2016年4月1日に「女性活躍推進法」が施行され、3年が経過した。その3年間の取り組みが検証され、2019年5月29日には改正法も成立。現在、従業員数301人以上の大企業では以下の策定・届け出が義務化されている。
(1)自社の女性の活躍に関する状況の把握と課題の分析をすること
(2)状況把握と課題分析を踏まえて行動計画を策定し、社内外に周知・公表すること
(3)行動計画を策定したことを、都道府県労働局に届け出ること
(4)自社の女性の活躍に関する情報を社外へ公表すること
また、今後3年以内に従業員数101人以上の企業でも同法律が適用され、対応が義務づけられることになった(2022年4月1日施行予定)。なぜ、女性活躍推進法では、行動計画の策定が必要となるのだろうか。
「女性活躍推進法に基づく行動計画策定・届け出」が必要な理由

「女性活躍推進法」が取り組む現状

厚生労働省が公表したデータでは、2019年9月30日時点で、「女性活躍推進法」の取り組みが義務とされている従業員数301人以上の企業の98.6%が行動計画の策定、届け出を実施している。しかし、現状では「努力義務」とされている301人未満の中小企業においては、全国でわずか6,308社しか届け出がなされていない。

また、女性活躍推進法に基づいた一定基準を満たした優良企業に認定される「えるぼし」を取得している企業は、大企業と中小企業を合わせても全国で920社しかない。さらに、公表された行動計画をよく見てみると、実は必須項目すら整っていないものが散見される。必須項目というのは、(1)計画の期間、(2)数値目標、(3)取組内容、(4)取組の実施時期のことである。実際内容を見ても、残念ながら「義務で仕方なく作成した」、「提出するだけはした」といった姿勢が透けて見えるものが少なくない。

「女性活躍推進法」に行動計画策定が必要な理由

2019年5月29日の法改正により、従業員数101人以上の中小企業でも今後3年以内に「女性活躍推進法」の行動計画策定・届け出が義務となる。では、なぜこの取り組みを拡大する必要があるのだろうか。

女性活躍推進法は、人手不足の現状や、これから拡大していくだろうダイバーシティ経営などを見据えて、今後企業が生き残っていくための経営戦略として位置づけられている。しかし法整備が進む一方で、疲弊する女性が増えてきているとの指摘もある。障害年金を専門とする社労士からは、30~40代女性の障害年金申請が増えてきているのではないかと指摘する声もある。家事も育児も仕事も……と全部を頑張りすぎて、心身に重大な支障をきたしているケースが生じているようだ。

女性活躍推進法で一番重要となるのは、企業の課題や問題点を的確に把握することにある。行動計画策定には、必ず把握しなければならない基礎4項目と呼ばれるものがある。

(1)採用した労働者に占める女性労働者の割合
(2)男女の平均継続勤務年数の差異
(3)労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
(4)管理職に占める女性労働者の割合

これらを数値化することによって、自社の課題を的確に把握、分析することを第一歩としている。

そして、把握した課題をクリアするために、「何を」、「いつまでに」、「どのように」進めるのかを明文化する。その計画に沿って実際に取り組むための決意表明のようなものが、女性活躍推進法における「一般事業主行動計画」なのである。掛け声だけで終わらせるのではなく、実際に「動く」ための行動計画を策定しなければならない。

真の女性活躍社会を目指すために企業に求められることとは

ひとことで女性活躍といっても課題は企業や事業所ごとに千差万別で、そもそも女性社員が採用すらされていない企業がある一方、女性が十分に活躍し、さらなる高みを目指している企業もあり、レベルの差が大きく広がっているのが現状だ。女性が活躍できる企業に成長するためには、それぞれの企業で障害になっているものはなんなのかを明確にし、それを取り除かなければならない。この一歩一歩の粘り強い取り組みが、女性を真に活躍させるためには必要なのである。
  
「行動計画策定」は、女性活躍を推進するために欠かせないものというだけでなく、実は女性の身を守るといってもいいほど重要な役割を果たすものとなっている。義務だから仕方なくではなく、ぜひその必要性を今一度考え、真摯に取り組んでほしいものだ。



ワークパートナーゆう社労士事務所
代表 國府田千秋

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