HR総研:「多様な働き方」実施状況調査:「女性活躍推進」「障がい者雇用・支援」「法的義務への対応が原動力」という実状

日本社会は今、「ダイバーシティの受容」で大きく変容しつつある。就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作り、「多様な働き方」を実現することで、労働力を創出することが、「働き方改革」の大きな目的と言えるだろう。
政府は「働き方改革関連法」だけでなく、「女性活躍推進法」や「障害者雇用促進法」などで企業に法的義務を課すことで、就業機会の拡大を加速させようとしている。
今回の調査結果から、女性活躍推進に関しては約半数の企業が取り組みを実施しており、障がい者雇用では7割の企業が「雇用している」ということが分かった。
取り組み施策や課題感、雇用の実態について、以下のレポートをご覧いただきたい。

●施策のトップは「多様な勤務時間の導入」

「多様な働き方」を受容する施策について質問したところ、昨年同様「多様な勤務時間の導入(フレックスタイム制、時短勤務、スライド勤務など)」(67%)がトップとなった。2位は「柔軟な勤務制度の導入(育児・介護・病気療養等の支援や、法定外休暇の設置など)」(58%)である。勤務時間や休暇取得の調整に関する施策は、比較的導入しやすい傾向だ。
一方で、「テレワーク」(28%)、「兼業・副業の推奨・容認」(12%)は、昨年よりポイントが増えたとはいえ、まだ浸透しているとは言い難い。
政府は2020年までに、テレワーク導入企業を30%以上まで増やすことを目標としている。また「副業・兼業」も、安倍首相自らが掲げる「柔軟な働き方の実現」に関する重点項目のひとつだ。しかし、この数字を見る限り、「勤務場所」や「雇用契約」に関する多様性への対応は、依然として敷居が高いようだ。
【図表1】「多様な働き方」の取り組み施策

●女性従業員比率は「10〜30%未満」が最多。メーカーは依然、女性比率が低い傾向

「多様な働き方」の重要項目である「女性活躍推進」について見てみよう。
正社員に占める女性の割合は、「10〜30%未満」(54%)が最多となった。2位は「30〜50%未満」(20%)、3位は「10%未満」(11%)である。
政府は「女性活躍推進法」において、従業員数301名以上の企業に対し、女性活躍推進のための数値目標を行動計画に盛り込み、公表することや、女性の職業選択に資する情報の公表を義務付けている。しかし、従業員数301名以上で絞ってみても、傾向はほぼ変わらない。
メーカー、非メーカーで分類してみると、どちらも女性比率「10〜30%未満」の割合がトップであるが、メーカーでは68%、非メーカーでは47%となり、全体的にメーカーのほうが、女性就業率が低いことが分かる。エンジニアにおける女性の絶対数、ひいては理系の女子学生の比率を飛躍的に高める施策なくして、メーカーの女性比率を高める道はないとも言える。
【図表2】正社員に占める女性の割合

●女性管理職比率は、約半数が「0〜5%未満」

女性管理職の割合について質問したところ、3年前と比較して「女性管理職(役員含む)」の割合が「増えた」と回答した企業は40%、「変わらない」と回答した企業は57%だった。この数値は、昨年調査と変わらない。
しかし、具体的な比率について質問したところ、女性管理職の割合が「5%未満」と回答した企業が35%で最多となった。「0%(管理職は男性のみ)」の割合は、18%にも及ぶ。
さらにメーカー、非メーカー別で見てみると、非メーカーでは、全体と同じ傾向を示しているが、メーカーでは「0%(管理職は男性のみ)」の割合が23%にも及んでいる。
女性管理職の登用は、決して意図的に推進すべきものではないのかもしれない。しかし、「0%(管理職は男性のみ)」という企業は、何か「偏り」を感じざるを得ない。その原因について、ぜひ考えを巡らせて欲しい。
【図表3】3年前と比較して「女性管理職(役員含む)」の割合は増えているか
【図表4】女性の管理職比率(役員含む)

●中堅・大手では半数以上が女性活躍推進・女性登用に取り組むも、中小企業は3分の1

女性活躍推進・女性登用のために、何がしかの施策を実施している企業は、全体で48%だった。昨年調査から5ポイント減少しているが、企業の約半数が実施している状況は変わらない。
企業規模別で見ると、従業員数が少なくなるほど実施率も下がり、300名以下の中小企業では、3分の2の67%が「実施していない」と回答した。「女性活躍推進法」では、従業員数301名以上の企業に対して「法的義務」を課しているが、300名以下の企業には「努力義務」しか課していない。こうした法規制がどこまで影響しているかは、本調査だけでは分からないが、長期的な組織力強化を視野に入れて、ぜひ再考をお勧めする。
【図表5】女性活躍推進・女性登用に向けて、施策を実施しているか

●取り組み施策では「女性の採用数拡大」「ダイバーシティ教育」「女性管理職比率の数値目標設定」が躍進

本項と次項については、301名以上の企業に限定してレポートする。
女性活躍推進を「実施している」と回答した企業に具体的な施策を質問したところ、「時短勤務やフレックス勤務などの柔軟な働き方に向けた制度の実施」(60%)がトップを占めた。2位は、「産休・育休からの復帰支援」(57%)である。
注目すべきは、「女性の採用数拡大」(49%)、「ダイバーシティ教育の実施(男性管理職の意識改革、セクハラ・マタハラ防止など)」(43%)、「女性管理職比率の数値目標設定」(42%)の躍進である。いずれも昨年調査では、20%を下回る数値だった。
これまでは「女性が働きやすい環境を整える施策」が上位に来る傾向だったが、採用数の拡大や意識改革、数値目標の設定を重視する傾向が顕著になったということは、日本企業が女性活躍推進に本腰を入れ始めた、という現れと言えるだろう。
【図表6】女性活躍推進・女性登用で実施している施策(従業員数301名以上の企業)

●「柔軟な働き方に向けた制度の実施」や「産休・育休からの復帰支援」は、実施率も高く、効果の実感も高い

続いて、効果の実感について質問したところ、実施している施策同様、「時短勤務やフレックス勤務などの柔軟な働き方に向けた制度の実施」(34%)、「産休・育休からの復帰支援」(30%)が上位を占めた。
一方、「女性の採用数拡大」(17%)、「ダイバーシティ教育の実施(男性管理職の意識改革、セクハラ・マタハラ防止など)」(19%)、「女性管理職比率の数値目標設定」(11%)はいずれも20%を下回っている。「特に効果を実感していない」(18%)という回答も20%近く存在することを考えると、実施施策が効果を発揮し始めるまでは、しばらく時間が必要な印象だ。
【図表7】女性活躍推進・女性登用で効果を実感した施策(従業員数301名以上の企業)

●メーカーと非メーカーで課題感が大きく分かれる結果に

ここからは再び、全体の数値を基にレポートする。
女性活躍推進・女性登用を進める上での課題について質問したところ、トップは「女性の意識・就労感」(34%)がトップとなった。以下、「女性ロールモデルの欠如」(31%)、「風土・社風」(29%)と続く。「男性上司の意識」(21%)は、「女性の意識。就労感」よりも13ポイント低い。
業種別で比較すると、メーカーでは「女性の意識・就労感」「風土・社風」「女性の採用数」の3項目が、他に突出している。非メーカーでは「女性の定着率」「育児・家事支援の有無」「長時間労働が前提のワークスタイル」が目立つ。特に「長時間労働が前提のワークスタイル」は、メーカー4%に対して、非メーカーでは19%に及ぶなど、差が激しい。
この結果から、全体的に女性自身の意識改革が大きな壁となっており、特にメーカーにおける女性の就労感や風土・社風が、女性の就業率を下げていることが窺える。しかし、一度就業してしまうと、女性の定着率はむしろメーカーのほうが高い。
非メーカーでは女性の採用数は多いものの、長時間労働や育児・家事支援の有無など、女性が働きやすい環境の整備がネックとなり、結果として女性の定着率が低くなっている実状が浮き彫りとなった。
【図表8】女性活躍推進・女性登用を進める上での課題(業種別)
女性活躍推進の実状について意見を求めたところ、たくさんのフリーコメントが寄せられた。女性活躍推進に一定の理解を示しつつも、日本社会全体における「女性の就労感」に課題を感じる意見も見られた。以下、いくつかを抜粋して紹介する。

・会社全体、社会全体の男女均等といった意識を高めていかないと、制度だけ作っても難しい。人事はなるべく女性管理職を増やす努力も推進すべきだし、社員もそれをウェルカムと思わないと、進まない(1001名以上/サービス)
・男女を問わず、能力によって重要な役職には登用すべきと考える、ただ、長年の社内風土の結果として、女性社員の上昇志向が弱い(1001名以上/メーカー)
・性別に関係なく、能力重視の観点で言えば、男女関係なく、管理職に登用すれば良いが、家庭環境として女性の場合そうはならないケースが実態として多々ある。それらを勘案した場合、なかなか一般社員からの理解も得られにくい状況である(301〜1000名/メーカー)
・女性自身も含めて、育児は母親がやるもの、という固定観念が変わらない限り解決は難しいのではないか。父親や両親たちが協力して、皆で子供を育てるという意識がなければやはり女性は何となく罪悪感を持ちながら仕事と家庭の板挟みになるように思う。企業でできることは限られている(301〜1000名/情報・通信)
・確かに社会的にまだ、女性が活躍しにくいという面があることも事実だが、反面、女性側も男性ほど仕事を重視しない考え方を持っている方も多いのも事実。そのため、女性側の意識改革も併せて行っていくことが必要だと思う。少なくとも私の周りでは、会社に軸足を置かない考え方の人が多く、会社としての組織よりプライベート重視の比重が圧倒的に高く、逆に登用を望まない人が多い状況です(300名以下/情報・通信)
・現実問題として、男女の区別なく登用を考えたとしても、能力・意欲の水準で、管理職候補となる女性の絶対数が少ない(300名以下/金融)

●2021年4月までに、障がい者の法定雇用率は2.3%まで引き上げられる

ここからは「障がい者雇用・支援」についてレポートする。
障がい者雇用については、厚労省から「法定雇用率」が設定されていることをご存知だろうか。2018年4月1日から、民間企業の障がい者の法定雇用率が2.0%から2.2%へ引き上げになるとともに、対象となる企業の従業員規模が50人以上から45.5人以上へ引き下げられた。また、2021年4月1日までには、民間企業の障がい者の法定雇用率がさらに2.3%へ引き上げになる。
こうした法定義務に関する認知度を調査したところ、「2018年4月1日施行」の法定雇用率引き上げについては84%が、「2021年4月1日まで」の法定雇用率引き上げについては75%の企業が認知していた。
以下、日本の障がい者雇用の実状について迫りたい。
【図表9】2018年4月1日からの障害者法定雇用率引き上げに対する認知度
【図表10】2021年4月1日までの障害者法定雇用率引き上げに対する認知度

●7割の企業が障害者を雇用。300名以下の中小企業では45%にとどまる

障害者雇用の有無について質問したところ、全体の7割が「雇用している」と回答した。従業員数1001名以上の企業では94%、301名〜1000名の企業では100%と高い数値を示している。
一方で、従業員数300名以下の企業では、雇用率は45%にとどまった。
法定雇用率を達成できない場合の「罰則」として、常時雇用している労働者数が100人を超える企業に対しては、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて、1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付することが義務付けられている(従業員数100人以上200人以下の事業主については、不足する障がい者1人につき月額「50,000円」を「40,000円」に減額される特例あり)。
【図表11】障がい者を雇用しているか

●雇用の目的は「法定の障害者雇用率の達成」が9割

前項で「雇用している」と回答した企業に、その目的を質問したところ、「法定の障害者雇用率の達成」(87%)がトップを占めた。
続いて、「CSR(企業の社会的責任)」(46%)、「ダイバーシティ(多様性の受容)」(35%)と続く。その他、「ノーマライゼーション(障がい者との共生)」(22%)、「人員不足の解消」(12%)という積極的な回答も一定数存在した。
この結果から、回答数の9割を占める「法対応」が、障がい者雇用に対する企業の本音と言えるのだろう。
【図表12】障がい者雇用の目的

●非メーカーのほうが障がい者雇用に積極的

最後に、障がい者雇用についての考えを質問した。
結果は、「採用ニーズに合う能力のある人材がいれば障がいに関わらず雇用したい」(47%)がトップを占め、「法定雇用率にあわせて採用したい」(38%)を10ポイントほど上回った。
また業種別で見ると、「採用ニーズに合う能力のある人材がいれば障がいに関わらず雇用したい」と「法定雇用率を超えて積極的に雇用したい」という雇用に積極性が感じられる回答合計が、メーカー(43%)よりも非メーカー(62%)のほうが高いことも分かった。
従業員数の少ない中小企業にとって、「多様な働き方」や「ダイバーシティ受容」の実現は、遠い将来の話かもしれない。しかし、こうした取り組みが、近年の「採用ブランディング」に一役買っている、という事実も付記しておきたい。
【図表13】障がい者雇用についての考え

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「多様な働き方」実施状況に関する調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2019年3月5日〜3月12日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:企業の人事ご担当者様・働き方改革、女性活躍推進等ご担当者様
有効回答:166件

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