先日、バスの手配を忘れた旅行会社の社員が、生徒を装った手紙で学校に旅行の中止を要求したことが発覚し、大きな問題となった。同社社長は記者会見で「社員が自らの責任を回避し、生徒を装って手紙を出すなど大変な迷惑と心配を掛けた」と謝罪をし、調査を進めて社員の厳重な処分をすると約束した。
ミスをした社員だけが悪いのか〜マイナス情報が顕在化する組織づくり〜

 このような報道を見聞きしたとき、ぜひ、皆さんに考えていただきたいことがある。それは、「社員がそのような行為に及んでしまった『根本的な原因』は何なのか?」という点である。なぜ、社員は生徒を装って旅行の中止要求をする前に、上司等に相談をしなかったのであろうか。

 社員がミスやトラブルを上司に報告せず、隠そうとする場合、社員が所属する組織の雰囲気や風土に『根本的な原因』があるケースが少なくない。企業の中には、ミスやトラブルなどの「マイナスの情報」を報告しづらい風土を持つ組織が、少なからずあるものである。もちろん、今回の問題を起こした企業がそのような風土であるという意味ではなく、また、偽の手紙を用意した社員の行為が正当化できるわけでもない。あくまで一般論である。

 それでは、なぜ「マイナスの情報」が部下から上司へ報告されづらい風土になってしまうのか。多くの場合、原因は報告を受ける上司の側にある。ミスをした社員が上司に報告をした際、上司がどのような対応を取るかにより、ミスに対する職場の雰囲気は大きく変わるものである。

 たとえば、
・ミスを報告すると、上司が烈火のごとく怒る。
・ミスの原因を探るのではなく、ミスを起こした責任ばかりを問う。
・部下がミスをしても、上司が責任を取らない。
・ミスの報告に耳を貸さず、部下を突き放す。
・上司の指示どおりに業務を遂行して発生したミスを、部下の責任にする。
・ミスした部下の個人批判を行い、人格否定と取れる発言をする。
このような上司が管理する組織で働く部下は、次第に当たり障りのない情報しか報告をしなくなる。万一、ミスやトラブルが発生した場合には、自分ひとりで解決しようとしてしまう。

 たとえば、部下のミスに対して、「何をやっているんだ!」と声を荒らげるような上司の行為がある。このような行為は部下がミスをしたことに対して、自分の心の中に芽生えた「怒りの感情」をぶつける行動といえる。つまり、指導ではなくストレス発散のためにとられる行動が、声を荒らげるという行為であるため、一般的に上司の対応としては適切とはいえない。声を荒らげる上司に対して部下は、「反感を持つ」「萎縮する」などの反応を示し、結果として、「マイナスの情報」は報告されなくなってしまう。

 ミスをした社員が自分で何とかしようとすると、事態を悪化させるケースが多い。トラブルを早期に収束させるためには、いかに「マイナスの情報」を迅速に吸い上げ、組織的に対応するかがポイントとなる。そのため、組織を預かる長にとっては、「マイナスの情報」が円滑に報告される組織風土を作ることが、重要な任務のひとつといえる。

 「マイナスの情報」が上がりやすい組織、企業風土を形成するには、各セクション、チームの長に対する教育、意識改革こそが重要となる。悪い情報の報告に対して、「感情的にならず、冷静に部下の報告を受ける」「適切な善後策を講じ、自らトラブル対応の前面に立つ」「ミスをした部下の人格を否定しない」「責任追及に終始せずにミスが発生した原因を探り、再発しない仕組みを作る」「マイナスの情報が迅速に報告された事実を評価する」など、組織の長として身に付けなければならないスキルは数多い。

 ミスをした社員を問い詰め、処分しただけでは、職場の風土は変わらない。管理・監督職クラスの教育は、人事部門の大きな課題である。


コンサルティングハウス プライオ 代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

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