ProFuture代表の寺澤です。
2月26日に、政府が2021年卒から採用に直接結びつけるインターンシップ(就業体験)の禁止を、近く経済界に要請する方針を固めたとの報道がありました(同日付 朝日新聞 朝刊)。報道を見る限り詳細はまだ分かりませんが、これまで経団連が定めていた倫理憲章を踏襲するものであり、「企業説明会は3年生の3月、面接は4年生の6月解禁」という現行ルールを政府は当面維持する方針を出していますので、その動きに沿ったものと言えるでしょう。
第96回 就職ナビは専用アプリを活用、大手企業はAIチャットやWEB面談など新しい試み
さて、実際に要請がなされた場合、それが守られるものでしょうか。結論から言うと、おそらく無理でしょう。HR総研でのいくつかの調査結果を見る限り、21年卒採用が20年卒採用より採用時期が遅くなることは、まずないでしょう。早期の採用活動としてインターンシップがほぼ定着してきている中で、これを覆すには強烈な罰則規定が必要でしょうが、政府がそのような罰則を出す気配はまったく見られません。だいたい、経団連傘下の企業ですらこれまで守られなかった採用時期のルールが、政府が何かしたとしても、あらゆる企業が守るようになるとは到底思えません。

また、かつては大手の就職ナビ会社がエントリーを受け付けなければ企業は採用活動を進めることができませんでしたが、SNSやダイレクトソーシング、HRテクノロジーなど、学生へのさまざまなアプローチ手法が出てきている現状において、一律的な規制を行き渡らせることは至難の業と言えます。おそらく、多くの企業が「通年採用化」(時期に縛られず、一年中いつでも採用を行う)を御旗とし、早期の活動を継続、強化して行うことになることでしょう。
採用のルールが変わる中で、どこよりも早く動こうなどという早期化の競争に巻き込まれることなく、自社の採用力をどう高めるのか、休職者に真に選ばれる働き方をどう実現していくのか、根本的に自社の採用の在り方を見つめ直す時期に来ているのだと思います。

専用アプリでプレエントリーを促進

さて、いよいよ採用広報解禁日である3月1日を迎え、本格的な採用・就活シーズンに突入したと言ってよいでしょう。3月1日に日付が変わるとともに、各就職ナビがグランドオープンし、2020年卒向けの採用情報の公開とプレエントリーの受付が一斉に開始されました。主要な就職ナビでは、今年も日付が変わる直前(2月28日 23時30分等)に、学生が気になるコンテンツの公開を開始するなどして学生を囲い込み、グランドオープンの瞬間を自社の就職ナビで迎えさせようとする動きが見られました。特に、就職ナビの2強を形成する『リクナビ2020』と『マイナビ2020』による、あれやこれやの施策には、はたから見ていて頭が下がる思いです。

掲載企業へのプレエントリー数を競う両社の施策の中心は、日付が変わる前に、学生にプレエントリー先企業をいかに事前にピックアップしておいてもらうかというものでした。グランドオーブンしてから、条件を入力して企業を検索し、その検索結果ページやその企業のページからプレエントリーしてもらうのでは、手間や時間がかかるばかりでなく、学生のアクセスが集中することでサーバの負荷が高まり、下手をするとサーバのダウンを招きかねません。そこで、事前に候補企業の選択を済ませてもらい、グランドオープン後にはワンクリックで一斉にプレエントリーさせてしまおうというものです。

今年興味を引いたのは、専用アプリの活用です。昨年6月1日に、インターンシップサイトとしてプレオープンする際にも見られましたが、『リクナビ2020』『マイナビ2020』ともにWEBと連動した専用アプリを公開・配布しており、このアプリからプレエントリーしてもらうというもの。例えば、『マイナビ2020』の『マイナビ2020-就活準備・新卒情報アプリ-』の場合、日付変更後に起動するだけで、事前にピックアップした企業に自動的に一斉にプレエントリーがされるという仕組みです。WEBを利用する必要もないわけですから、これまでよりも随分とサーバの負荷も軽減できます。風物詩となっていた、グランドオープン直後のサーバダウンが今年は見られませんでした。

3月1日にはもう第1ラウンドが終了

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