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つぶれない会社のリアルな組織戦略

生産性を下げる「テレワークいじめ」、回避する3つの運用ルールとは

職場で一番会社の生産性を下げる人材、それは社内外の人達に「いじめや嫌がらせをする人」です。私もしばしばご相談を受けるのですが、いじめや嫌がらせをする人には共通した特徴があります。それは、「その会社やポジションに実力がフィットしていない人」です。

職場内外でのいじめ、嫌がらせは会社の数字に直結する

会社や上司から評価されていないと感じている、あるいは自分の結果が出せずに焦っている。そのようなストレスの溜まった人達が発散のために他者を攻撃しています。弱者に対してのみならず、自分のポジションを脅かすようなライバルが現れた場合も、「攻撃は最大の防御」として、罠を仕掛ける人もいます。それは、裏を返せば、正々堂々と戦ってもこのままでは自分が負けるという「焦り」からくる行為だと思います。

こうした行為は会社にとって何ひとつメリットがありません。特に職場内のいじめというのは、ターゲットに対し、わざと大事な情報を教えなかったり、恥をかかせるような失敗を促したりします。それは結局のところ、まわりまわって会社の売上や利益を押し下げる結果につながります。このような発想を持っている人を職場に内包している以上、会社の数字は上がりません。総務人事担当者の方達は、「ただのコミュニケーションの行き違い」と捉えず、職場内外でのいじめ、嫌がらせというのは、会社の数字に直結する行為だという認識を強く持っていただきたいと思います。

テレワークはいじめや嫌がらせが起きやすい

では、テレワークになったら、職場でのいじめや嫌がらせがなくなるのかといったら大間違いです。遠隔でもいじめや嫌がらせは起きます。むしろ総務人事担当者や経営者の目が個別に行き届かなくなるので「起きやすくなる」と思ったほうがよいでしょう。例えば実際にこのようなことが起きています。

ある会社で、テレワーク化に伴い、在宅勤務の社員同士がコミュニケーションをとりやすくするように、チャット形式のソーシャルツールを導入することになりました。これまでのようなメールアドレスなどの設定の場合、多くの会社が総務人事部やシステム部などが、例えば「営業部のグループアドレスには誰を登録するか」といった管理をしていることが多いと思います。しかし、ソーシャルツールは、各社員がどんどん自発的に自由にグループを設定することができます。

例えば社内に「Aプロジェクト」という仕事があれば、「Aプロジェクト」という名前のグループ登録と、そのグループに誰をメンバー登録するかという設定を、数分のうちに誰でも作れてしまいます。反対に一旦登録した人を外すことも簡単にできます。また、そのグループ内のやりとりは、オープンにも、またクローズドにも設定できます。

メールでのやりとりの場合、自分の仕事には関係のないメールも「CC」で1日何十件も飛んでくることがあると思います。ソーシャルツールを使えば、「本当に自分に関わりのある仕事」の情報だけをやりとり、閲覧できるようになるので、とても便利です。

ところが、それを悪用する人というのがやはり出てきます。ある日、総務人事部のBさんに、Cさんという社員から、相談のチャットが来たそうです。

「私はAプロジェクトのクローズドのグループに入っていたのに、同僚のDさんが突然私のアカウントをAプロジェクトから外して、グループチャットのやりとりが見られなくなってしまったんです。なぜ削除したのか本人に聞きづらいし、誰に相談したらいいかわからなくて……」。

近年はフラットな組織の会社も増えたので、直属の相談できる上司が特にいない、という会社も多く、また新しいツールは、運用ルールが追い付かないまま「とりあえず導入しよう」というケースも多いので、そうした隙をついて、嫌がらせが起きやすくなっています。

Bさんは、「子供の喧嘩じゃあるまいし、そんなの自分で聞けばいいじゃない」と思いつつも、Dさんにチャットで質問をしたそうです。すると、Dさんから、膨大な量の言い訳メールが届き、さすがに、「これは嫌がらせだ」と気付いたそうです。急遽、総務人事部で話し合いをし、運用ルールを策定しました。この話にはオチがあって、Dさんは誰にも気づかれずにBさんのアカウントをこっそり外したつもりが、実はBさんに「Dさんがあなたのアカウントを外しました」という通知が届く機能があるのを知りませんでした。

Bさんがなぜ総務人事部に相談したのかというと、「普通はアカウントを外す理由があるなら、こういう理由で外してもいい?と本人に聞くはずなのに、勝手に外した上に、表面上はそれに何も触れず普通に接してきたので、気味が悪かったから」ということでした。

トラブルを回避する3つの運用ルール

テレワークの体制を急遽準備した会社も多いでしょうから、その運用管理のルールまでまだ手がまわっていない、あるいは、性善説で社員に任せているという会社もあるかもしれません。しかし職場は「全員が気の合う友達同士」ではありませんので、ある程度の運用ルールや管理は必要だと思います。

(1)「他者をおとしめる行為に使用することを禁止する」と通知する
(2)トラブルがあった際の窓口、連絡先を開設、通知して一元管理する
(3)グルーピング機能がある場合、メンバーの登録、除外時のルールを決めておく


たとえば、新しいソーシャルツールを導入した場合は、時間がない中でも、上記の3つを行っておけば、多くのトラブル、つまり会社の生産性を下げる行為は未然に防げます。一方で、最新のツールほど、ガチガチの運用ルールを作ってしまうと、ツールの良さそのものが軽減されてしまう面も確かにあります。総務人事部としても難しい舵取りが必要になりますが、最低限の運用ルールで「最大限にそのツールの良さを活かし」、「社内コミュニケーションのリスクを最低限に抑える」、この両立を目指していただきたいと思います。
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著者プロフィール

流創株式会社 代表取締役 経営コンサルタント/作家 前田 康二郎

数社の民間企業で経理総務、IPO業務、中国での駐在業務などを経て独立。現在は「フリーランスの経理部長」としてコンサルタント活動を行うほか、企業の顧問、社外役員、日本語教師としての活動、ビジネス書やコラムの執筆なども行っている。著書は『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』のほか、『スーパー経理部長が実践する50の習慣』、『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』、『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』『経営を強くする戦略経理(共著)』、『スピード経理で会社が儲かる』、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』、『自分らしくはたらく手帳(共著)』など多数。節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)も運営している。また、2020年6月26日に新著『つぶれない会社のリアルな経営経理戦略』が発売された。

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