改正労働基準法第39条はどう解釈すべきなのか(前編)

働き方改革関連法の労働基準法関係の通達が、平成30年12月28日付基発1228第15号「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について」として発出されている。これは、平成30年9月7日付基発0907第1号「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について」として発出された通達をQ&A方式で示した、いわゆる“解釈通達”といわれるものである。この中に、初めて世に出たと言える解釈があるので、その妥当性を検討してみよう。

初めて目に触れる解釈通達の中味とは

それは、当該通達の「第3:年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(法第39条第7項及び8項関係)」の部分である。(下線は筆者)


<半日単位・時間単位による時季指定の可否>

問3:法第39条第7項の規定による時季指定を半日単位や時間単位で行うことはできるか。

答3:則第24条の6第1項の規定により労働者の意見を聴いた際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合においては、使用者が法第39条第7項の年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことは差し支えない。この場合において、半日の年次有給休暇の日数は0.5日として取り扱うこと。
また、法第39条第7項の規定による時季指定を時間単位年休で行うことは認められない。

<労働者自ら取得した半日年休・時間単位年休の取扱い>

問11:労働者自らが半日単位又は時間単位で取得した年次有給休暇の日数分については、法第39条第8項が適用されるか。

答11:労働者が半日単位で年次有給休暇を取得した日数分については、0.5日として法第39条第8項の「日数」に含まれ、当該日数分について使用者は時季指定を要しない。なお、労働者が時間単位で年次有給休暇を取得した日数分については、法第39条第8項の「日数」には含まれない。

このように、平成30年9月7日付基発0907第1号通達には存在しなかった「時間単位年休が使用者の時季指定にも労働者の年休取得にも含まれない」と解釈されている。しかも、その理由は通達上何ら明記されておらず、「〜認められない」、「〜含まれない」とされているだけである。

改正後の労働基準法第39条を文理解釈すると?

一方、改正後の労働基準法第39条はどのような規定内容となっているだろうか。条文が長いため、丸ごと引用することは控えるが、法解釈の常道である“文理解釈”を施すと、以下のようになる。

第1項から第3項までの規定は、通常の年次有給休暇について、一般労働者及び一般労働者に比し所定労働日数が少ない労働者に一定のルールで付与することを規定している。「時間単位年休」が規定されているのが、第4項である。第4項では、適用する労働者の範囲や5日を上限とした日数などを内容とした労使協定を締結することにより、「時間単位年休」を付与するこができる旨規定されている。

注意すべきは、「〜第1号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前3項の規定による有給休暇の日数のうち第2号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、〜時間を単位として有給休暇を与えることができる」と規定されていることである。

つまり、第4項で規定する「時間単位年休」は、そのものが独立した有給休暇ではなく、あくまで第1項から第3項に規定する通常の有給休暇に包含されているのだと明解に解釈できる。

第7項(新設条項)では、「使用者は、第1項から第3項までの規定による年次有給休暇の日数のうち5日については、基準日から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない」と規定し、使用者の時季指定義務を課している。その対象となる有給休暇は、「第1項から第3項までの規定による有給休暇」である。

そうすると、第4項で規定する「時間単位年休」は、第7項で規定する「第1項から第3項までの規定による有給休暇の日数」に含まれることになり、使用者は時間単位年休による時季指定が可能である、と解釈できる。

また、第8項(新設条項)についても同様に解されることから、労働者が自ら時季指定して取得した「時間単位年休」は、使用者が与えた有給休暇の日数に含まれ、その分については使用者の付与義務は発生しないことになる。

仮に、第4項で規定する「時間単位年休」が、第7項及び第8項で規定する「第1項から第3項までの規定による有給休暇」に含まれないのであれば、立法技術上は「但し書き」を入れて然るべきだろう。例えば、「第1項から第3項までの規定による有給休暇(ただし、第4項に規定する時間単位年休を除く。)」といったような条項である。

今般の解釈通達は何を意図して発せられたのか不可解な部分も多いが、もし、法解釈としての“文理解釈”を無視し、“論理解釈”に走ったのであれば、一法律の解釈問題にとどまらず、法治国家を標榜する資格を捨て去るような行為とも言え、法の安定による国民生活を安寧に導くべき行政庁の責務を放棄したものと言えなくもない。
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP
大曲 義典

著者プロフィール

HRプロ編集部

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