テレワーク推進やDX推進など、働き方やビジネスの在り方が大きく変化する中、今後必要な研修や、効果的な実施方法などを模索している企業も多くあると思われる。企業では、どのような研修をどのように実施しているのだろうか。
HR総研では、テーマ別研修制度の実施状況に関するアンケートを毎年実施しており、今年は2021年9月3〜9日に実施した。テーマ別研修の実施率やオンライン化率、各種研修の実施状況について、フリーコメントを含めて報告する。

<概要>
●研修のオンライン化率、昨年より大幅に増加
●出社率が低いほど顕著に高い「オンライン化率」
●社員出社率で異なる「今後強化する研修」とその理由とは
●対象者の世代により異なるキャリア研修の内容
●キャリア研修の効果は半数程度
●テレワーク推進企業ほど「キャリア自律」を促進
●リーダーシップ研修の実施率は半数近く
●7割近くが「リーダーとしての在り方・姿勢・役割意識」に課題
●コミュニケーション研修対象者「新入社員」が最多、階層別に内容も異なる
●コミュニケーションスキル向上、半数が実感
●メンタルヘルス研修は「健康経営」として実施が最多
●セルフケアだけでなく周囲が気づける基礎知識も重要

研修のオンライン化率、昨年より大幅に増加

まず、テーマ別研修の実施率を見てみると、「コンプライアンス研修」が最多で52%、次いで「ハラスメント研修」が50%、「メンタルヘルス研修」が36%などとなっている(図表1-1)。また、2020年調査時(以降、昨年調査時)の結果と比較すると、「コンプライアンス研修」(昨年51%)と「ハラスメント研修」(同44%)は昨年調査時の上位2項目と同じであり、その割合はともに微増している。昨年調査時に3位であった「リーダーシップ研修」は5ポイント低下する一方、5位であった「メンタルヘルス研修」は4ポイント上昇して順位が入れ替わっており、メンタルヘルス対策への優先順位が高まりつつあることがうかがえる。

【図表1-1】テーマ別研修の実施率(2020年と比較)
HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関する調査 結果報告
実施しているテーマ別研修について、オンライン形式で実施している割合(オンライン化率)を昨年調査時の結果と比較してみると、オンライン化率が最も高い「ダイバーシティ研修」は95%で、昨年より48ポイントも増加している。次いで「個人情報関連研修」は80%で昨年より37ポイント増加し、研修の実施率が最も高い「コンプライアンス研修」でも79%とほぼ8割がオンライン化し、昨年より35ポイント増加している。このように、ほとんどのテーマ別研修において、昨年より大幅にオンライン化率が高まっていることが分かる(図表1-2)。

【図表1-2】実施しているテーマ別研修のオンライン化率(2020年と比較)
HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関する調査 結果報告

出社率が低いほど顕著に高い「オンライン化率」

コロナ禍による影響を受けて社員のテレワークを継続している企業も少なくない状況を受けて、社員の出社率によって研修の実施状況も異なることが想定されるため、現在における社員の出社率を確認する。
社員の出社率を企業規模別に見ると、従業員数1,001名以上の大企業では、「30〜50%未満」が最も多く26%、次いで「10〜30%未満」が20%などとなっており、「出社率70%未満」(「0%」〜「50〜70%未満」の割合の合計)は66%と7割近くに上り、301〜1,000名の中堅企業では「出社率70%未満」が53%で過半数に、300名以下の中小企業では47%と半数近くとなっている。企業規模が小さいほど社員出社率が高い傾向はあるものの、いずれの企業規模においても半数程度以上の企業で「出社率70%未満」の状態にあることが分かる(図表2-1)。

【図表2-1】現在における社員出社率
HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関する調査 結果報告
そこで、出社率を「出社率30%未満」、「出社率30〜70%未満」、「出社率70%以上」の3グループに分けて、出社率別に「実施しているテーマ別研修のオンライン化率」を見てみる。
「出社率30%未満」の企業群における上位10項目について見てみると、いずれの研修においても他2グループよりオンライン化率が高く、「ロジカルシンキング研修」は100%となっている。また、研修実施率で上位にある「コンプライアンス研修」や「ハラスメント研修」、「メンタルヘルス研修」を含めたすべての研修で8割程度以上の企業でオンライン化しており、上位10項目のオンライン化率を平均すると86%となっている(図表2-2)。
一方、「出社率30〜70%未満」では上位10項目のオンライン化率平均値は68%、「出社率70%以上」では60%となっており、出社率が高いほどテーマ別研修のオンライン化率が低くなる傾向がうかがえる。とはいえ、出社率が高い企業群でも研修のオンライン化が徐々に広がっていることも確かであり、研修実施形式の主要な選択肢として、オンライン形式での研修も定着しつつあることがうかがえる。

【図表2-2】社員出社率別 実施しているテーマ別研修のオンライン化率
HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関する調査 結果報告

社員出社率で異なる「今後強化する研修」とその理由とは

社員の働き方の変化に応じて強化すべき研修も異なることが想定されるため、「今後強化する研修」についても社員出社率別に見てみる。
「出社率30%未満」の企業群では、「コンプライアンス研修」が最多で24%、次いで「キャリア研修」が21%、「チームビルディング研修」が19%などで、「出社率30〜70%未満」では「コンプライアンス研修」が最多で21%、「コミュニケーション研修」と「チームビルディング研修」がともに16%などとなっている。「出社率70%以上」では「リーダーシップ研修」が最多で24%、次いで「ハラスメント研修」と「コンプライアンス研修」がともに22%などとなっている(図表3-1)。
出社率が最も低い(テレワークが推進されている)「出社率30%未満」の企業群では、働き方がテレワーク主体となることでキャリアの見直しをする社員の増加、オンラインでのチームビルディングや個人情報取扱いへの意識喚起の必要性が高まっていることがうかがえる。

【図表3-1】社員出社率別 今後強化する研修
HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関する調査 結果報告
今後強化したい研修の理由について、フリーコメントで得られた代表的な内容を一部抜粋して以下に紹介する(図表3-2)。

【図表3-2】今後強化したい研修の理由(一部抜粋)
強化したい研修の理由従業員規模業種
女性リーダー研修:女性の社員比率に対して、管理職比率が低いため、リーダー育成を強化します1,001名以上情報・通信
コーチング研修: 上司と部下のコミュニケーション質向上1,001名以上情報・通信
キャリア研修:自身のキャリアを考えることで自律した社員を育成するため1,001名以上メーカー
キャリア研修:定年後再雇用が増えているため1,001名以上メーカー
リーダシップ・キャリアプランニング研修:今後人事評価制度を変えていきたいと考えており、それに先立ち評価者である管理職に組織運営やキャリア構成について知ってもらいたいから1,001名以上メーカー
メンタルヘルス研修:リモートワークが多いため、少しでも社員の状態を把握したいため301〜1,000名情報・通信
コーチング研修、モチベーション向上研修:これまで研修として取り組んでこなかったので301〜1,000名情報・通信
ハラスメント研修:指導とハラスメントの境界線が難しいため。また、相手の受け取り方が難しいため301〜1,000名サービス
コミュニケーション研修:コロナ禍でのコミュニケーション強化。ライフプラン研修:シニア対象の第二の人生に向けた研修301〜1,000名サービス
チームビルディング研修:リモートワーク環境だけでなく、組織拡大・環境変化に合わせて300名以下マスコミ・コンサル
コーチング、リーダーシップ研修:管理職のピープルマネジメント力向上が課題となっているため300名以下運輸・不動産・エネルギー
コミュニケーション研修:社内外のコミュニケーションを活性化させ関係性向上を図るため300名以下サービス
ライフプラン研修:50代以降のキャリアプランとあわせて考える機会を提供するため300名以下メーカー
OAスキル研修, 語学研修:今後の会社戦略による(DX人財、グローバル人財強化300名以下メーカー

対象者の世代により異なるキャリア研修の内容

続いて「キャリア研修」について見てみる。
企業規模別にキャリア研修の実施率を「若手向けキャリア研修」、「中堅向けキャリア研修」、「シニア向けキャリア研修」と分けて見てみると、大企業では「中堅向けキャリア研修」が最も多く46%、「若手向けキャリア研修」は38%、「シニア向けキャリア研修」は30%となり、いずれも半数には満たないことが分かる。中堅・中小企業ではさらに実施率が低く、最も多いのは「若手向けキャリア研修」で、中堅企業で27%、中小企業では22%と3割に満たない状況となっている。いずれも実施していない企業は、大企業の40%に対して、中堅・中小企業では67〜68%と3分の2にも及ぶ(図表4-1)。

【図表4-1】企業規模別 キャリア研修の実施率
HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関する調査 結果報告
各キャリア研修を行っている企業の中で研修内容を見てみると、「若手向け」と「中堅向け」では「強み・弱みの把握、自己理解」が最も多く、それぞれ73%、67%で、次いで「キャリアの考え方」がそれぞれ68%、61%、「スキル・能力の棚卸」がそれぞれ50%、49%などとなっており、長期的な社員自身のキャリア形成を考える上で、最初に押さえておくべき項目が上位に挙がっていることが分かる。一方、「シニア向けキャリア研修」ではこれら項目に加えて、「ライフプラン設計」(64%)や「セカンドキャリア(退職後)計画」(60%)も高い割合となっており、仕事だけでなく退職後の人生全体をも視野に入れた研修内容となっていることが特徴的である(図表4-2)。

【図表4-2】キャリア研修の内容
HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関する調査 結果報告

キャリア研修の効果は半数程度

「キャリア研修」実施後のキャリア意識への効果の実感については、「確かに向上した」は5%、「まあまあ向上した」が42%で、これらを合計して「向上した」と感じる企業の割合は47%で、半数近くの企業がキャリア研修の効果を感じていることがうかがえる。一方、「あまり向上しなかった」(6%)と「向上した実感はなかった」(4%)を合計して「向上しなかった」と感じる企業の割合は10%にとどまっている(図表5)。

【図表5】「キャリア研修」実施後のキャリア意識への効果
HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関する調査 結果報告

テレワーク推進企業ほど「キャリア自律」を促進

近年、終身雇用制度の崩壊とともに社員のキャリア自律の必要性が叫ばれている中、回答企業での「キャリア自律の促進状況」について見てみる。
全体では「強く促進している」が6%、「まあまあ促進している」が27%で、これらを合計して「促進している」企業の割合は33%と3割程度になっている。一方、「あまり促進していない」(15%)と「まったく促進していない」(23%)を合計して「促進していない」の割合は38%と4割近くであり、促進している企業より促進していない企業の方が多い現状にあることがうかがえる(図表6-1)。この傾向は昨年調査時と大きな変化は見られない。
「促進している」企業の割合を社員出社率別に見ると、「出社率30%未満」では52%、「出社率30〜70%未満」では38%、「出社率70%以上」では20%となり、出社率が低い(テレワークを推進している)企業ほどキャリア自律を促進する傾向が顕著となっている(図表6-2)。
テレワークを推進する企業では社員の働き方の多様化も推進する傾向があり、このような企業では、会社に依存しない自律的なキャリア形成に対する、社員自身の意識も高まっている傾向にある。

【図表6-1】「キャリア自律」の促進状況
HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関する調査 結果報告
【図表6-2】社員出社率別 「キャリア自律」の促進状況
HR総研:人材育成(テーマ別研修)に関する調査 結果報告

この先は、会員の方だけがご覧いただけます。会員の方はログインを、会員でない方は無料会員登録をお願いします。

HRプロ会員の方はこちらから

まだ会員でない方はこちらから

登録無料!会員登録された方全員に、特典資料をプレゼント!

HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「人材育成(テーマ別研修)」に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2021年9月3〜9日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事責任者・担当者
有効回答:208件

※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
2)当調査のURL記載、またはリンク設定
3)HR総研へのご連絡
  ・会社名、部署・役職、氏名、連絡先
  ・引用先名称(URL) と引用項目(図表No)
  ・目的
Eメール:souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。