■主旨と内容

 最近,労働時間の適正管理についての研修やタイムマネジメント研修,ワークライフバランスの研修のご依頼が増えてきました。労働行政の方向性と現場の労働事情がかみ合わず,企業や自治体が戸惑いを感じているようです。効率化促進のために人員削減が進む一方,業務は減らない,そんな状況で今まで以上の成果が期待されるジレンマの解消は非常に困難な課題です。
しかし,論理的に分析すれば,従来の業務には多くのムダやロスが存在することに気づきます。こんなときこそ業務改善のチャンスととらえて取り組んでみると改善案が見えてくるものです。
 研修で現場のメンバーに「時間泥棒」というテーマでディスカッションをしていただくと決まって“会議の問題”が挙がってきます。具体的には「会議が多い」「会議が長い」「結論がない」という声をよく耳にします。会議が浪費するのは貴重な時間であり,人件費に換算するとそのコストは膨大です。会議に出ている間はほかの仕事がストップしています。出席者の人数が増えたり,所要時間が延びると当然コストは増します。
 そもそも会議をしないで済むならばそれに越したことはないですが,やはり業務を進めていくためには重要な会議は不可欠です。開くからには効率的で質の高い会議でありたいと考えます。そのためにはある程度のルールや制約を加えて会議を運用することが必要です。今回はタイムマネジメントを推進する上で参考になる会議運営規定の定め方をご紹介します。

■検討内容

・目的と会議の定義
まずはこの会議運営規定を制定する目的を記載し,同時に会議の定義を示します。会議とは何を指すのか,規模や内容を明確にして規定化します。

・会議の原則
会議の開催者と会議の参加者の守るべき原則を定めます。
会議の開催者は開催する会議の目的や主旨を明確にします。本当に会議を開催しなければならないかどうかを吟味します。メールやミーティングで済ませられないかを検討します。それでも必要ならその会議の目的と議題を明確にするよう規定に謳います。
次は会議の構成員についての検討です。必要最小限の構成が原則です。人件費コストを考慮し,意見が出る規模を事前に検討し,効率が最大化するように規定で注意を促します。
第3 は会議をスムーズに進めるためにアジェンダ(会議開催通知書)を作成します。参加者が会議の目的,内容,スケジュール,事前検討事項など会議の全体像を想定する資料になります。またアジェンダと同時に事前資料などの配布を義務づけます。この事前準備が欠けると出席メンバーは会議中に資料を読む時間を取られ,会議本来の検討や決定を行う時間を大幅にロスすることになります。
また,会議の参加者が守るべきルールも明記します。主催者がいくら用意周到に,ぬかりのない準備をして会議に臨んでも,他の参加者がルールを守らないと効果的な会議は実現しません。
事前資料をしっかり熟読して出席することや,遅刻をしないことを明記します。参加者全員に発表を求めるなら,その旨をルール化します。その場合は簡潔明瞭,手短に発言することも規定化します。特定の人が長時間の発言をすることがないように“ 1 人3 分以内”などと目安を決めることも有効でしょう。全体最適発言のルールなどがあるとさらに良いです。

・会議の時間と場所
会議の開催においてはタイミングや時間および場所の設定が重要です。会議は徹底して実施したいという考え方もありますが,人間の集中力には限界があります。概ね1 時間半もすれば集中力が途切れてきます。最長でも会議は2 時間を限度とすると定めるとよいかと思います。ある組織は「会議室の予約は2 時間以上不可」と決めています。それ以上の時間が必要とあれば,理由を添えて申請するよう定める方法もあります。

・会議の出席者と役割
会議出席者は必要最小限の人を厳選します。会議のメンバー数として組織ごとに定義し,最少人数と最多人数を定めます。会議の形態にもよりますが,検討会議や開発会議は大人数では収拾がつかないことが多く,最大でも15人まででしょう。責任感を考慮して,1部署から1 人参加とすることもお勧めです。

・会議の進行
会議の開催者が会議の進行で留意すべき点を規定化します。また会議中の役割なども明確にします。ファシリテーター,タイムキーパー,書記等会議の進行に重要な役割分担も明記します。
会議を開くからには会議の結論を確実に導き出し,結果を全員で共有できるよう確認し,実行プランの共有化までを規定します。

・結果報告
会議参加者は会議の結果を速やかに上司に報告します。

・議事録
会議の書記係は極力当日中に議事録を完成させて,会議後2 日以内には開催者を通じて参加者に送信したいものです。

以上の取り決めを会議室に一覧表で貼り出しておきましょう。

会議運営規定

第1 条(目的)
この規定は組織の活性化および効率的経営を推進するためのムダのない効果的な会議の運営方法を定めるものである。

第2 条(定義)
この規定において「会議」とは5 人以上の者が同時に一定の場所に集まり,協議等をするものをいう。連絡,調整,運営,問題解決,決定,開発等を指すが,緊急会議や内部ミーティングは例外事項と扱う場合がある。

第3 条(会議の原則)
会議開催者は会議の運営にあたり以下の原則を守るものとする。
①目的と主旨を明確にし,議題を決定し,当日の会議の目標を立てる。
②会議の構成メンバーを厳選し,最少人数とする。
③開始時間,終了時間を厳守する。
④資料は明瞭簡潔にし,検討のために事前配布を行う。
⑤必ず会議の結論を出す。
2 会議出席者は以下の原則を守るものとする。
①事前に資料を読み十分内容を把握し,目的に沿って検討する。
②集合時間を守り,必ず発言をし,発言は簡潔に行う( 3 分ルール)。
③遅刻欠席の場合は事前連絡を行い,委任状を提出し,検討内容を開催者に連絡する。
④議事進行がスムーズに進むように協力する。
⑤会議中の電話や来客の取り次ぎは緊急時以外は禁止する。

第4 条(会議の計画)
会議を開催する前に,あらかじめ他の方法など検討のうえ会議の必要性がある場合のみ会議の内容を吟味して会議目的やテーマの企画を進める。

第5 条(会議の時間)
会議の時間は原則として2 時間以内とし,各会議にはタイムキーパーを任命する。ただし,経営に直接関係する緊急会議等は除く。

第6 条(会議の出席者)
会議の出席者は,コスト意識をもって厳選して最小限度の招集とし,効果の観点でも概ね10名以内を目安とし,最大でも15名とする。同一部署からの複数参加は原則不可とする。
第7 条(会議開催通知)
会議の開催通知には必要事項を記載して参加者に開催日の5日以上前には送信および送付することとする。

第8 条(資料の事前準備)
会議で使用する資料は簡潔にまとめて,できる限り少ない分量とし,会議開催通知と同時に事前配布する。

第9 条(資料内容の検討)
参加者は必ず資料に目を通し,検討事項が必要な場合は事前に意見をまとめ発表の準備をして参加する。

第10条(会議の準備物)
会議開催にあたってホワイトボード等の会議運営上のツールを事前に整備する。

第11条(会議の進行)
会議の進行は予め計画して,目的や目標に沿って効果的に進めることとする。進行役は事前にファシリテーション技術を磨き,会議を進行することとする。

第12条(結果の確認)
会議の開催者は,会議の結論を会議終了前に出席者全員で確認し,その後の役割分担等を明確化しておく。

第13条(議事録)
会議の開催者は会議の3 日以内には議事録を参加者に配布し,会議参加者は速やかに上司に報告する。

※会議開催通知書の内容チェック
□会議の目的とテーマ □会議開催日時(開始・終了時刻明示)と場所 □参加予定者 □進行スケジュール □資料の添付 □事前検討事項の連絡 □主催者の連絡先 □出席確認の方法等
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