ProFuture代表の寺澤です。
一昨年にコロナ禍になって約2年間がたち、「新しい日常(ニューノーマル)」がすっかり当たり前になって、既に後戻りができない状況になっていますね。そのことを象徴する事例を一つ紹介します。アップルが、2021年9月から、リモートワークから週3日オフィス出勤を義務づけるように通達したところ、社員の一部グループから反対声明が出て、コロナ感染再拡大もあり結果的に無期限延期になりました。Facebook、Twitterもコロナ感染収束後もリモートワークを無期限で認めるとしているそうです。
第130回-2022卒学生に聞いた、企業の選考中に「志望度が変化したエピソード」と「改善してほしいと感じたこと」
この事例を出したのは、リモートワークが良くてオフィス出勤が悪いということではありません。会社が一方的にことを決めて社員に守らせるのではなく、企業が価値観の多様性を受容しつつ、双方のすり合わせでことを決めていくように変わってきているということです。GAFAクラスの企業でも、そうした潮流の中にあります。

こうした動きはまさに雇用関係性の大転換による現象だと私たちは捉えており、採用においてもこれまでのように応募者を「マス」として捉えるのではなく、一人ひとりを「個」として捉えることが必要になってきていると考えます。こうした大きな変化への対応、ニューノーマルの形成において、人事が果たすべき役割と責任の重さは、圧倒的に増しています。HR総研では、価値ある情報をこれからもしっかりとお届けしてまいります。本年も何とぞよろしくお願いいたします。

入社後に活躍する自分をイメージできるか

さて、今回は、HR総研が「楽天みん就」と共同で2021年6月に実施した「2022年卒学生の就職活動動向調査」の中から、「企業の選考を受ける中で、志望度が上がったエピソード」、逆に「企業の選考を受ける中で、志望度が下がったエピソード」、そして「採用する企業側に改善してほしいと感じたこと」を取り上げます。2022年卒学生の本音の声を確認いただき、ぜひ今後の採用活動の参考にしていただければ幸いです。

まずは、「企業の選考を受ける中で、志望度が上がったエピソード」です。

前回までの「インターンシップ」や「面接官」の企業好感度ランキングでも取り上げましたが、「フィードバック」を挙げる学生がここでも少なくありません。

・面接中、人事の方がフィードバックをくれるところは志望度が上がった。また、自分の話に相づちをくれたり、逆質問のときに聞きづらい部分を自ら開示してくれたりした会社は印象が良くなった(文系・上位私立大)
・面接の最後に10分ほどその日の面接のフィードバックをいただく時間を設けてくださったこと(文系・早慶大クラス)
・面接の通過連絡の際に、どんな点が評価されたかフィードバックがあった。自分に興味を示してくれていることがうれしかった(理系・早慶大クラス)

お決まりの質問項目を読み上げるのではなく、学生個々に応じた深掘り質問を投げ掛けることは、自分への興味と受け取られ、有効です。ただし、質問の仕方によっては圧迫面接(追及)と受け取られますので、質問の仕方や態度には十分留意しましょう。

・面接の中で優しく丁寧に深掘りした質問をしてくれると、それだけ興味を抱いてくれていると感じ、うれしくなって志望度が高まった(文系・中堅私立大)
・一次面接と二次面接で、きちんと人事内での連携が取れており、エピソードトークしたときに理解した上での深掘り質問をされたこと(文系・その他私立大)

一般的に、広報活動であるセミナー・会社説明会と、選考段階となる面接は切り離されて運用されるケースが多いようですが、選考途中に面接ではなく面談を挟み込むことは、学生の不安や質問を解消し、志望度の向上にも極めて有効な施策といえます。

・面接中に、「社員とお会いしたかったけどお会いする機会がなかった」という話をしたら、選考途中であるにもかかわらず個別にOB訪問を設定してくださったこと(文系・早慶大クラス)
・実際の業務について現場社員が登壇し、講義してくれるイベントを選考途中で開催してくれたこと(文系・上位私立大)
・社員同士の会話を聞ける企業は志望度が上がりやすかった。雰囲気は大切にしたいという思いがあり、特に新入社員と上司との会話などがある企業のほうが、内定後の自分の社員像が想像しやすく良かった(文系・その他国公立大)
・最終面接前の面談を開いてくださったこと。聞いておきたいことを聞くことができ、不安なく面接に臨めた(文系・上位私立大)

学生が目先の合否ではなく、入社後の働くイメージ、自分が活躍するイメージまで持つことができれば、もうこちらのものといえます。

・個別面談の際に社員の方からぜひ入社していただき一緒に働きたいと言われた。また、こちらの働き方の希望(仕事内容や残業等)を話す機会やそれを受けての会社としての考え方、給与について共有してもらえた(理系・旧帝大クラス)
・社長、役員にあなたなら活躍できると思うと言っていただいたこと(理系・旧帝大クラス)
・自分の大学の同じ学科の先輩がどのように活躍しているのかを教えていただいた(理系・上位国公立大)
・社員の方にあなたならこういうふうに活躍できるよとイメージを与えていただいたエピソードは志望度が上がるきっかけになりました(文系・上位私立大)

会社の将来像への期待や安心感も重要な要素です。

・会社の将来展望が分かってやりがいありそうと感じた。リクルーターと話す中で、副業OKや教育制度など、キャリアアップのサポートが豊富だと知ったことも志望度向上につながった(文系・旧帝大クラス)
・企業の中長期経営計画を示してくれたこと(文系・上位国公立大)
・競合他社について尋ねたときにも親切に対応してくださったため、自社のことだけでなく、就活生のことを考えてくれていると感じ、志望度が上がった(理系・旧帝大クラス)

新型コロナウイルス対策として密を避けるためにリアルな施設見学の実施が難しい中、オンラインや映像による施設(オフィス、研究所、工場など)見学は、特に理系学生に対しては威力がありそうです。

・企業見学をオンラインで開催していただいたところ(理系・中堅私立大)
・工場見学がなかなか難しい世の中になったので、技術職は会社の様子を見ることが難しい。しかし、ぜひ見てほしいとビデオを作って見せてくれた企業があった(理系・その他私立大)

女性の応募者に向けては、何でも質問できる女性同士での懇談会が有効です。

・女性社員と女子学生のみの話し合いの場を設けてくださり、女性特有の質問をすることができた(理系・上位国公立大)
・女性社員との懇親会があり、和やかな雰囲気の中、実際の職場環境や福利制度の実態について、自身の体験と共に教えてもらえる機会があり、より身近にワークライフについて検討することができた(理系・旧帝大クラス)

志望度向上に一番重要なのは「人事の印象」

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