肉体を使う「肉体労働」、頭脳を使う「頭脳労働」に加え、感情を使う「感情労働」の比重が増している。今回は、「感情労働」のモチベーションについて考えてみる。
感情労働とモチベーション ~「感情労働」とこれからの人事労務管理(2)~

「やる気」を起こさせる要因はわかりづらい?!

(1)はこちら

従業員に能力を最大限発揮してもらう為に、どのように「やる気」を起こさせることができるであろうか?
この問題は「モチベーション管理」などとして、多様な方面からアプローチされてきた。近年の能力主義、成果主義人事においても、取り上げられる事も多い。

従業員のモチベーションを上げる、つまり従業員の「感情」をいかにコントロールして「やる気」を起こさせるか?ということになるが、感情を抱かせる次の2つの要因について考えてみる。それぞれ仮に<感情要因C>と<感情要因I>としてみよう。
<感情要因C>
 ほぼ固定的な反応が期待できる感情要因

例えば、「給料が上がる」「例年より多くの賞与が支給される」という要因は、一般的には「嬉しい」という感情を抱かせることになる。

 <感情要因I>
 反応が予測不可能な感情要因

例えば、「異動を命じられた」という要因は、その内容や状況によって従業員の感情は異なってくる。「希望していた部署への異動」であれば、「嬉しい!」という感情を抱かせるが、「希望していた部署への異動だが、その部署の上司とはウマが合わない」のであれば、「嫌だ!」という感情を抱かせる可能性がある。

「モチベーション管理」というのは、従業員にいかに固定的な感情を抱かせる人事施策=<感情要因C>を行って行くか? ということでもある。結果的に<感情要因I>のような人事施策を行えば、逆効果になり得る。
従って企業は「仕事や人の適正」等を調査することにより、<感情要因C>となる人事施策が何かを的確に把握していくこと求められることになる。

「モチベーション3.0」は「感情労働」に有効か?

<感情要因C>と<感情要因I>の区別は、実際には難しい。例えば<感情要因C>の例として挙げた「給料が上がる」という要因であっても、「給料は上がったが、自分の努力に対して正当に評価されていない」、あるいは「同僚よりも私の方が頑張ったのに、私より同僚の給料の方が上がった。悔しい」という感情を抱かせることになれば、逆効果となり「やる気」につなげることはできなくなってしまう。
実際、「評価の公平性」というものに苦慮する企業は多い。個人の成果や能力が純粋に数値化できないことが主な原因であり、それをいかに公平に評価していくか?が、常に人事施策の主なテーマでもある。
科学的なモチベーション管理は、そこに焦点を当て多様なアプローチをしてきた。
ただ、感情労働の占める割合が多い現代において、そのアプローチには更に複雑なものが求められてきている。

組織論等で有名なダニエル・ピンク氏は、「モチベーション3.0」という概念を提唱している。モチベーションをパソコンのOS(オペレーションシステム)に喩え、以下のように定義した。

「モチベーション1.0」=生存を目的とする人類最初のOS。
「モチベーション2.0」=信賞必罰に基づく、与えられた外発的な動機付けによるOS。
「モチベーション3.0」=自分の内面からわき出る自律的な「やる気」に基づくOS。


 機械化・マニュアル化された労働においては、「モチベーション2.0」が有効であったが、自律性や創造性が求められる現代においては、それはもはや機能不全に陥っており、「モチベーション3.0」というOSが必要であるとしている。「モチベーション3.0」=つまり、自己の成長、キャリア意識、達成感、自己実現、顧客や同僚とのメンバーシップによる貢献意識が「やる気」につなげることが出来るという。
 
先に挙げた「感情要因C」というのは、正に「モチベーション2.0」による外発的な動機付けではないだろうか。従業員それぞれに感情のコントロールが求められる「感情労働」の観点から考えてみても、やはり「モチベーション2.0」では上手くいかないだろう。なぜなら、従業員の感情は個々の性格、日々の感情の疲弊具合、疲弊する要因によって異なる。外発的な要因による感情のコントロールは、「感情労働」においても非常に難しい。外発的な感情要因と自己の感情のコントロールのジレンマに陥ってしまう可能性も高い。
 そう考えると「感情労働」においても「モチベーション3.0」が有効となる可能性はある。従業員が日々の感情を自律的に適切にコントロールして「やる気」を起こしてくれれば、素晴らしいことである。

 ただ「モチベーション3.0」は理想論で、それでは上手くいかない、という意見も出てきている。企業内において「モチベーション3.0」が機能するには、組織的な環境の整備が必要なのではないか。あるいは「仕事が出来る人」は、そもそも「モチベーション」を意識せずとも内発的な動機付けが出来ているのではないか、との意見もある。

 「感情労働」には、自律的な「やる気」が起こる組織環境、そして内発的な動機付けが出来る個々のメンタルを育てることが必要なのかも知れない。

オフィス・ライフワークコンサルティング
社会保険労務士・CDA 飯塚篤司

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