企業や社会のこれからを担う若手人材、特に「Z世代」は、これまでの世代とは異なる社会環境で育ち、独特の価値観を形成してきた。彼らの育成にあたる担当者は、従来の育成手法やマネジメント手法が通用せず戸惑うことも多いようだ。本講演では、産業能率大学・齊藤弘通氏と法政大学・諏訪康雄氏が、Z世代の特徴やキャリアについての考え方などを各種調査から分析。その上で、求められる接し方などを解説している。あわせて、講演の後半には両者によるパネルディスカッションも実施。齊藤氏は、「Z世代は将来、良いマネージャーになる可能性を秘めている」との期待ものぞかせた。
“暗い時代”に育ってきたZ世代の「価値観」・「キャリア展望」とは。上司にどのような育成支援・マネジメントを求めるのか
齊藤 弘通 氏
登壇者:

産業能率大学 経営学部 教授 齊藤 弘通 氏

慶應義塾大学文学部卒業、法政大学大学院政策創造研究科博士課程修了。博士(政策学)。 産業能率大学総合研究所を経て現職。大学では「人材育成論」などの科目を担当。高等教育機関における社会人教育の実態や学修効果、組織における従業員の主体的かつ継続的な能力開発のあり方などを調査・研究。著書に『キャリア後期の生き方・働き方を考える』(産業能率大学総合研究所,2021年)など。
産業能率大学

諏訪 康雄 氏
登壇者:

法政大学 名誉教授/認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク理事長 諏訪 康雄 氏

1970年に一橋大学法学部卒業後、ボローニャ大学(イタリア政府給費生)、 東京大学大学院博士課程(単位取得退学)、ニュー・サウス・ウェールズ大学客員研究員(豪州)、 ボローニャ大学客員教授、トレント大学客員教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、 厚生労働省・労働政策審議会会長等を経て、2013年から2017年まで中央労働委員会会長。 現在、法政大学名誉教授、認定NPO法人キャリア権推進ネットワーク理事長。主な著書に『雇用政策とキャリア権』(弘文堂・単著)、 『雇用と法』(放送大学教育振興会・単著)、『労使コミュニケーションと法』(日本労働研究機構・単著)、 『労使紛争の処理』(日本労使関係研究協会・単著)、『外資系企業の人事管理』(日本労働研究機構・共著)、 『キャリア・チェンジ!』(生産性出版・編著)など。

Z世代の「キャリア形成」・「価値観」について考える

産業能率大学 経営学部教授 齊藤 弘通氏

幼少期から“社会の暗い側面”を経験し、育ってきたZ世代

“暗い時代”に育ってきたZ世代の「価値観」・「キャリア展望」とは。上司にどのような育成支援・マネジメントを求めるのか
若手人材を「Z世代」と一括りにして、ステレオタイプ的に捉えるのは決して好ましくないのですが、全体的な傾向や考え方を知ることで育成やマネジメントに活かされる面もあるはずです。Z世代については、これまで多くの調査がなされ、論じられてきました。それらの情報をもとに、特徴や企業が取るべき措置を検討したいと思います。

まずZ世代の特徴を紹介します。Z世代は1990年代半ばから2010年代序盤に誕生した層を指します。この間、「リーマンショック」、「東日本大震災」、「熊本地震」、「新型コロナウイルス」、「ウクライナへの軍事侵攻」などがあり、幼少期から社会の暗い側面を多く経験してきました。同時に、技術革新が起こり、ICTは大きく発展しています。こうした時代背景を受け、“Z世代の特徴”としては次のことが挙げられます。「高いITリテラシー」、「高いSNS活用能力」、「強い発信欲求」、「強い自己承認欲求・過剰な自意識」、「安定志向・現実主義」、「目的・意味志向」、「効率志向」、「自分らしさの重視と多様性の受容」、「サステナビリティの重視」、「プライベート重視」などです。

他方、現在管理職になっているのは、1960年代半ばから1980年頃までに生まれ、「高度経済成長」や「バブル崩壊」などを経験してきた「X世代」が中心です。世代が隔てられていることで、育ってきた時代背景は大きく異なります。そのため、管理職であるX世代がZ世代への対応に戸惑うのも致し方ないでしょう。では、上記のような特徴を持つZ世代に、どのような人材育成やマネジメントを行うのが適切と考えられるのか。Z世代を対象とした様々な調査結果を踏まえながら、「求める働き方」、「働く上で重視すること」、「働きたい企業」、「働きたい職場」、「キャリア展望」の5つの観点から見ていきます。

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