多様な働き方が広がる中、柔軟に休暇を取れるよう、「時間単位年休」を導入する企業も増えています。「1日単位や半日単位に比べて年休管理が煩雑になる」といった理由で時間単位年休の導入をためらうのは、人材定着や働きやすい職場づくりの観点から有意義ではありません。今回は、時間単位年休を導入する際の基本事項と、管理する際の実務上の留意点を見ていきましょう。
「時間単位年休」を導入・管理する際に注意すべきことは? 実務上の留意点を解説

時間単位年休を導入する企業が増えてきている

年次有給休暇の時間単位取得制度の導入率について、政府の「就労条件総合調査」によると、2015年は16.2%、2020年は22.1%であり、年々増加傾向にあります。また、育児介護休業法の改正で、2021年1月から「子の看護休暇」および「介護休暇」については時間単位での取得が可能となりました。これにより、年次有給休暇についても時間単位での取得を検討する企業が増えてきたように感じます。

ここからは、年次有給休暇の時間単位年休を導入する際の留意点をお伝えします。

時間単位年休導入の際の留意点

年次有給休暇の付与は原則1日単位ですが、「就業規則への記載」と「労使協定の締結」により、年5日の範囲内で時間単位での取得が可能となります。ちなみに、半日単位での年休取得については法律の規定はなく、就業規則に半日単位での取得のルールを定めることで足り、労使協定の締結は不要です。

就業規則への記載

年次有給休暇を含む「休暇」については、就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法89条)のため、時間単位での年休取得制度を導入する場合には、就業規則への記載が必要です。記載内容については、厚生労働省のモデル就業規則等を参考にするとよいでしょう。


労使協定の締結

労使協定で定めるべき事項は次のとおりです。なお、労使協定書を労働基準監督署へ届け出る必要はありません。

(1)時間単位年休の対象労働者の範囲
事業の正常な運営との調整を図るために、対象者を絞ることは可能です。例えば、フレックスタイム制の者を対象外とするような場合です。ただし、年休取得の目的は労働者の自由であることから、「育児を行う労働者」というような対象者の決め方は認められません。

(2)時間単位年休の日数
法律で、年5日以内と決められています。これは、年休の趣旨が「まとまった日数の休暇を取得すること」にあるためです。所定労働時間が8時間の場合、「40時間」の時間単位年休の付与ということになります。

(3)時間単位年休1日の時間数
1日分の年次有給休暇が「何時間分の時間単位年休」に相当するかを定めます。例えば、「年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1日の年次有給休暇に相当する時間数を8時間とする。」と定めます。

この時、1日1時間に満たない端数がある場合は、時間単位に切り上げなければなりません。例えば、所定労働時間が1日7.5時間の場合、「8時間」となります。

(4)1時間以外の時間を単位とする場合の時間数
例えば、「時間単位年休は、2時間単位で取得すること」と定めます。この取得単位は整数で定めなければならないため、「1.5時間」といった定め方はできません。

時間単位年休の管理における注意点

所定労働時間が8時間の会社で、時間単位年休を5日分としたとします。この場合において、付与日数が10日の労働者が時間単位年休で3時間取得したら、残りの年休は「9日と5時間」とカウントします。この場合において、企業によっては「5日と37時間」とカウントしている例を見かけますが、これは間違いです。なぜなら、1日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者の意思によるためです。会社として「40時間は必ず時間単位で取るように」と強制することはできません。

つまり、そもそも5日分が40時間としてカウントされるものではなく、「労働者の希望により40時間までは時間単位で取得が可能」という制度なのです。時間単位年休を管理する際にはこの点に注意しましょう。

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