コロナ禍という危機的状況は、これまで踏み切れなかった抜本的な経営改革に乗り出す一大チャンスだといえます。経営改革を成功させるには、どのような経営コンサルティングを伴走者に選ぶのかがポイントです。今でこそ数が増え、産業界での認知度も高い経営コンサルティング業界ですが、それは時代の変化に合わせ多様化を進め、対応領域を拡大してきた歴史によります。そこで、今回から2回にわたり、経営改革を促進する社外戦力の本命と呼べる、経営コンサルティング会社について、私自身の体験を交えて辿りながら、今日的で有効な活用方法を探っていくことにします。
コロナ禍こそ経営改革を。経営コンサルティング会社を活用のすすめ【前篇】

経営コンサルティング業界とはどのようなものなのか?

経営コンサルティング業界を俯瞰し、その多様性を理解するために、タイプ別に以下のように分類しました。


【総合系】
・戦略コンサルタント(経営計画、経営改革など……外資系など大きな会社が多い)
・総合型コンサルタント(会社内のありとあらゆる課題に対応……会計ファームが起源である会社が多い)
【シンクタンク系】
・日系シンクタンク(国や自治体を始め大企業中心として様々な課題に対応……旧財閥系など)
・国内独立系コンサルタント(シンクタンクほど大きくないが、国内では著名な会社)
【業務系】
・ITコンサルタント(社内では専門性が不足するIT分野での特化……かなり専門性高い)
【組織人事系】
・組織人事系コンサルタント(組織、人事系に特化)
【国内独立系】
・その他特定の分野に特化したコンサルタント(財務、医療、地域創成/まちづくり、企業PR/ブランド、店舗経営、マーケティング など)
・地域に根差した中小コンサルタント(少人数で地場企業、商店などを対象にする)


分類の仕方は人によってさまざまでしょうが、概ねこのような具合に分類できるのではないかと思います。

総務省統計局が令和元年(2019年)に発表した経済センサス基礎調査(※2)によると、コンサルタント事業所の数は、個人経営から大企業まで合わせて14,000超もあり、従事している人の数は約80,000名もいます。とりわけ、名の通ったコンサルティング会社の最近の社員数は増加しているようです。また、新卒採用においても銀行、大手の老舗メーカー、公務員などに対する人気の下落もあり、東大を始めとする有名大学の学生の就職希望会社のランキング(※2)で年々人気化している傾向があります。

経営コンサルティング会社の歴史を辿る

地歩を間違いなく固めてきた経営コンサルティング会社ですが、バブル崩壊以降の「失われた30年」の中で一度は導入しながら、結局は「あまり成果が出なかった」と嘆く方も多いのではないでしょうか。

まずは、私自身が送ってきた40年余のビジネスライフでの体験を交えながら、1960年代頃から紆余曲折を経て現在に至る経営コンサルティングの歴史を追ってみましょう。

(1)1970年代まで
20世紀半ばから日本能率協会(1942年設立)、日本生産性本部(1955年設立)などが生産分野中心のコンサルティングファームが活動をしていました。そのような中、1966年にボストン コンサルティング グループ、1971年にマッキンゼー・アンド・カンパニー、1972年にA.T.カーニーなど、外資系戦略コンサルティング企業が次々に日本に進出。開明的な企業にコンサルティングを行いました。

→私が勤めていた金融機関でも80年代前半に開明的な経営幹部の提案で外資大手を導入し、経営のフレームワークなどを紹介するも、経営者、社員の納得には至らず、結局提案を実践することはありませんでした。ただし、数年後に外国金融機関のM&Aの話が出た際、案件を持ってきた外資系コンサルティング会社にアドバイスをもらい、的確な判断が出来たのは成果だったと思います

(2)1980年代
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉が象徴するように、日本企業は黄金期を迎えます。この時代はシステム化の推進や業務の改善に強い、会計系コンサルティング会社の利用が拡大しました。

→勤めていた金融機関でも部門別経営といった収益管理のための業務コンサルを導入しました。また、資産運用という金融機関ではまだまだ黎明期のビジネスの体制構築のためにその分野ではナンバー1とも言われるコンサルティング会社を入れました(約20年後、短期間ですが、その会社に転職することになろうとは当然当時は知りませんでした)。

(3)1990年代
1991年のバブル崩壊により、急速に景気が後退しコンサルティング市場は大幅にシュリンクしました。そんな中でも、身の丈以上に拡大してしまった社内の体制を見直し、国際競争力を確保しようとする企業が、ERPや人員整理、事業再生、J-SOX法など内部統制などの対応に着手します。90年代後半にはこの動きが活性化し、縮小したコンサルティング業界にとってはこれが活路となります。

→90年代に勤めていた金融機関はバブル崩壊で会社が大きく痛み、再生のために一部日系コンサルタント会社の導入が検討されました。しかし、過去の導入からの学習もあり、経営改革は自社で行いました(私も、転職する2000年まで3回に渡って、そうした活動に自ら身を投じました)。

(4)2000年以降
企業ニーズが多様になったことを受け、コンサルティング業界も多様化が進んでいます。

→私自身、2000年に最初の転職を経験して以来、外資系、ベンチャー、サービス業大手、はたまたプロ野球球団、大学まで、様々会社、業態で勤めてきたが、会社の状況に応じて、いくつかのコンサルティング会社やコンサルティング会社出身の人と一緒に仕事をする機会も増えました。1960年代に外資系のコンサルティング会社が進出して以来年数を経て経営コンサルティングというものが日本の産業界でも完全に市民権を得た、ともいえます。しかし、一方でコンサルティング会社勤務経験者やMBAホルダーの増加、コンサルティングのナレッジも相次いで書籍化され、経営コンサルティングというスキル自体がコモディティ化しつつあるようにも感じられます(私自身、それまでの経験を踏まえ、2010年代半ばからは大学で経営について教える実務家教員にも就任し、そして定年で非常勤講師に退いた現在は、経営コンサルティングの会社を起業し、働いています)。

総じて言えば、産業界の変遷、トレンドに敏感に対応しながら、業務範囲を拡大、変化させて現在に至っているといえましょう。

経営コンサルティング会社は日本企業の役に立ってきたのか?

1991年のバブル崩壊以降、「失われた30年」を経て現在までの間に、経営コンサルティング会社(主に、戦略コンサルティング会社)によって企業の経営改革を成功してきたのでしょうか。

成功か失敗かはケースバイケースであるのは当然ですが、この30年もの間に、総じて日本企業の国際競争力は回復せず、例えばDXという今後の成長のドライバーへの対応も後手を踏んでいます。このような状況を鑑みると、お世辞にも「経営コンサルティング会社が経営改革の助けになった」と胸を張れるような状況ではないと思います。

長年、企業アナリストとして日本企業を調査、評価し続け、自らの経験の中で、経営コンサルティング会社と企業の関係を観察してきた者としていえるのは、次のとおりです。
●業務コンサルなどの専門的な領域ではなく、経営改革、構造改革いった企業の根本的な在り方の改革において、企業側が経営コンサルティング会社を上手く活用できてこなかった面があるのではないか
●それは、企業の側、特に経営者のレベルで、本当に経営改革について、覚悟を持って実行する気概に欠けていたことも大きく影響してきたようにも思える
●そして、経営コンサルティング会社の側も、「計画を策定し、高いコンサルティング・フィーを貰えればOK。経営改革を本気で実行するのは企業の側の責任」という「プロフェッショナルとしての立場をわきまえた」姿勢に終始し、本気で企業に寄り添い、企業の経営改革を達成するということではなかった


ここまで書いてきたところで、残念ながら紙幅が尽きてしまいました。本題である「経営コンサルティング会社を活用し経営改革を成功させる具体的な方法」については、次回述べることといたします。
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