先日、ある懐かしい動画に目が留まりました。有名な音楽プロデューサーが、オーディション番組で勝ち上がった新人たちをレコーディングスタジオで指導している姿でした。
「もう少しテンポ上げてみようか」「跳ねる感じでもう一度」「間違ってないからもっと自信もって歌って」
自分がコンサルタントになった今、その動画を昔とは全く違う視点で観ていることに気づきました。おそらく当時の自分は、指導される側の視点だったのだと思います。プロデューサーがアドバイスする前と後では歌の印象が全く変わり、どんどん新人に磨きがかかっていくため、昔はこのプロデューサーを「面白そうなお兄さん」だと思って観ていました。ですが今回は、「やはりプロの指導者はすごい」と改めて思ったのです。と同時に、「あ、これが自分の目指そうとするものだ」と思い至りました。
第8回:「働きやすく、利益が出やすい」会社に変えるために、外部からの視点が効果的な理由とは

外部コンサルタントのアドバイスを活かす「3つの条件」

自分で経営コンサルタントと名乗っていながらも、「コンサルタント」という言葉は概念の幅が広すぎるので、具体的に何をする仕事なのか説明が難しいといつも感じていました。私の場合、難しい数式やデータの話ではなく、「御社の、ここのやり方を少し変えるだけで(他は何も変えなくても)格段に利益が上がりますよ」というアドバイスをメイン且つ得意としています。ですから、「会社の利益を向上させる外部プロデューサー」のような存在とでも言えばいいのかなと納得した次第です。実際に、社内外を問わず、そのような視点を持った人がいるかいないかで、会社の利益は大きく変わってきます。

但し、どんなに良いアドバイスがあったとしても、それが活かされる場合も活かされない場合もあります。外部のコンサルタントが役に立つ環境には、下記の3つの条件があると私は思います。

1.当事者にやる気があること
2.当事者に聞く耳があること
3.当事者がコンサルタントのアドバイス通りに実践すること

このことを、冒頭にお話したレコーディングのレッスンに例えて解説しましょう。

1.当事者にやる気があること
本人にやる気がなければ、いくら良いボイストレーナーやプロデューサーがついても、歌が良くなることはありません。実際に歌うのは他の誰でもなく、当事者なのです。

⇒会社の社長や社員に「改善するぞ」「成長するぞ」という「やる気」がなければ、いくら名うてのコンサルタントがアドバイスをしても、その会社が良くなることはありません。

2.当事者に聞く耳があること
1の条件を満たしたやる気がある人でも、人の話を聞く耳がなければ、いくら良いアドバイスを受けても、歌が変わることはありません。

⇒会社の社長や社員にいくら改善する気があっても、アドバイスに耳を傾けず、「あなたたちコンサルタントは自分たちの何を知っているのか」と、反発するばかりでは、その会社が改善されることはありません。

3.当事者がコンサルタントのアドバイス通りに実践すること
1と2の条件を満たしている、つまりやる気と聞く耳があっても、言われたことを「その通りに」実践しなければその人の歌が変わることはありません。

⇒会社の社長や社員にやる気があり、さらに聞く耳を持ち合わせていたとしても、「いい勉強になりました」というだけで事を起こさなければ、何も変わることはありません。ビジネス書を読んだだけで満足して何も実践しないのと一緒です。

まずは素直にアドバイスを聞き、試してみてからアレンジを考えよう

特に3の実践については補足の説明が必要です。経営改善でコンサルタントの方たちが手をこまねく会社には、せっかくのプロのアドバイスを「勝手にアレンジしてしまう」というケースがよく見られます。一度コンサルタントのアドバイス通りにやってみた上で「こういうやり方もいいかなと自分たちで考えてみたのですがどうですか」ということでしたら積極的で一番いいのですが、そうではなく、一度もプロのアドバイスを実践することなく、それを参考に自分たちでオリジナルの方法を勝手に編み出してしまうのです。例えて言うならプロの料理人のレシピを勝手にアレンジして結果的にまずくなった状態に似ています。そのような会社が実は一番経営改善をしにくいです。

オリジナルの発想とともに「再現性」も、その人やその会社が、本当に実力があるかどうかを確かめるバロメーターになります。実力のある人は相手が言った通りにすぐできる人が多いのです。その上で次のステップとして自分なりのアレンジの提案などをします。「コンサルタントの言う通りに実行しているのに結果が出ない」という会社は、「本当にコンサルタントの言う通りに」実践しているか、もしかして誰かが勝手にアレンジを加えていないかをチェックしてみてください。

プロの音楽プロデューサー、プロのコンサルタントは、いずれも客観的な実績があるからプロなのであり、その道に精通しています。そのため、「まずはその人たちの、これがベストだという方法通りにやってみる」というのがセオリーです。「素直な人が一番伸びる」と多くの経営者がおっしゃるのもこうしたことからでしょう。

強い会社の中には、外部のコンサルタントを頼らず、会社内の活発な議論で「社内をもっとこのように改善したほうが良い」という案が生まれ、実践されその通りに改善されていくケースもあるでしょう。音楽やスポーツで言えば、いわゆる「自主練習」「チーム練習」でプロ並みに向上するような人です。一方、せっかく優秀な才能が揃っているのに、なぜか結果が出ない、という、身内目線だけで自分たちに限界を感じてしまっている「もったいない会社」も世の中にはたくさんあります。最後の一押しさえあれば、そのような会社は花開きます。

「あと一押し」「あと一声」が必要な人や会社にとって、外部のコンサルタントは役に立ち、効果があるはずです。外部のコンサルタントから見た、自社の「働きやすさ」「利益の出やすさ」とはどのようなものなのかを参考にした上で、さらに自分たちの職場環境や利益をより良くし、働き方改革や生産性の向上につなげていく、というのも一考だと思います。
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