株式会社テクノスジャパンは2021年1月27日、「受発注業務・経理業務・情報システム業務の実態調査」の結果を発表した。調査期間は2020年12月1日~2日で、企業の各担当者計618名から回答を得た。これにより、企業のDX化に対する意識変化や、担当業務を行う上でのデータ活用状況や課題が明らかとなった。
企業内部のDX化は進んでいるのか? 受発注業務・経理業務・情報システム業務の担当者に聞いた「データ活用の進展状況」

約7割が「自社のデジタル化の加速」に期待

政府による2021年9月のデジタル庁発足を受け、企業におけるデジタル化推進の意識に変化はあるのだろうか。はじめに、「自社のデジタル化は加速すると思うか」と尋ねると、約7割の67.2%が「思う」と回答。その理由に、「国策であれば企業や地方自治体も従う」や「国の政策は社会の流れになる」などの声があがった。また、「コロナ禍の影響でこれまで以上に進めざるを得ない」、「コロナ禍で在宅ワークが増えたため必要になった」など、新型コロナウイルス感染症の影響が大きいと捉えている人も多いようだ。
ビジネスパーソンの今後のデジタル化の進展予測

過半数の経理担当者は「出社を必要とする業務が多い」と回答

次に、「財務・経理業務担当者が感じる請求・会計業務の課題」を尋ねた。最も多かったのは「出社しないとできない業務が多い」で55.8%、次いで「月末に業務が立て込む」が50%、「伝票等のチェック作業で依然として目視作業が多い」が47.1%などとなった。コロナ禍でテレワークを推奨する企業が増えているものの、半数以上は「業務の為の出社」をせざるを得ないようだ。また、業務自体も人的作業による繁忙期等がある状況がうかがえる。
財務・経理業務担当者が感じる請求・会計業務の課題

約7割の企業で受発注業務に「EDI」を導入するも運用は部分的。約9割は紙運用が残存

次に、受発注業務担当者に「受発注業務におけるEDI(デジタルによる企業間データのやりとり)の活用状況」を尋ねた。「EDIの仕組みが導入されている」と回答したのは、受注業務で計68.6%、発注業務で計76.6%となった(「全て」、「半数以上」、「半数以下」の合計)。しかし、この中で「全データをEDIで完結できている」と回答しているのは、受注業務で5.2%、発注業務で10.2%にとどまる。この結果から、約9割の企業は、何らかの形で紙による受発注運用を続けている実態が明らかとなった。
受発注業務担当者に聞いたEDIの活用状況
また、「受発注業務にあたり、相手先企業と認識の齟齬が発生した経験」を尋ねると、「ある」は受注業務で15.5%、発注業務で13.1%となった。齟齬の内容は、「数量や納期認識のズレ」、「仕様や取引条件の未伝達」、「FAX操作ミスによる未伝達」などの回答があった。また、FAXを利用した受発注による認識齟齬にとどまらず、EDIでの受発注においても、取引条件などの伝達齟齬が発生している状況もあるようだ。
受発注業務における取引先との齟齬の発生経験

「請求書を紙で保管する」は約7割にのぼる

続いて、財務・経理業務担当者に「受領した請求書の保管方法」を尋ねると、67%が「紙で保管」していると回答。「PDF」または「専用システム」を利用して「データで保管する」とした回答を大きく上回っている。
企業の請求書の最終的な保管方法
また、「受注業務で使用したデータが請求書処理データに自動反映されたら、業務が効率化されるか」を尋ねると、70.4%が「効率化される」と回答。なお、「既に実現している」との回答は14.1%にとどまり、「受注から請求まで企業間データの一気通貫活用」ができている企業はまだ少数のようだ。
受注データを活用した請求書発行の効率化について

各部門から情報システム担当者に来る相談で最も多い依頼は?

次に、情報システム担当者に「社内の各部門から来る相談事項」について尋ねた。その結果、最も多いのは「いつでも見たい数字を取り出せる状況にしたい」が44.2%となった。以降は「購買から納品、受注から出荷・請求まで一気通貫したシステムにしたい」(36.4%)、「データ連携による決算業務の自動化をしたい」(35.4%)などと続いた。
情報システム担当者に各部門から来る相談事項
最後に、「情報システム業務における課題」について尋ねると、トップは「情報システム部門の人材不足」が51.5%と過半数を占めた。以下、「社内のシステム保守に時間とコストがかかり、新しいことに取り組めない」(47.1%)、「部門ごと保持しているデータが多く、管理が大変」(35.4%)、「ITコストを削減するように言われている」(33%)などと続いた。
情報システム担当者が考える情報システム業務の課題
社会全体のデジタル化意識は、コロナ禍でのITシステム整備も後押しとなり、一気に高まっている。しかし、実際の運用業務では未だデジタル活用が進まず、非効率なまま業務を行わざるを得ない状況があることも明らかとなった。今後DX化を実現するには、自社のペーパーレス化や業務フロー整備にとどまらず、企業間のサプライチェーンをデータで繋げるなど、情報連携の高速化が次の課題となるだろう。

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