これまで、雇用保険の財政が安定していたことから、雇用保険料率は低く抑えられていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、財政は急激に悪化しました。その結果、2022年(令和4年)4月からの引き上げは見送られたものの、2022年10月以降に引き上げとなりました。労働保険の申告は「毎年4月1日から翌年3月31日」までの1年間(これを「保険年度」といいます)で行いますので、年度途中での引き上げとなります。そのため、今年の「労働保険の年度更新」は例年と異なりますので注意が必要です。下記に詳しく解説していきましょう。
2022年度の「雇用保険料率」が引き上げに。労働保険の“年度更新”で注意すべき点とは

2022年度の「雇用保険料率」が決定

「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が、2022年3月30日に国会で成立しました。労働保険の申告は「保険年度」で行いますので、法律案が国会で成立するまで、企業も役所も落ち着かない状況になります。なぜなら、給与計算や賞与計算は、雇用保険料率により影響を受けるからです。

2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日)の雇用保険料率のポイント
●2022年4月から、事業主負担の保険料率が変更になります。
●2022年10月から、労働者負担・事業主負担の保険料率が変更になります。
●保険年度の途中から保険料率が変更となりますので、ご注意ください。


雇用保険の財政は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて急激に悪化しましたが、コロナ禍での雇用保険料率の引き上げに対する労働者と使用者の負担感を考慮し、2022年度については段階的に引き上げられることになりました。

具体的には下表のとおり、「上期(2022年4月1日~9月30日)」と「下期(2022年10月1日~2023年3月31日)」に分けて変更されます。「上期」の雇用保険料率は、2021年度と比較して、会社負担が0.5/1,000 引き上げられるのみとなります。そのため、給与や賞与から控除する「従業員負担の雇用保険料率」を変更する必要はありません。


厚生労働省:令和4年度の雇用保険料率

「雇用保険料率」引き上げに伴う、2021年度の“年度更新”の注意点

「2021年度の確定保険料」と「2022年度の概算保険料(※1)」を申告・納付する2022年度の“年度更新(※2)”では、2022年度の概算保険料(雇用保険分)について、「上期の概算保険料額」と「下期の概算保険料額」を賃金集計表で計算し、その合計額を「2022年度の概算保険料」として納付することになっています。

例年であれば、前年度の賃金額の合計を集計することで、確定保険料と概算保険料を算出できますが、2022年度の年度更新は複雑になります。「年度更新申告書」に同封される厚生労働省のパンフレットを確認し、集計に誤りのないよう注意して進めましょう。

業務システムを活用している場合はシステムが対応しているはずですが、活用していない場合は、ぜひ厚生労働省の「労働保険関係各種様式」から、「年度更新申告書計算支援ツール」をダウンロードしてご活用ください。年度更新にあたって「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」に毎月の対象者数と賃金合計等を入力すると、申告書記入イメージが表示されますので、それを参考に申告書に転記してください。

※1)概算保険料:本来の納付の前に支払う保険料。「保険年度」中に支払われる“賃金総額の見込額”に保険料率を乗じて算定する
※2)年度更新:前年度に収めた労働保険の保険料を「確定保険料」として申告し、新年度の「概算保険料」の申告・納付し、精算するもの

“年度更新”に便利な電子申請と電子納付、口座振替を利用しよう

さらに、年度更新の際は「電子申請」と「電子納付」が便利です。年度更新申告書計算支援ツールを使って「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」が完成したら、電子申請をしてみてはいかがでしょうか。必要な情報を入力するだけで、申告書に印刷されている保険料率等が表示され、年度更新の計算等が自動的に行われますので、計算ミスがなくなります。電子申請と電子納付により、オフィスなどからいつでも提出と納付が可能になります。
厚生労働省:保険料の電子申請・電子納付について
また、「口座振替による納付」も便利です。保険料納付の手間がなくなり、納付忘れがなくなりますので、延滞金を課される心配がありません。手数料はかかりませんし、保険料の引き落としに最大約2ヵ月のゆとりができますのでおすすめです。
厚生労働省:保険料の口座振替について
2022年度の雇用保険料率の決定により、年度更新が少し複雑になりましたが、この機会に電子申請または口座振替等をご活用いただければと思います。なお、2022年度の労働保険の年度更新期間は「6月1日(水)~7月11日(月)」となります。ぜひ早めに準備を行いましょう。

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