新卒採用を「職種別採用」のみで実施する企業も、約4割に及ぶ。 大手・人気企業ほど「職種別採用」を実施しており、中小・成長企業は「総合職採用」が多い

「職種別採用」とは、入社後の配属職種を決めて募集し採用する手法のこと。従前、前職の経験・スキルが重視されるキャリア採用では職種別採用が一般的であったが、ポテンシャルを重視する新卒採用では、配属職種を決めずに「総合職」として採用する方法が主流であり、職種別採用をおこなうのは、専門性の高い理系職種に限られていた。しかし、“就社から就職へ”という学生の就業意識の変化に加えて、いわゆる“配属ガチャ”(どの部署に配属されるかわからない不安な心境を、カプセルトイやソーシャルゲームの「ガチャ」になぞらえたもの)が内定辞退に結び付く懸念も相俟って、昨今、営業職、コーポレートスタッフなどの職種においても、職種別採用を取り入れる企業が急増している。

2024年3月卒予定の大学生・大学院生を対象とした新卒採用について、「職種別採用」の実施状況を確認したところ、全員を「職種別採用」で採用する企業は約4割(39.3%)に及ぶ。また、すべてではないが一部の職種で職種別採用をおこなう企業を合わせると、約6割(60.6%)の企業が「職種別採用」を実施していることがわかった。
(「職種別採用」の実施状況 参照)

さらに、「職種別採用」の実施度合いを企業群別にみると、〈大手・人気企業〉群は、すべて「職種別採用」でおこなう企業が最も多い(44.2%)のに対し、〈中小・成長企業〉群では、総合職採用が最も多い(45.1%)結果となった。
(「職種別採用」の実施状況(企業群別) 参照)

「職種別採用」でなくとも、半数以上の企業が“入社前”に配属職種を決定

「職種別採用」ではない対象者の配属職種をいつ決定するか確認したところ、「選考中から内々定時」が最も多かった(文系職種 35.9%、理系職種 37.2%)。これに、「内々定後から内定式の間」「内定式後から入社まで」を加えると、半数以上の企業が、文系職種・理系職種を問わず“入社前”に配属職種を決定することがわかる。
(職種別採用ではない対象者の配属職種を決めるタイミング 参照)

弊社の考察―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今回の調査にて、新卒採用においても「職種別採用」がかなり広がっており、また、職種別採用ではない場合も、半分以上が入社前に配属職種が決まっていることがわかりました。総合職採用で、かつ入社後に配属職種が判明するケースは、いまや少数派のようです。2024年卒の大卒求人倍率は1.71倍*。人手不足感を背景に、応募者優位のいわゆる“売り手市場”は続く見込みで、就活生へのアピールや、内定辞退を避ける施策としても「職種別採用」はさらに広がるものと思われます。

応募者にとって、「職種別採用」は、確かに希望に沿わない配属を避けられる利点があります。他方、それぞれの企業には幅広い業務があり、社外に見えているものがすべてではなく、「職種別採用」の導入が難しい企業様や、総合職として採用し、一定期間で適性を見極め、適材適所を叶えたい意向の企業様もいらっしゃいます。とはいえ、“配属ガチャ”という言葉が広がってしまっているなかでは、本人の不安感を払しょくしながら、本人が認識している「やりたいこと」「やれること」と、会社が認識している「やれること」「やって欲しいこと」のすり合わせを丁寧におこなう取り組みが求められるといえそうです。

*リクルートワークス研究所「第40回 ワークス大卒求人倍率調査(2024年卒)」(2023年4月26日発表)
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調査概要;
内容 新卒採用に関する企業動向調査
※各項目は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはなりません
対象 ヒューマネージが提供する採用管理システム「i-web」ご利用企業様のうち、調査対象とした361社様(業界/企業規模等を勘案して決定)
新卒採用でも強まる“ジョブ型”傾向。約6割の企業が「職種別採用」を実施