HR総研:人材育成「新入社員研修」に関するアンケート調査 結果報告(2020年)〜オンライン研修が昨年比2割増、効果測定のKPI「設定しない」が6割〜

新型コロナウイルスの感染拡大等、外部環境の目まぐるしい変化に対応し、人材育成のあり方、研修のあり方も変化していくことが求められている。このような状況の中で、実際の企業の研修の実施方法や実施内容には、どのような変化が見られるのだろうか。
HR総研では「人材育成に関するアンケート調査」を毎年実施しており、今年は2020年8月21日〜9月6日に実施した。
今回は階層別研修の実施状況と、その中でも特に「新入社員研修」「メンター制度」「新入社員フォロー研修」に注目して、その実施内容や実施形式、効果測定の方法等の実態を明らかにする。

<概要>
●階層別研修、大企業は8割が実施も中小企業は半数未満
●2020年入社の新入社員、優れている点は「まじめである」が最多
●研修内容、中小企業では「現場実習」が6割などやや現場寄り
●研修の実施形態は「オンライン講座」「eラーニング」が昨年から2割増
●新入社員研修の実施期間、企業規模による差異は縮小傾向
●新入社員研修の効果測定のためのKPI設定は「設定していない」が6割
●7割の企業がメンター制度は機能していると実感
●新入社員フォロー研修、「実施している」企業は5割で昨年比減少
●新入社員フォロー研修は入社から半年以内の実施が7割
●新入社員が抱えている課題は「モチベーション維持」が6割で最多
●新入社員フォロー研修も大企業ほどオンライン化進む

階層別研修、大企業は8割が実施も中小企業は半数未満

まず、新入社員研修を含む階層別研修の実施状況について見ていこう。
「階層別研修の実施有無」については、「実施している」が62%、「実施していない」が38%となっている(図表1−1)。
企業規模別で見ると、階層別研修を「実施している企業」は1,001名以上の大企業では81%、301名〜1000名の中堅企業では75%に上ったが、300名以下の中小企業では45%と半数未満にとどまった(図表1−2)。
「実施している階層別研修」については、「新入社員研修」が最多で95%、次いで「新任管理職研修」が67%、「中堅社員研修」、「若手社員研修」がともに61%などとなっている(図表1−3)。
企業規模別では、「課長研修」の実施について、大企業で63%、中堅企業で40%、中小企業で34%と、大きな差異がみられた。また、「部長研修」についても大企業で50%、中堅企業で28%、中小企業で25%と同様の傾向となっている(図表1−4)。
管理職に対する継続的な研修については大企業では半数以上が実施しているが、中堅企業・中小企業については実施する企業は少数派であるようだ。

【図表1−1】階層別研修の実施有無
【図表1−2】企業規模別 階層別研修の実施有無
【図表1−3】実施している階層別研修
【図表1−4】企業規模別 実施している階層別研修

2020年入社の新入社員、優れている点は「まじめである」が最多

まず、研修の対象となる近年の新入社員の傾向について見てみよう。
「2020年入社の新入社員がそれまでの世代に比べて優れていると感じる点」について聞いてみると、「まじめである」が最多で46%、次いで「ITに強い」が35%、「自分の時間を大切にする」が33%などとなっている。一方で「自立心がある」(3%)、「視野が広い」(3%)、「創造力がある」(2%)等の回答は少ない(図表2−1)。
「2020年入社の新入社員がそれまでの世代に比べて劣っていると感じる点」については、「受身的である」が最多で51%、次いで「競争心がない」が35%、「叱られることに慣れていない」が34%などとなっている(図表2−2)。
2020年入社の新入社員に対しては、「まじめだが積極性に欠ける」という印象を持つ人が多かったようだ。「優れていると感じる点」の合計得票数(521)と「劣っていると感じる点」の合計得票数(860)を比較してみると、後者の方が1.6倍超となっている。「劣っている」と感じる割合の方が圧倒的に多くなっているが、テレワークを継続している会社も多く、新入社員とのコミュニケーションが例年よりも希薄になっていることは否めない。表面的なイメージに惑わされ、「優れている点」にまだ気づけていないことも考えられる。
「近年の新入社員に対する印象」についてのフリーコメントも一部抜粋して紹介する。
「理解力は高い」「真面目で優秀」等、基本的な能力については評価する声が多い一方で、「おとなしい」「個性に乏しい」「あきらめが早い」等、性格特性や仕事に向かう姿勢については今一つ物足りなさを感じるとの声もあった(図表2−3)。

【図表2−1】2020年入社の新入社員がそれまでの世代に比べて優れていると感じる点
【図表2−2】2020年入社の新入社員がそれまでの世代に比べて劣っていると感じる点
【図表2−3】近年の新入社員の印象に関するフリーコメント(一部抜粋)
コメント従業員規模業種
大人しいが頭は良い1,001名以上メーカー
基礎学力が高く、素直で真面目である反面、みんなが平均的で個性に乏しい印象をうける1,001名以上メーカー
真面目で優秀な印象ではあるが没個性的で、保守的な傾向が強い1,001名以上メーカー
活躍や貢献欲が高い人材とそうでない人材とのGAPが拡大1,001名以上商社・流通
独り立ちまでに要する時間や手を掛ける工数が増えた1,001名以上サービス
あきらめが早い、自分でなんとかしようとしすぎる、他人に頼ろうとしない、くじけてしまう、そんなスパイラル301名〜1,000名情報・通信
合理的だが貢献意欲が高く堅実 型破りな人は少ない301名〜1,000名サービス
事なかれ主義、指示待ち300名以下メーカー
総じておとなしく、バイタリティや野心・覇気を感じにくい印象300名以下メーカー
理解力は高いが、それを自発的にアウトプットすることが少ない300名以下メーカー
個性的で、各々のカラーが強い300名以下メーカー
基礎学力レベルが上がっており、真面目な印象が強い発想力が高い印象はあるが、行動は堅実300名以下情報・通信

研修内容、中小企業では「現場実習」が6割などやや現場寄り

「新入社員研修の内容」については、「社会人としての心構え」が最多で94%、次いで「マナー」が85%、「会社の仕組み・ルール」が78%などとなっている(図表3−1)。
これらの上位3項目については、「社会人としての心構え」と「マナー」の順位が逆転したのみで、昨年から大きな変化はない。
企業規模別では、大企業については「会社の歴史・理念」が72%、中小企業については「職場実習」が56%と全体よりやや高い割合を示した(図表3−2)。大企業が、従業員規模が大きい企業ほど浸透しづらい「自社の歴史・理念」を新入社員研修の機会に浸透させたい一方で、中小企業では、より現場・実務寄りの内容を充実させ、いち早く戦力化したいという狙いがうかがえる。

【図表3−1】新入社員研修の内容
【図表3−2】企業規模別 新入社員研修の内容

研修の実施形態は「オンライン講座」「eラーニング」が昨年から2割増

次に、「新入社員研修の実施形態」については、「集合研修」が最多で81%と圧倒的となり、次いで「職場見学・実習」が45%、「課題・レポート提出」が40%などとなっている(図表4−1)。「集合研修」は昨年同様に圧倒的な実施率ではあるものの、その割合としては昨年より11ポイント減となった。一方で「課題・レポート提出」が11ポイント増、「オンライン講座」「eラーニング」がともに19ポイント増(ただし昨年は「オンライン講座」と「eラーニング」を一つの項目で集計)となっており、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、昨年に比べ、リアルでの接触が少ない実施形態がより活用されるようになったことが分かる。
企業規模別では、大企業で「集合研修」が64%と全体より17ポイント低く、一方で「eラーニング」は64%と全体より29ポイントも高いという結果となった(図表4−2)。「リアルな接触を避ける」という上記の傾向は大企業でより顕著であることが分かる。
一方、中小企業では、「オンライン講座」(29%)と「eラーニング」(17%)ともに他の企業規模より低く、新卒採用におけるオンライン面接の導入と同様に、対応の遅れがうかがえる。

【図表4−1】新入社員研修の実施形態
【図表4−2】企業規模別 新入社員研修の実施形態

新入社員研修の実施期間、企業規模による差異は縮小傾向

「新入社員研修の実施期間」については、「1週間程度」が最多で19%、次いで「2週間程度」が18%、「1か月程度」「それ以上(2か月より長い)」がともに16%などとなっている(図表5−1)。
企業規模別では、企業規模が大きいほど研修期間が長期となる傾向が見られ、「3週間程度」以上実施する割合(「3週間程度」、「1ヵ月程度」、「2か月程度」及び「それ以上」の合計)は大企業で57%、300〜1,000名の中堅企業で52%、中小企業で48%となっている(図表5−2)。しかし、昨年と比較すると、「3週間程度」以上の割合は大企業で6ポイント減、中堅企業では2ポイント増、中小企業では17ポイント増と、大企業で短期化、中堅・中小企業で長期化の傾向が見られる。企業規模による差異は縮小傾向にあるようだ。

【図表5−1】新入社員研修の実施期間
【図表5−2】企業規模別 新入社員研修の実施期間

新入社員研修の効果測定のためのKPI設定は「設定していない」が6割

次に、新入社員研修の効果測定の実態について見てみよう。
「新入社員研修の効果測定の方法」については、「受講時アンケート」が最多で61%、次いで「レポート」が44%、「研修内で実施した課題等のフォロー」が34%などとなっている(図表6−1)。
新入社員研修における具体的な「効果測定のためのKPI設定」については、「設定していない」が圧倒的に多く64%、次いで「参加者満足度等、研修自体への評価に関するKPI」が21%、理解度テストの点数等の「知識の習得度合に関するKPI」が12%などとなっている(図表6−2)。
多くの企業がアンケート等、何らかの形で効果測定を行っているが、具体的にKPI設定をして定量的に効果測定をするという企業は少数のようだ。新入社員研修は、マナーや社会人としての心構えなど、社会人としての基本を習得することが主な目的となっており、定量的に効果を測定するのが難しいという点も影響しているかもしれない。
企業規模別では、「KPIを設定していない」の割合が、大企業で46%、中堅企業で59%、中小企業で86%となっており、ほとんどの中小企業では定量的な効果測定は実施されていないことが分かった(図表6−3)。

【図表6−1】新入社員研修の効果測定の方法
【図表6−2】新入社員研修における効果測定のためのKPI設定
【図表6−3】新入社員研修における効果測定のためのKPI設定

7割の企業がメンター制度は機能していると実感

「配属後のメンター制度(ブラザー・シスター等)の有無」については、「メンター制度がある」が最多で48%、次いで「元々メンター制度はない」が46%、「以前はメンター制度があったが今はない」が6%となっている(図表7−1)。
企業規模別に見ると、「メンター制度がある」企業の割合は、大企業では66%、中堅企業では60%、中小企業では30%となっており、企業規模が大きいほど高くなっている(図表7−2)。
「メンター制度の効果についての印象」については、「大変うまく機能している」(12%)、「まあまあ機能している」(58%)を合計すると70%に上った。一方、「どちらともいえない」との回答が27%あるものの、「あまり機能していない」は3%、「全く機能していない」は0%とほとんど見られない。メンター制度を導入している大方の企業は、多少なりとも、その効果を実感しているようだ(図表7−3)。
また、メンター制度を実施する上での課題について、フリーコメントを一部抜粋した。
ここでは「メンターになる人材の不足」を課題として挙げるコメントが多かった(図表7−4)。

【図表7−1】配属後のメンター制度(ブラザー・シスター等)の有無
【図表7−2】企業規模別 配属後のメンター制度(ブラザー・シスター等)の有無
【図表7−3】メンター制度の効果についての印象
【図表7−4】メンター制度を実施する上での具体的課題(一部抜粋)
具体的な課題従業員規模業種
メンターへの負担。配属先により年齢が非常に離れてしまうなど、理想的ではないメンターをアサインする場合も多い1,001名以上メーカー
メンターに対するミッションが明確になっておらず、まかせっきりになってしまっている1,001名以上メーカー
メンターになる人の不足1,001名以上運輸・不動産・エネルギー
いつも同じ社員がメンターになりがち、又、事業部で年齢の乖離が大きい部署もある301名~1,000名メーカー
関係性がどこまで構築されているか追えない301名~1,000名メーカー
時間の捻出、メンター人材の育成300名以下メーカー
メンター制度で業務以外のメンタル面や育成面を担う、という意図が明確になっていないため、現状は単なる息抜き・ランチ同伴≠ナしかない300名以下情報・通信
メンター社員へのレクチャー不足300名以下マスコミ・コンサル
新人とメンターの相性、関係構築300名以下サービス

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:HR総研:人材育成に関するアンケート調査(階層別研修)
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2020年8月21日〜9月6日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者、人事育成担当者様
有効回答:246件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照をいただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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