会社が実施する中高年社員向けサポートの具体策とは?
本シリーズ連載「人生100年時代を見据えた、中高年社員のキャリア形成」では、これまで2回にわたって中高年の「キャリア形成」について考えてきました。中高年社員を活性化するには本人の「闘う姿勢」を復活させることがポイントとなります。具体的な中高年社員向けキャリア形成サポートの内容は、まずは会社からの働きかけ、そして社外戦力を活用したマン・ツー・マンでのカウンセリングです。過去と現在の「CAN」と「MUST」を徹底的に見定めることが重要です。中高年社員が元気になれば、会社の雰囲気が変わってくるはずです。第3回となる今回は、中高年社員向けサポートの具体策をお話していきます。

中高年社員の「闘う姿勢」を復活させることがキャリア活性化の重要ポイント

会社の中でお荷物扱いされ、本人たちもかなり遠慮がちに業務を行っていることの多い中高年社員ですが、若いころからそうだったかと言うと、もちろんそんなことはありません。

それぞれが与えられた仕事に悪戦苦闘し、会社や職場のために粉骨砕身していました。すなわち「闘って」いたのです。ところが、出世レースから置いていかれたり、運が悪く自分の気の進まぬ業務に就いたりすることによって、いつしか「闘う姿勢」がなくなり、結果的に本人としても不本意な状況で会社に残り続けてしまっているケースもあるでしょう。そしてそのことを本人も十分に承知しているという、まさに会社、本人ともに不幸な状態が、今の典型的な状況なのではないでしょうか。

要するに、仕事をする「意味」「目的」が希薄になり、「給料をもらっているから働く」というマインドになってしまうのだと思います。

したがって、中高年社員の活性化を目指すときに重要なことは、働く意味や目的を再設定し、「闘う姿勢」を思い出してもらうことなのです。ただし、闘う意味・目的は、それまでの「出世のため」ということよりも、より広い意味での「会社への貢献」、そして自分自身の「キャリア形成」のためということになります。その上で、「目先の自分のやっている仕事が自分自身の将来のキャリア形成に繋がっていくのだ」ということを徹底的に理解してもらうことです。

「キャリア形成」サポートの具体的な方法とステップ

会社が中高年社員に対して働きかけをして始める、キャリア形成のサポートプログラムについて、以下で具体的に示します。

最初にキックオフとして、会社が中高年社員を集めて「人生100年時代」といった時代認識のような座学的なことを説くことから始めます。とはいえキャリア形成は極めて個別性の高いものであるだけに、マン・ツー・マンでの「カウンセリング」が中心になります。

ただし、注意しなければいけないのは、会社が中高年社員向けのキャリア形成のために用意するカウンセリングの機会は、会社から強制するものでも、完全に社員の自発性に委ねるものでもなく、その中間が適切です。

すなわち、
(1)会社がきちんとエネルギーやコストをかけて、中高年社員のキャリア形成のための「環境設定」(仕組みの構築)として行うこと
(2)そうした環境設定(仕組み)は会社の丸抱えではなく、社員自身が「身銭を切って」サービスを受ける形を取ることによって、「会社主導のため(だけ)」でなく(ヨコシマな人員整理を想起させることのない)「社員自身のため」のキャリア形成サポートとする
といった形が望ましいのです。

HR部署の方は、「身銭を切る」ことに対して驚かれるかもしれません。しかし、現在でもすでに、資格試験受験にあたって、受験料や受験のための学習に対して「補助金」を出す会社は少なくないでしょう。

それと同じで、「あくまでもキャリア形成の主体は社員本人、サポートするのが会社」ということを明確にし、身銭を切ってもらうことによって真剣にキャリア形成に取り組んでもらうことが必要なのです。

※わざわざ社内で補助の制度を作らなくても、ベネフィット・ワン社の福利厚生サービス(ベネフィット・ステーション)と契約があれば、弊社でもキャリア・カウンセリングのサービスをやっており、会社が社員に付与する「ポイント」を受講費に充当することによって、会社と社員が費用を分担するという形が既に出来ています

カウンセリングでは、過去と現在の「CAN」と「MUST」を見定める

キャリアに関する著書が多数ある北野唯我氏は、「キャリア形成にあたっては、『MUST』(現在の仕事)と『CAN』(出来ること)から始めて、その中で『WILL』(やりたいこと)を見つけ出すものだ」という趣旨の発言をされています。特に中高年社員の場合は、若手の場合よりも、さらに「CAN」(過去が中心)と「MUST」(現在)を徹底的に見定めることが重要です。

カウンセリングについては、以下の4つのプロセスを踏みます。
(1)キャリアの棚卸
過去から現在に至るまでの職務経験を細かく書き出す。

(2)1回目カウンセリング
書かれた職務経験について深く掘り下げ、他の経験・スキルと組合せれば使えそうな経験・スキルなのか、カウンセラーと一緒にアタリをつける。

(3)行動を起こして一歩踏み出す
自主的な学習、社内外の人へのヒアリング、SNSの開始(社会性開発)、副業の検討、プロボノのトライなど、とにかく動いてみることによって自らの意識を高め、かつ自分の「CAN」を拡げてイメージしてみる。

(4)2回目カウンセリング(フォローカウンセリング)
業界のキャリア事情、企業動向に詳しいカウンセラーのもと、「現実」と本人の「希望」のすり合わせを行い、「キャリア形成の今後のイメージ」「(現在の仕事への向き合い方、社内での異動など「会社を使い倒す」アイデアを含めた)今後の社内での仕事のしかた」「今後補強しなければいけないスキルと、その補強策」などを本人が文書でまとめる。

上記プロセスの内で注意すべきことは、次の通りです。

(@)履歴書を書くようにして、過去〜現在の経験・スキルをきちんと整理し、繋げ、これからキャリア形成を育んでいくための「ストーリー化」を図ること

(A)中高年社員の定年後の職探しでは、本人が「そこそこの規模の安定した会社」での「社員での雇用」しか経験がないことが常に足枷となる

しかし(A)に関しては、現実的で可能性のある定年退職後の働き口については、下記の可能性を知ることで視野が拡がります。

・青色申告で節税メリットを享受した個人事業主
・年金減額の心配もない業務委託のような契約形態
・フルタイムではない仕事ベースでの委託が複数の(リンダ・グラットン著「LIFE SHIFT」に書かれていた)ポートフォリオワーカー
・大企業宛の仕事ではなく、中小企業やベンチャー企業相手の仕事
・比較的安価な報酬

大企業でローテーションのもと長年働いてきた中高年社員は、スキルの深さの面で大企業の他社では即戦力となることができないケースが多いです。しかし、発想を変えて中小企業やベンチャー企業に絞ってみれば、磨けば使える経験が豊富なのです。人事、経理、総務といった管理系は中堅以下の会社では慢性的な人手不足ですし、営業体制の構築や営業結果の管理、監査、個人情報保護など、大企業で広く浅く培った経験・スキルが役立ち、「手伝ってもらって本当に助かった」と言われることも多いのです。

真面目にキャリア形成に向き合う前は、「自分なんて、今の会社から放り出された後に働けるところなんかないんじゃないか」と悲観的だったのが、上記の可能性について知れば「きっと働ける場所がある」とポジティブに考えられるようになるのです。

中高年社員のこうした意識改革やカウンセリングについては、社内の研修担当やHR部署が前面に出ると、どうしても生臭い感じがしたり、そもそも世間や他社状況についての話の説得力がなかったりします。そうならないためにも、社外戦力を思いっきり活用すべきでしょう。

出来れば、若手ばかりの研修/コンサルティング会社よりも、年配者が自分の経験で中高年社員に語り掛けてくれるような業者を選択するのが良いでしょう。

中高年社員が元気になれば、会社の雰囲気が変わってくる

これからの時代は「自立した社員と企業が、パートナーとして互いの成長を助け合う」という新たな関係性が必要です。もしそうなるとすると「企業が社員に出来る最大の福利厚生支援策は『キャリア形成へのサポート』である」とも言えるかもしれません。

今やっている仕事……それは過去、自分が懸命にやってきた仕事の延長であり、逆から言えば、今の仕事の中に過去の経験がたくさん詰まっているのだろうと思います。「将来のキャリアと地続きである目先の仕事を懸命にすることが、今後のキャリア形成にプラスになるはずだ」という気づきこそが、現在の仕事への取り組み方のポジティブな変化、キャリア形成への意欲を引き出し、ひいてはその中高年社員のビジネスライフに新たな価値を生み出すきっかけになるかもしれません。

そしてそのような中高年社員の変化が、若手社員のモチベーションも高め、会社全体の雰囲気も変えていけるのではないでしょうか。
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