就活の現実と建前を描く作品群
【佳作】の残り3作品です。やったこと すべてに理由 あるように 話す私は 少し嘘つき(東京都 無糖さん)
就活における自己演出の心理的負担や心の惑いを率直に表現した作品です。エントリーシートや面接では、すべての経験に明確な動機や学びがあったかのように語ることが求められますが、実際の学生生活はそれほど計画的ではありません。むしろ“なんとなくやったこと”のほうが多いくらいでしょう。就職活動が進むにつれ、何事にも意味や目的を“後づけで上手に言えるようになっていく”自分に対して、「少し嘘つき」という申告により、演出の必要性を理解しながらも、罪悪感や違和感を抱く学生の複雑な心境を表現しているといえます。
落ちたのに なぜか推される 逆オファー(埼玉県 浦和人さん)
近年の採用手法の多様化を皮肉った作品です。一度不採用となった企業から、逆求人サイトを通じてオファーが届く現象は、AIマッチングシステムが登録されたキャリアシートだけを頼りに、相手が誰かも分からずにオファーを送る対象となる学生を抽出しているため、実際によく起こり得ることです。学生にとっては戸惑いの原因となる一方、企業側がシステムを駆使して採用を高度化しようとしている様子もうかがえます。売り手市場において企業が優秀な学生を確保するためにさまざまな手法を駆使する結果、少し機械的で人間味のないやりとりを招いている現状を、シンプルながら笑いを込めて的確に捉えた作品です。
また出たな 大手とベンチャー いいとこ取り(大阪府 バーバパパさん)
【最優秀賞】を受賞した作者が別の作品で【佳作】にも入選しました。
企業説明会での常套(じょうとう)句を皮肉った一句です。“大手の安定性とベンチャーの成長性を兼ね備えた”という企業の自社PRは、今や就活生にとってはおなじみのフレーズとなっています。この句は、そうした企業側の「いいとこ取り」的なアピールに対する学生の冷静な視点を、「また出たな」とユーモラスに表現しています。昨今の就活では、企業側も学生獲得のためにさまざまな魅力をアピールする必要があり、時としてそれが画一的な表現になってしまう現状を見事に切り取っています。
![[図表2]「2026年卒 就活川柳・短歌」入選作品](https://img.hrpro.co.jp/images/tokushu/hr_tokushu_photo_4418_7_05AY6X.png)
■HR総研「2026年卒 採用川柳・短歌/就活川柳・短歌」オフィシャルページ
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