平成26年4に厚生年金保険法が改正されたことにより、代行割れしている赤字の厚生年金基金は、5年以内に解散を求められることになりました。また、平成31年4月以降は、ハードルの高い基金存続基準が設けられるため、多くの厚生年金基金は解散することが予想されます。

 本連載では、厚生年金基金制度の概要・法改正・厚生年金基金に加入している企業の対策などについて、紹介していきます。

厚生年金基金とは?

  厚生年金基金とは、厚生年金保険法を根拠にし、厚生年金に加入している人の老後の生活の安定と福祉の向上を図るために、企業独自の退職金制度を上乗せすることによって、手厚い退職給付を行うことを目的としています。厚生年金基金は、厚生年金保険料の一部と企業独自の掛金の2つの資金を合わせて大きな原資で株式等の運用をすることができるため、運用が上手くいけば、より多くの運用益を得られる仕組みになっています。実際にバブル崩壊前などは、8~9%の運用利回りが安定して確保されている状態で、運用益については、保養所などの建設に使われたりもしていました。

 厚生年金基金に加入するかどうかは、各企業の自由でありますが、加入することによって、厚生年金保険の被保険者である従業員は自動的に厚生年金基金の加入員となります。
第1回 厚生年金基金の現状とリスク

厚生年金基金の現状

  基金数の推移としては、近年の経済・運用環境の低迷などから、解散する基金が増加したほか、代行返上が相次ぎ、平成15年度末に1357基金だったものが、平成25年度末には531基金と大幅に減少しています。
 
 また、厚生年金基金の財政状況としては、リーマンショックの起きた平成20年頃から、いわゆる代行割れと呼ばれる、国から代行している厚生年金保険料の部分(最低責任準備金)が不足している基金が目立ち、特に財政の悪い基金は、厚生労働大臣の指定により、「指定基金」とされています。平成24年後半以降は、株価の上昇により、運用環境が改善され、代行割れの状況は、若干回復傾向にあります。しかし、今までの加入期間に応じた給付が十分に積み立てられているかどうかという観点で財政状況を見ると、約8割の厚生年金基金で積み立て不足の状況にあります。つまり、代行割れしていない厚生年金基金でも、多くの厚生年金基金が給付に必要な上乗せ部分の積み立てが出来ていない状況であり、運用が上手くいっている厚生年金基金は全体の中でも少ないことが分かります。

厚生年金基金のリスク

  厚生年金基金は、国から厚生年金保険料の一部を代行して運用しているため、基金に加入している企業は責任を持つことになります。厚生年金基金に加入していることで生じる主なリスクの一つとしては、厚生年金基金の財政悪化に伴う掛金の増加があります。実際に、掛金が数倍以上増加した厚生年金基金もあるほどです。

 もう一つは、代行割れしている赤字基金が解散をする場合は、不足部分を各加入企業で負担金として納付しなければなりません。また、その負担金を分割納付している企業が、負担金を支払えずに倒産した場合は、解散時に厚生年金基金に加入していた全企業が肩代わりして支払わなければならない連帯債務制度があります。実際に、解散した厚生年金基金に加入していた企業が負担金を支払えずに14社連鎖倒産した例もあり、非常にリスクが高いことが分かるでしょう。
次回の連載では、昨年法改正のあった厚生年金保険法の改正点についてお話しします。
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