経営戦略変更に伴う組織の再編、それを実現するための人事部門の組織変革、そして、全社的なカルチャー変革など、
企業の命運を握る大きな取り組みについて、人事コンサルタント・有名企業の人事として活躍してきた本コラム著者・古川明日香氏が
ご自身の経験や実務を踏まえながら、「企業はどのようにして良い組織をつくりあげればよいのか」全3回に渡ってお届けします。
組織を変えるのは「簡単じゃない」~約四半世紀に渡り試行錯誤を繰り返した人事のプロが提言する企業変革へのヒント

いい匂いがする会社とは?

筆者が駆け出しの組織人事コンサルタントだった21世紀初め、先輩から聞いた話が今でも印象に残っている。「本当に“良い”会社というのは実際に訪問すればわかる。いい匂いがするんだ」というものだ。その後20年以上に渡ってコンサルタント、或いは企業内人事の実務家として多くの企業と関わってきたが、その中で身についた習性のようなものがある。

それは、企業にいる社員の佇まいや目の輝き、会議での人々の振る舞い、社員間のコミュニケーションなどを観察し、「あ、この会社(組織・チーム)は“良い”かもしれない」というセンサーを働かせるようになったことだ。“良い”は一種類ではなく、いろいろなパターンの“良い“がある。まるで良い芸人にもいろいろな芸風があるように、組織にもいろいろな芸風があり、大変興味深い。

トップダウンが徹底していて、社内の隅々まで厳しい教育が行き渡っている会社、例えば訪問客が執務室に現れると、全員が仕事の手を止めて立ち上がり、「いらっしゃいませ!」と言うような規律が気持ち良いほどに徹底されている会社がある。或いは、もっと自由闊達な雰囲気があり、職場のあちこちで人が縦横無尽に歩き回り、そこかしこで自然発生的な打ち合わせをしているような非常に活気のある会社もある。
組織を変えるのは「簡単じゃない」~約四半世紀に渡り試行錯誤を繰り返した人事のプロが提言する企業変革へのヒント
一方で、社員がだらっと椅子に腰掛けて、非常につまらなさそうにPCに向かって仕事をしている社員が散見される職場もある。まるで不機嫌因子が充満しているように、みんなが下を向いているような職場だ。

改めて“良い”組織とは何かを考えてみたい。これは、企業がなぜわざわざ人の集合体である組織を作って事業を経営しているかを考えるとわかりやすい。組織が人の集合体である以上、その構成員である一人ひとりがその持てる力を最大限に発揮し、集合体として価値が最大化されている状態であることが最も目指すべき姿と言えよう。何故ならそこに至らない状態は“機会損失”と言えるからだ。その状態に近づいているか、離れているかが“良い・悪い”を判断する軸であるとするならば、企業はどのようにしてそういう組織を作っていけばよいのだろうか。また、どのようにしてそういう状態を持続していけるのだろうか。

本稿では3回に渡って、このテーマを扱っていきたい。

危機感は会社を変えられるのか?

「うちの会社の社員には危機感がなさすぎる。」という声をこれまで何度も耳にしてきた。経営陣が社員の危機感の欠如について言う場合もあるし、その逆(社員が経営陣の危機感の欠如に対して言うこと)もある。いずれの場合であっても、彼らの言う「危機感」には重要な前提があるように思う。それは、自分が考える「当社はこのような会社であるべき(To Be)」という将来イメージ、そして、「当社の今はこうである(As Is)」と言う現状認識の双方が発言者にとっては“正しい”ものであると言うことだ。

両者が正しく、かつギャップが明らかなのに、何故社員は、ないしは経営陣はそのギャップに対して危機感を持たないのか、というフラストレーションを持つことになる。To BeとAs Isのギャップを明らかにし、それを埋めるアクションを取りましょう、というのがセオリーかもしれないが、10年ほど企業内人事で変革に取り組み右往左往してきた経験から言えるのは、「そんなに簡単じゃない」というものだ。

まず、組織の中には明らかに「情報の非対称性」とも言うべき状態がある。筆者は所属していた会社の社員や経営陣の多くと1対1で率直な対話を繰り返し、その中で数限りない愚痴や不満にも日々耳を傾けてきたが、人と人とが理解し合えない、噛み合わないことの決定的な理由の1つに、「情報の非対称性」があると考えている。

経営全体を俯瞰している立場から見えている景色、つまり経営陣が持っている情報と、組織図の中でそれぞれの持ち場を守っている立場から見えている景色、つまり一社員が持っている情報はどうしても一致しない。


この後、下記のトピックが続きます。
続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。
●誤解を招きがちな「企業変革ストーリー」
●変革はトップから?答えは「Yes and No」その真意
●激痛を伴う、ミドルマネジャーの自組織変革


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