今年の就活学生には、これまでとは明らかに違う「傾向」を感じる。売り手市場による「余裕」も、その理由であるが、「消費マインド」による就活が確立したとみても良いかもしれない。このような「消費マインド」による就活学生に対して、企業側も、選考の視点を変える必要があるのでないだろうか。
今年度“就活生”に見る新しい傾向と、それに応じた新しいアプローチへ。

“売り手市場”の中で感じる、就活生の“余裕”

今年も新卒学生の就職活動が本格化している。毎年、キャリアコンサルタントとして、就活に挑む学生さんと接する機会をいただいているが、今年は、「これまでと違う傾向」を感じている。

「“就活”は何から始めたら良いのか?」「どういう業界をうけたらいいか?」「どんな会社がお勧めか?」「エントリーシートって、どういうものなのか?」「面接では、どのような質問がされるのか?」「“就活本”というものは買って読んだ方が良いか?」等々といった、就活の根本的な質問を受けることが、例年よりも多いのである。

これまでもこのような質問を受けることはあったが、就活の終盤期、特に採用活動に乗り遅れてしまった学生さんや、就職意識の薄い学生さんに多いものであった。

ところが今年は、就活の序盤、それも比較的真面目で、積極的な活動をおこなおうとする学生さんに多いのである。何人かのキャリアコンサルタントの方々と意見交換したが、同様のことを感じている方が多いようだ。この特徴の理由は何だろうか?

大きな理由としては、「“売り手市場”による“余裕”」ではないだろうか、との意見がある。確かにそれも大きな理由であるだろう。現在は、“買い手市場”であった時期に、よく見られた“悲壮感”や“焦り”というものは、あまり感じない。企業側の求人活動も活発であるから、当然、就活生には“余裕”が出てくるだろう。

しかし、それだけでは無いように感じるのである。

会社選びは“人生の大きな選択”であるが“転機”ではない!?

以前、「労働マインド」ではなく「消費マインド」で働く人が増えているのではないか?といったことを、書いたことがある。ここで改めて述べよう。

「労働マインド」とは、自らの努力や頑張りが、即時に正当に評価されないことを前提としている。自らの努力や頑張りは、長期的にジワジワと評価されるものである認識があるので、多少のジレンマや不条理は我慢したりする。
一方、「消費マインド」は、基本的には、こちらが支払うものと、交換されるものが即時に等価であることを求める傾向にある。

就活においても、「消費マインド」によって行うことが、「当たり前」になってきたのかもしれない。就活イベントなどでも、就活学生は、就職先の会社を選びに来るのではなく、(誤解を恐れずに言えば)何か大きな買い物をしにきているようにさえ感じる。

たくさんの会社を回り、情報を収集し、出来るだけの準備を行うのではなく、できる限り効率的に動き、その効率に見合った最大限の結果が生まれる事を望んでいるのではないだろうか。

現在の就活学生にとっては、会社選びは「大きな買い物」であるだけに、当然“人生の大きな選択”ではあるが、“人生の大きな転機”ではない。これまでの「消費者マインド」の延長線上にある一つの“通過点”である ―― そう認識しているように感じるのである。

ただ、誤解していただきたくないのは、ここでは、就活学生を批判している訳ではない。このように「明らかに変化が起きている」ことを、企業側の人たちにも知っていただきたいということだ。

採用した後、そうした「消費マインド」をいかにして「労働マインド」へ変えたらよいか?との質問を企業側から受けることがあるが、今の時代、それはなかなか難しいことである。

「労働マインド」で働く=○、「消費マインドで働く」=×、ではない。

「消費マインド」で働くことを否定するのではなく、それに呼応する人事制度の適用や対応をすれば、その人材を活かせることができるではないだろうか。

採用活動においても同じである。今年の新卒学生に対しては、「良い意味で」今までとは違った視点で見て、選考をして欲しい。強くそう思うのである。
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