本調査は、株式会社ジェックが担当した新入社員研修において、新入社員自身が自分の企業人としての意識傾向を確認し成長の方向を知るために、研修開始冒頭に実施しているものです。
設問では、「企業人として持つべき考え方」を問い、回答は「そう思う」「わからない」「そう思わない」の三択式です。
本報告では、2012年の特徴、および2001年以降の回答傾向についてご紹介します。
※調査概要は文末をご覧ください。

社会貢献への意識が高まっている

「仕事は自分のためにやるのではない」という意識傾向が増えています。また、ここ数年、社会貢献に関する意識も向上し、「仕事を通じて社会に貢献したい」というように考える人も多くなってきたようです。また、「働き甲斐を求める」傾向が強くなっています。

これらを通して見えるのは、「社会の一員になり、企業を通して貢献したい」という気持ちが、ますます強くなっているということです。

ボランティアを経験している新入社員も増えています。自分のため、お金のためだけではなく仕事を通じて貢献したいと考えている、成熟している様子が伺えます。

同時に、このように価値観が変わってきている新入社員を、会社としてどのように育てていけばよいかが課題となります。

ジェック2012年 新入社員「企業人としての意識」調査報告

ジェック2012年 新入社員「企業人としての意識」調査報告

ジェック2012年 新入社員「企業人としての意識」調査報告

ジェック2012年 新入社員「企業人としての意識」調査報告

素直でまじめ。学習能力が高く、親和欲求が強い

「言われたことに素直にまじめに取り組む」傾向がますます強くなっています。新入社員の普遍的な傾向の一つであるものの、以前に増して研修担当インストラクターからこのような声を多く聞きます。

・発声練習で、はじめから大きな声が出る
・挨拶の行動練習で、はじめから体を動かして練習する
・一度指示すると、最終日までやり続ける
・厳しく指導しても、素直に受け入れる

この素直とまじめさにより、頭で理解してから行動ができるようになるまでの時間と練習量が少なくても、マナーや挨拶用語などがある程度できるようになるのが近年の傾向です。

しかしながら、「整理整頓をしましょう、机の上は休憩時に片付けましょう」と言うと、机の上は片付けるようになりますが、整理整頓の他の行動、例えば「椅子を入れる」「カバンを通路に置かない」ということはしません。

「学生でも必要な基本的な立ち居振る舞いができない」「状況が変わると態度が変わる」というインストラクターのコメントも複数寄せられています。

・共有の荷物を整理したり片付けるということを自発的にやらない
・教室から離れると、できていたはずの挨拶やテキパキした行動がなくなる
・廊下で騒がないようにと言うと、廊下では騒がなくなるが、エレベーターホールでは騒ぐ

なぜそうするのか、意味、意図を理解して、自分で考えて行動する、ということが苦手なようです。

このように見ていくと、「言われたことしかやらない」と言えますが、親和欲求が強く、周りの空気、人の表情から敏感に感じ取って動くために、リスク回避能力があるといえます。
この親和欲求の強さをプラスに活かし、これらの能力を発揮できるように場を整えるマネジメントが求められています。

「やればできる人」「頑張っている」と認められたい

周りから、「認められたい」「頑張っていると評価されたい」という承認欲求は強くなっています。そのため、上記の親和欲求の強さもあいまって「何をしたら良いのか(認められるのか)?」をよく聞き、それをその通り、まじめに実行します。

意識調査では「できないことを『できません』とハッキリ言うようでは、職業人としての資格に欠ける。(そう思わない と答えた割合)」が少なくなっています。「できない」とは言いにくいのです。

ジェック2012年 新入社員「企業人としての意識」調査報告

努力をしたり頑張ったりということが、もし周りへのアピールになっているとしたら、「評価されること」「直接的に求められていること」はするが、それ以外はしなくなるでしょう。
そして、できないことがあっても、できないとは言ってはいけないと考え、仕事は自分のためにやっているという回答が減っていることも併せて考えると、会社では、やればできる人、頑張っている人を演じなければいけないという意識に傾いていないか懸念されます。

平均化傾向・失敗を恐れる傾向 がさらに強くなっている

意識調査では、モラル・礼儀作法を重視する傾向が見られます。
モラルや礼儀作法に高いアンテナがあることは良いのですが、突出しない、競争を避けることを一番の判断基準として行動する傾向も更に強くなってきたようです。

弊社の研修では、インストラクターからの質問に対して答えると、グループに点数が与えられるというグループ間競争を導入しています。ご受講者はより多く答えた方が良い、と分かっていますし、インストラクターもそのように働きかけるので、多くの新入社員が積極的に発言するようになっていきます。
ところが、挙手をしだすのが例年より遅くなったという印象を持つインストラクターが多くいました。挨拶や発声のテストでは、合格点を取るところまではがんばりますが、それ以上のことはやろうとはしない、という現象もみられました。

同時に、まじめに努力をするものの、自分で物事を考えることをせず依存傾向が強くなっていると懸念される現象も目立つようになりました。多くのインストラクターが「細かいことを聞いてくる新入社員が増えた」と感想を寄せています。
例えば、
「『命令』というのが答えですが、『指令』ではダメですか?」
「襟の長さなんですが、隣の○○さんよりちょっと短いのですが、平気ですか」
これらのことを研修中に手を上げて聞くのではなく、休憩時間や行動練習の時間中にインストラクターに個人個人で聞いてきます。

これらの行動の背景には、他の人と異なると目立ってしまう、失敗したくないという意識が働いていると思われます。
言われていない行動を取ると目立ってしまう、目立ちたくない、回りがやっていないことはやってはいけないという意識から生じているのではないかと考えます。いわゆる「KY(空気読めない)」と思われることを避ける意識が強いようです。

学んだことから応用することができていないことも併せて考えると、良くも悪くも、目立ちたくないという意識から、自ら積極性を発揮することにブレーキをかけてしまっています。

ジェック2012年 新入社員「企業人としての意識」調査報告

ジェック2012年 新入社員「企業人としての意識」調査報告

ジェック2012年 新入社員「企業人としての意識」調査報告

新入社員研修を担当した弊社インストラクターの意見

<プラス点>
•指示されたことは、手抜きをせずきちんと行う
•礼儀正しく、常識外れの行動をしない(周りの目を気にする)
•挨拶の発声練習では、はじめから大きな声が出る
•基本動作の練習で、はじめから体を動かして練習する。練習を徹底的にやって、テストの時には完璧に仕上げてくる
•例年に比べておとなしいが芯がしっかりしているという印象である
•斜に構えたような態度の方はおらず、素直に周囲の意見を受け入れる
•協力して動くことに高いアンテナがある。発表内容のまとめや発表など、グループ活動での成果創出に、高いレベルで行動していた
•素直でまじめ。言われたことは言われたとおりにしっかり捉え、やりきろうとする
•一度指示すると、最終日までやり続ける
•研修最後のまとめや受講感想文を記入欄にぎっしり書き込んでいた。例年に比べて「まじめさ」が強まったと思われる。

<気になる点>
•細部まで確認しないと、判断できない(例:復習の答え合わせ等)
•質問をしてきたことに回答しても、それを応用した行動がとれない
•なかなか挨拶テストに合格できず困っている仲間に積極的に協力を申し出ることが少ない
•行動を起こすが、長続きしない人が目立つ
•前に出ることを、極度に嫌がる。グループの代表になることを嫌がる
•「自分でなくても良い」という考えが強く、誰かがやることを待つ
•代表発表や質問に対する挙手発言では、なかなか手が上がらない
•学生のノリの目立ちはあるが、良い意味での「目立つ方」がいない
•積極性が薄れてきている、人前で恥をかく可能性がある事柄は避ける
•できる人に合わせるのではなく、平均にあわせる傾向が強い
•挙手発言など、手を上げだすのが遅くなった
•(100点満点、合格ラインは80点の設定に対し、100点を目指すのではなく)「80点を目指しました」という発言がある

オブザーバーの所感

•学生気分が抜けていないのではないか
•やること自体のみに意識があり、結果を追求しない
•グループ討議の際もお互いに様子を伺うだけでなかなかまとめようとしない傾向が見られる。例年より失敗を恐れる傾向が強い
•まじめさが増した。但し、目が行き届いているところではまじめだが、誰もいないところでは騒ぐなど、以前にもまして二面性も強くなってきた

まとめ(マネジメントのポイント)

意欲があり、社会貢献したいという希望を持ち、言われたことに素直にまじめに取り組む、新入社員として好ましい傾向を持っています。しかしながら、能力がある新入社員であってもすぐにできることは限られます。

貢献欲求は高く頑張るのですが、彼らが思い描く社会貢献と目の前の仕事の繋がりをもてなかったり、仕事のプロセスにやりがいを感じられずに、モチベーションを低下させてしまったり、「心が折れてしまう」新入社員が増えています。

●そのような新入社員にまず必要なのは、自分の職場が安心してよい場所なのだと思えることです。「会社のために」「頑張る」「できる人と見られたい」「できないとは言えない」という緊張状態のままでは成長は難しいでしょう。
そこで、上司や先輩には、新入社員を暖かく迎え入れることと共に、職場の良さや仕事の楽しさを分からせるよう新人に働きかけることが求められます。なぜやるのか、なぜ大事なのか、を細かなことであっても理解させて身につけさせることで、応用力も高まっていきます。

●承認欲求が満たされなかったり、社会貢献という大きな概念と目の前の仕事や業績追求の結びつきがわからずにやりがいを感じられないという点では、企業はお礼もお金もいただけるすばらしい組織であり、自分も行動することでお客様に喜ばれるのだということを、様々な機会を通じてわからせる、ということが求められます。
例えば「頑張っているね」「○○がよくできているね」などといった日常の声かけや、お客様が寄せてくれた感謝の声を、本人にも組織にもフィードバックするなどです。
これは、叱るという行為でも見守り行為の証になるため同様の効果があります。叱るという行為でも承認欲求は満たされますし、褒めるだけだとストレス耐性が強くなりません。
しかしながら、上司にとっては注意ですらないのに、シュンとなってしまう、叱られることに慣れていない人も多いので、相手をよく観察し注意して行うことが大事です。

●更に、彼らが今後成長する上で一番のブレーキになると懸念されるのが、失敗を恐れる、平均であることに安心するという傾向です。これに対して、上司は部下の競争意識を伸ばす育成をしてほしいとジェックでは考えています。
人は、親和欲求、貢献欲求、成長欲求などどれも持っていると考えられますが、企業に入り、貢献欲求、成長欲求よりも親和欲求が強く出るならば「組織というのは異色なモノをうけつけないものだ」という根底の考えが作られていて、「周りに合わせよう」という意識が強く出てくるものと考えられます。
組織で活躍するに当たって、親和欲求が成長欲求を押さえてしまっているなら、上司はそれを取り除くよう働きかける役割が求められます。

そうは言っても、昔ほど簡単な仕事、失敗しても上司や先輩がカバーできる仕事というものは減っています。育成担当になるはずの適切な先輩は業務の中心的役割を担い、育成のために時間を作れないということもあるようです。失敗をしたがらない、失敗すると心が折れやすい新入社員と、失敗が許されない業務体制、育成時間の制約・・・これでは、なかなかうまく人を育てられません。マネジメントのジレンマです。

しかしながら、“現場”で、失敗の経験と身近な先輩からの指導による育成効果を考えると、それが実現できる環境をできるだけ作る努力が求められると考えます。
・「模擬的に」多くの失敗をとにかく、経験させること
・その経験から、「失敗から学ぶ」ということを学ばせること
・指導担当者に対する人事的措置(業務軽減、報償、動機付け等)をより強化すること

●この結果報告をご覧いただくのは7月以降、4月入社の新入社員も入社してから3ヶ月が経っています。
新入社員も職場に慣れ、同時に「現場は、教わったとおり、型どおりに動いているわけではない」という現実に突き当たります。更に、周囲の新入社員に対する期待も徐々に変わってきますが、この期待の変化が新入社員にはわからず、ネジレが解消できないと、モチベーションを低下させてしまいかねません。
上司は職場に慣れた新入社員をみて安心しがちですが、新入社員への期待の変化、果たしてほしい行動を面倒見よく伝えわからせていくことが、継続的成長に欠かせない働きかけです。

【社員意識調査の概要】

1976年に開発。以来、ジェック主催「新入社員基本能力体得コース」およびジェックが担当した各社新入社員研修で本意識調査を実施。設問数50。結果を5つの意識に分類。各25点満点。
5つの意識の強弱やバランスによって、個々の意識傾向、該当年の新入社員の意識傾向をつかみます。
ご受講者はこの結果を持ち帰り、現場配属後の成長目標として活用していただいています。
ジェック主催公開コース(3日間)では、研修の冒頭および終了時に実施し、5つの意識の成長をご受講者が自覚することができます。
なお、本調査は、ジェックが考える“企業人としてもつべき考え方・意識”の傾向を調査するものであり、若者の意識傾向全般を調査するものではありません。

【調査名称】
2012年 新入社員 企業人意識調査

【調査対象】
ジェック主催「新入社員基本能力体得コース」およびジェックが担当した各社新入社員研修の受講者

【設問概要】
本調査は、ジェックが考える“企業人としてもつべき考え方・意識”の傾向を調査するものです(若者の意識傾向全般を調査するものではありません)。
設問数50問。結果を5つの意識に分類し、各25点満点。
回答は、マークシート形式

【調査時期】
2012年3月~4月に実施、データ数1,800名

【企業人として重要な 「5つの意識」とは】

Ⅰ 職業人の意識・・・・地道な努力を大切にし、言われた通りにまずやってみようとする意識
Ⅱ 自己実現の意識・・・能力や個性を思う存分発揮しようとする意識
Ⅲ 貢献・報酬の意識・・百の知識よりも、一つの成果、業績を重んじようとする意識
Ⅳ 組織活動の意識・・・規則に従い、連絡を密にしようとする意識
Ⅴ 人間関係の意識・・・相手を尊重し、礼儀作法を配慮しようとする意識

ジェック2012年 新入社員「企業人としての意識」調査報告

ジェック2012年 新入社員「企業人としての意識」調査報告

【本調査に関するお問い合わせ先】

株式会社ジェック CPMマーケティング部(担当:中村)
〒170-6020 東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60ビル20階
TEL:03-3986-6365 FAX:03-3982-6894 
E-mail:otoiawase@jecc-net.co.jp

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