聞く”、“相手が何を伝えたいかを理解する”、“自分の想いや気持ちも話す”。こうしたことが、お互いの信頼を築いていくベースとなってくる。

●説得力のある説明

ビジネスにおいては、説明や説得の比重が比較的大きい。それによって、相手の気持ちを動かし、何らかのアクションにつなげていかなければいけないからだ。同じ社内で働いていたとしても、考え方は違うことがあるだけに、説得力のある説明が必要となる。相手の様子をうかがったり、時にはこちらから質問をしたりして相手の理解度を確認することも重要だ。

●クライアントとの折衝や交渉

クライアントとの折衝や交渉の場でも、「コミュニケーションスキル」は大きな役割を果たす。クライアントの意図を理解するために、話をよく聞くだけでなく、疑問や不明な点があれば、質問して理解を深めていかなければいけないからだ。また、相手の意向も踏まえながら、自分が伝えたいことを正しく認識し、共有してもらえるような話し方、雰囲気づくりも大切になってくる。

●効率の良い会議

会議を効率良く進めるためにも「コミュニケーションスキル」が重要になる。相手の意見や発言を聞いて意図を正しく理解するとともに、自分の意見を分かりやすく伝えることで、参加者の納得感や合意を得られやすくなるからだ。

●情報の交換、共有

相手と情報を交換、共有する場面でも「コミュニケーションスキル」が活きてくる。ビジネスにおけるコミュニケーションは、相手と仲良くおしゃべりをすることではない。顧客から有益な情報を入手して新たな提案につなげたり、上司に報告・連絡・相談したり、部下に対して仕事の進め方をアドバイスして人材育成を進めていったりなど、何らかの成果を得るための手段である。その流れを円滑にさせるのが、「コミュニケーションスキル」と言える。

「コミュニケーションスキル」を向上させるうえで大事な要素とは

「コミュニケーションスキル」を向上させるためには、どのような要素が重要になってくるのか。いくつかポイントを取り上げてみたい。

●意思疎通

自分の意思や感情、情報を相手に伝え、相手からのリアクションも受け取り、お互いに理解を深める「意思疎通」は、「コミュニケーションスキル」を向上させるスキルとして、とても重要である。相手との意思疎通を心がけて接していくことで、良好な人間関係が構築していけると言って良い。

具体的なポイントとしては、“自分だけが一方的に話すのではなく相手の話もしっかりと受け取る”、“お互いがリラックスした雰囲気のなか話し合えるようにする”、“それぞれが言いたいことを言うのではなく、最後に方向性を集約する”といったことが挙げられる。

●協調性

良好なコミュニケーションを行うには、協調性も不可欠となる。意見や利害が異なった相手であっても尊重する気持ちを持って、お互いに譲り合い、歩み寄りながら会話を進めていく必要がある。それだけに、相手を見下したり軽んじたりする態度は控えなければいけない。また、商談先や社内でのミーティング、同僚との何気ない会話でも配慮は欠かせない。ふとした発言で組織やチームメンバーとの信頼関係が一瞬のうちに壊れてしまうことがあるからだ。

●自己表現力

「コミュニケーションスキル」を高めるためにも、自分をどう表現すれば良いかを考えることが重要と言える。自分自身では短所だと思っていることも、伝え方によっては相手の印象や評価が変わるからだ。ビジネスシーンでまず心がけたいのは、わかりやすさや明確さである。“相手に応じて言い回しや使う言葉を変えてみる”、“言葉で上手く伝えきれない部分は図形やイラストを用いて説明してみる”といった工夫をしてみてはいかがだろうか。

●番外編:オンラインコミュニケーションのコツ

コロナ禍により、リモートワークが広がったことで増えてきているのが、オンラインによるコミュニケーションだ。「表情が伝わりにくい」、「対面では気にならなかったところに目が行きやすい」、「相手から何度も聞き返されてしまう」などの難しさを感じている人も多いのではないだろうか。“対面の時よりも大きめに口を動かしてみて無表情に捉えられないように意識する”、“普段以上にゆっくりしたペースで話し単語や語尾をクリアに発音する”といったことも心がけてみたい。
「コミュニケーションスキル」はビジネスシーンで必要不可欠なスキルだ。“相手との信頼関係を作る”、“相手から情報や考えを聴く”、“自分の想いを相手に伝える”、“顧客と交渉する“など、どの場面でも役立つ。「コミュニケーションスキル」は意識することで高めることができる。もちろん、本人の人間性や考え方、習慣などにも関わってくるので、取り組んだからといってすぐに効果が出てくるものでない。常日頃から心がけ、長期的に着手していくことが大切になってくるだろう。
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