第1回 グローバル化の落とし穴、人と組織にまつわるギャップを把握せよ

世界戦略の中で何が起きている? 現地中国からの実態報告と提言

企業の成長戦略において、海外展開は欠かせません。中でも進出企業が多いのが、東アジアや東南アジア(以下、新興国)。多くの企業が、安価な労働力を求めて製造拠点を展開した地域ですが、今では経済の発展が著しく市場としての価値も高まっています。それに伴い、求める人材の質も変化しており、最近は優良な人材を求めて進出するエリアへと変遷しています。
市場価値を認めて進出するということは、当該地域において、事業を展開する日系企業と現地企業、そして欧米企業が人材の獲得という分野においても競争相手になることを意味します。事業の優位性を確保するためにも現地採用の人材をコーポレートメンバーと認識し、その成長を促しながら活用していくことが、グローバル戦略上欠かせないものとなっています。

日本とは異なる新興国の労働法規、時代の要請で頻繁に変わる法律、そして商習慣の違いが起こす労務問題は相変わらず現地経営陣の頭痛の種といえるでしょう。同時に、日本とは異なる、労働者や学生の就労観を的確に把握し、モチベーション向上を意識した人事施策も要求されています。

そこで、特に現場企業活動の規模、またその戦略上の重要性から対応の緊急度の高い中国にクローズアップ。現場で何が起きていて、企業側がどのような対応を迫られているのか、実態を紹介します。

人事管理を困難にする、『ギャップ』を正確に把握せよ

中国での実態を把握するには、まず日中および、中国地域間での企業が抱える『ギャップ』を正確に認識することが始まりと考えていいでしょう。ギャップとは、以下の5つを意味します。

  ・自社労働契約など規定類と現地法律、政令の要請とのギャップ
  ・自社規定類に記載されていることと実際日々行われている運用とのギャップ
  ・本社を含めたマネジメントの戦略・HR方針と現場とのギャップ
  ・自社報酬体系・報酬水準と市場とのギャップ
  ・現場採用人材とのコミュニケーションギャップ
 
中国では、急激な社会変化に伴う法律の変更が頻繁です。かつ地方によって法定休暇日数が異なる、社会保険計算基数が異なるといった、ルールが固有かつ運用が統一されていないことで、人事管理を難しくしています。中国での労働争議が時々日本で報道されていますが、それは大規模に発展したものだけです。実際には現場で日々不要な金銭解決を迫られたり、不適切な人員を抱え込まざるを得なくなったりするケースが多々起きています。また、問題対応へのわきの甘さから会社の文化が形成されてしまうこともしばしばです。

日系企業においてはこのギャップが高い確率で存在し、かつマネジメントの認識と現場のズレが大きいというのが現地からの警告です。ある意味これらのギャップを本来のあるべき姿(経営方針・人事施策)に戻すリーダーシップが企業側(本社およびマネジメント)に不足していることが問題をこじらせていると言っても過言ではありません。

一方社員の働くモチベーションに関する施策においても、何が期待されているのか、どのような報酬体系が設定されているのか、上位役職への可能性・昇進スピードなどにおいて市場とのギャップが優秀人材の離職・採用困難を招いています。

本コラムでは、本稿を含み全5回で、中国の現地人事施策について取りあげていきます。次回からは、現地子会社で何が起きているのか、その実態を紹介します。
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著者プロフィール

Cochi Consulting ( Shanghai ) Co,. Ltd (可馳企業管理諮詢上海有限公司) 法人代表 中内 重郎

1970年日本アイ・ビー・エム入社。1995年取締役に就任、CFOとして活躍。その後専務取締役を経て2005年退任。2006年からアメリカ最大のテクノロジー専門投資会社シルバーレークテクノロジーの日本責任者,中国IT会社iSoftstone Technology(NY 上場)の日本事業会長、数社の社外役員を経験後、現在(株)IMAGICA Group監査等社外取締役を務める。日米中のマネジメント経験を活かし2012年人事専門の仲間とともに、日本企業向け人事総合コンサルティング会社として可馳企業管理諮詢有限公司(上海)、Cochi Consulting(Shanghai)Inc, を立ち上げる。

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