「評価者訓練」とは、人事評価を行う担当者ごとの評価の仕組みや基準に関する理解度、評価スキルのバラツキを低減させるために実施する教育訓練のことです。

評定者訓練、考課者訓練とも呼ばれます。信頼性、公平性が高く、従業員一人ひとりの成長とモチベーションの向上につながる人事評価を行うためには、評価要素の設定など、適切な制度を構築するだけではなく、担当者が誰であっても一定以上のレベルの評価スキルが担保されていなければなりません。

人事評価においては、人が人を評価する以上、評価エラーや誤差をゼロにすることは不可能でしょう。しかし、人がどのような評価エラーや誤差を起こしやすいのかを事前に理解していれば、そうした評価エラーや誤差を起こしてしまう可能性を小さくすることができます。評価者訓練を行う意味もそこにあります。

人事評価を行う際に陥りやすいエラーや誤差には、さまざまなものがあります。例えば、良い・悪いという印象が強いひとつの評価項目に影響され、ほかの項目についても同じように良い・悪いと評価してしまう「ハロー効果」、対象者に対する情報の不足や評価者の能力不足から高い評価、低い評価を避け、評価が中央値に集まってしまう「中心化傾向」、対象者の最近の仕事ぶりへの印象に引きずられて期間全体を評価してしまう「近似点効果エラー」、定められた評価基準ではなく、評価者自身との比較によって対象者を評価してしまう「対比誤差」などが代表的なものです。

一般的な評価者訓練では、このようなエラーや誤差について学んだり、自社の評価の仕組みについての理解度を深めたりするほか、評価のケーススタディや評価実習、グループ討議などが行われます。また、従業員の成長とモチベーションの向上を促すためには、評価を正しく行うだけではなく、その結果を本人に的確な方法でフィードバックすることが不可欠です。

評価者訓練においても、面談の場でどのようにして評価結果に対する本人の納得性を高め、さらなる成長のきっかけとなる気付きをもたらせばよいか、ロールプレイングを通じてスキルアップを図ることが重要になってきます。