■主旨と内容

東日本大震災以降,原子力発電所の稼働停止などの影響もあり,日本国中で電力供給が間に合わないというリスクを抱えることになりました。関西電力では原発の再稼働をいったん決定したものの,安定稼働には時間を要し,まだ多くのリスクがあります。今後,原発への依存度を低減していく前提に立てば,企業のさらなる節電対策は欠かせません。
 経済産業省や各経済団体も夏季における節電に向けて指針を公開しています。大企業はもちろん,小口需要家(契約電力500kw/h未満)という分類に属する中小企業も,削減義務はないもののピーク時の電力使用量15%の削減目標を果たす計画を策定,実践することが求められています。
計画を組むためには,電力不足が大きくなる時間帯を知っておく必要があります。『電気事業法第27条による電気の使用制限の発動について』(平成23年5 月13日電力需給緊急対策本部決定)では,使用制限のかかかる時間帯は9 時から20時となっています。そのうち13時から16時までの使用の削減が特に重要です。
 企業が節電のために行う手法としては大きく,①労働時間・労働日のシフトや削減,②執務時間中の人為的な節電,の2 つのアプローチがあります。
 南欧のシエスタのように労働形態を変えてしまえば節電は実現しそうですが,職住が離れた日本では課題が多いでしょう。あまりに極端な手段を取って企業活動が非効率になっては意味がありません。
 効果的な実施には,社員全員の節電意識が肝要です。実行するのは社員自身ですから,社員全員が節電の主旨や効果を認識しない限り実現できません。規定やマニュアルを作成し,それに沿って社内で勉強会を実施し,社員が主体となって自発的な提案が出るように進めるとより効果的です。社内の勉強会を通じて,「設備や機材の利用にムダがないか」「作業手順を見直すことができないか」「ほかに良い方法がないか」等,自主的に取り組む節電実施運動にすることが望ましいです。
 いずれにしてもこの機会に働き方に革命を起こし,短時間で大きな成果を出す習慣と仕組みを創造し,ワーク・ライフバランスの実現にも活かしたいものです。

■検討内容

□目的
 節電規定を定める主旨を明記します。ただし,売上げの大幅な減少やサービス低下にはつながらないよう,組織的,計画的に進めるよう配慮します。

□目標値
 節電の対象期間やその目標値を定めます。これがないと計画自体が曖昧になり成果に結びつきません。また,目標値に近づくために社員には節電状況のデータを開示する必要があります。

□節電の前提
 節電のための節電にならないように定義して規定に明記します。

□節電の手法
 大きく2つの手法があります。
 1つは労働時間の変更や労働日と休日の変更,長期休暇の設定,労働時間の短縮など,就業規則の定めを絶対条件とするアプローチです。労働時間や休日に関する事項なので,実施にあたっては労使の話し合いを経て就業規則に定めて,従業員代表の意見を聞き,意見書とともに就業規則変更届と変更後の就業規則を労基署に提出しなければなりません。内容によって労使協定の要・不要に留意する必要があります。

【労使協定の届出が必要】
・時間外労働・休日労働に関する協定
・1 年単位, 1 週間単位の変形労働時間制に関する協定
・1 ヵ月単位の変形労働時間に関する協定(条件による)
【労使協定の届出が不要】
・フレックスタイム制に関する協定
・事業場外労働に関する協定(8時間を超える場合は届出必要)
・計画的年次有給休暇付与に関する協定

 もう1 つの手法はクールビズや冷房・暖房などの温度設定,室内照明やパソコン等周辺機器を制御するアプローチです。「室温28度」など従来の基準を見直すことも必要な場合があります。例えば,佐賀県武雄市のウルトラクールビズでは,ノー上着,ノーネクタイ,ポロシャツ,Tシャツに加え,平成23年には短パン,スニーカー,サンダル(かかと付きに限る)とまで定義しています。必ずしも就業規則に定める必要はありませんが,社員に確実に周知させ,実行させるには規定に明記し,遵守事項であることを認識させると効果的です。具体的な手法には以下のようなことが考えられます。
①クールビズ・ウォームビズ
②夏季室温28度設定遵守
③室内照明の抑制とLED使用
④休憩時間の消灯
⑤エレベーター使用抑制
⑥パソコン不使用時の電源オフ,等

□社員の義務
 この規定に明記した内容は行動基準であり義務であることを明記します。

□節電推進委員会の設置
 節電推進委員会を設置し,常に節電のアイデアを出すとともに,節電計画の進捗を検証することが効果的です。同時に各部署に節電推進委員を置くことによって,現場の状況把握やよりリアルな問題への対応が可能になります。
 最後に節電を推進するあまりに職場環境を悪化させることがないようにバランス感覚を持った運用を心掛けます。社員の熱中症その他の病気や暗所での作業による事故や視力の低下を招かないように,最低限の配慮を怠ってはなりません。

省エネ・節電推進規定

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