「ポテンシャル」とは潜在能力や将来の可能性を意味し、ビジネスシーンにおいてもよく使われるキーワードだ。採用や人材育成などの人事の現場では、「ポテンシャルの高い人材を採ろう」、「従業員のポテンシャルを高めたい」という課題を抱える方もいるかもしれない。ただし問題は、潜在能力や将来の可能性と言われても漠然としすぎていることだろう。何を採用基準にすれば良いのか、人材育成に向けて可能性をどう伸ばしていけば良いか。今回は、「ポテンシャル」の定義にはじまり、「ポテンシャル」が高い人の特徴、「ポテンシャル採用」のあり方、「ポテンシャル」の高め方や人材育成で活用できる「ポテンシャル」の引き出し方を一気に解説していきたい。
「ポテンシャル」の意味や高い人の特徴とは? 採用や人材育成に役立つ見極め方も解説

「ポテンシャル」とは何か

「ポテンシャル(Potential)」とは、ビジネスシーンにおいて「潜在能力」や「将来の可能性」、「成長性」、「将来性」などを意味する。今はまだ表に出てきていないが、将来的には発揮されるであろう能力と言って良い。総じて、「ポテンシャル」が高い人は、会社からの期待も大きいと言える。

ちなみに、潜在能力の対義語は顕在能力である。こちらは、現在はっきりと現れている能力、自分が意識して使える能力を指す。本人も自覚しており、周囲からも認識されている能力だ。

●「ポテンシャル」の類義語や言い換え

「ポテンシャル」と似ていて、場面によって言い換えが可能な言葉がいくつかある。主に「可能性」、「素質」、「将来性」、「伸びしろ」だ。それぞれのニュアンスの違いを説明していく。

・可能性
「可能性」は、実現できる見込みや潜在的な発展性を意味する言葉である。発展性が期待できる、事実になりそうな見通しがあるなどのニュアンスを含む。潜在的発展性の意味合いで使われる場合は、「ポテンシャル」と同義であると考えて良い。

・素質
「素質」とは、先天的に備わっている、将来発揮されうる性質・能力のことを言う。現状では発揮されていなくても、将来的に開花する可能性があるというニュアンスの言葉であり、「ポテンシャル」と同様の意味を持つ。

・将来性
「将来性」とは、将来発展する見込みを意味する。これも、「ポテンシャル」とほぼ同義の言葉だと言える。

・伸びしろ
「伸びしろ」は、能力的に成長する余地を意味する言葉だ。「ポテンシャル」には「発展性」という意味もあるので、かなり近しい言葉であると言えるだろう。

●「モチベーション」との違い

一般的には、「ポテンシャル」は潜在能力を意味し、モチベーションはやる気や意欲を指す。動機付けというニュアンスでは同様であるが、モチベーションには気持ちの部分が多大に含まれている。

ビジネスでの「ポテンシャル」の使い方と例文

前述したとおり「ポテンシャル」は潜在能力や将来の可能性を指すため、ビジネスシーンにおいては、その人への期待を込めて使われることが多い。

(例)
・Aさんは入社したばかりだが、すでにポテンシャルをうかがわせている。
・Bさんの高いポテンシャルを見込んで、新しい担当に推薦する。

●マーケティングにおける「ポテンシャル」の使い方と例文

マーケティングの場面でも「ポテンシャル」という言葉は使われる。ただし、人の能力に対してではなく市場規模を指すケースが多い。「市場のポテンシャル」と言ったら、将来的にその市場にどのくらいの需要が見込めるかを意味する。

(例)
・あの市場はポテンシャルが大きい
・市場ポテンシャルを見極めて営業体制を見直そう

「ポテンシャル」が高い人の特徴

次に、「ポテンシャル」が高い人にはどのような特徴があるのかを見ていこう。

●素直

「ポテンシャル」が高い人は、総体的に素直である。周りの意見や注意にも素直に耳を傾けることができる。もし、自分にとって不都合なことを指摘されてもその場しのぎの言動はしない。自分に過ちがあれば素直に認め、言動を改める努力をする。こうした姿勢がないと、成長スピードも遅くなってしまいがちだ。

●失敗を恐れない

失敗を恐れずに行動できることも「ポテンシャル」の高い人の特徴だ。何事にも積極的にトライしていける。失敗を恐れ新しい挑戦をしないようでは成長はできない。もし、失敗してしまってもその経験から多くを学び、次への糧とする姿勢が大切だ。失敗した出来事を反省して、次に活かせる、これは、「ポテンシャル」の高さを知る一つの判断基準となるだろう。

●自己分析が得意

「ポテンシャル」が高い人は、自らを客観的に捉え、目指す姿とのギャップを修正する自己分析も得意だ。自分の長所・短所をしっかりと理解している。そのため、長所を活かせる仕事に出会う確率も高い。また、組織やプロジェクトにおける自分の役割を正確に把握できるので、自ずと周囲の期待に応える行動をしていける。

●好奇心旺盛

「ポテンシャル」が高い人は、好奇心も旺盛である。日頃からさまざまなところにアンテナを張っており、最新情報をいち早くキャッチしながら行動している。自分の業務に直結しないことにも興味を向けるため、知識・教養もどんどん広がっていく傾向にあると言って良い。

●行動力がある

行動力があるのも、「ポテンシャル」が高い人の特徴だ。物事に真摯に取り組み、とにかく動き出してみると言う力を持っている。重要なのは目標に向かって行動する力である。自らの目標や夢を語っているだけでは、スキルアップに繋がらない。積極的に行動していくことで成長の可能性が広がっていく。

●ポジティブ

ポジティブであるのも、「ポテンシャル」の高い人の特徴として見逃せない。ビジネスシーンにおいてポジティブとは、仕事に対して前向きな捉え方ができることや、反省を活かして次のステップに進んでいけることを意味する。そうした姿勢で臨めば、どんな業務であっても最終的に上手くいくよう、進め方をあれこれ考えることができる。失敗、分析、意識の変化、実践。このサイクルを繰り返していけば、成長し続けていけると言って良いだろう。

●責任感

自分の仕事に責任をもって最後までやり切れる人は、「ポテンシャル」が高いと言って良い。責任感は仕事への意識の高さにもつながってくるだけに、決して中途半端にしたり、途中で投げ出したりするようなことはしない。課題が生じても自ら解決策を考えて実行していける。逆に責任感が弱い人は、業務の品質向上にも気を配らないばかりか、自分の仕事を最後まで遂行しないだろう。

●成長意欲がある

成長意欲をずっと維持し続けられる人も、「ポテンシャル」が高いと言える。もっともっと高みにと、貪欲に成長を追い求めていく姿勢は、一緒に働く周囲の仲間にも好影響があるはずだ。

「ポテンシャル採用」とは

ここでは、「ポテンシャル」に着目した「ポテンシャル採用」の定義や、面接での見極めポイントを取り上げてみたい。

●「ポテンシャル採用」の定義

「ポテンシャル採用」とは、これまでに培ってきた実績や経験ではなく、応募者本人が持ち合わせる人間性や将来性、潜在能力に重きを置いた採用を指す。応募者の「過去」ではなく、未来に着目する「採用」とも表現できる。

「ポテンシャル採用」は、基本的に若手人材(20代~30代前半)の採用を意図したケースで行われることが多い。メリットとしては、幅広い層の応募が見込めることや従業員の多様化、若返りを図れることだ。また、従来とは異なる人材を迎え入れることで、会社にイノベーションを起こすきっかけにもなり得る。

●「ポテンシャル採用」における面接の見極めポイント

実際のところ、採用担当者はどのような視点で応募者の「ポテンシャル」を見極めれば良いのだろうか。そのポイントを解説してみたい。

・キャリアプラン
まずは、応募者のキャリアプランを見極めたい。具体的には、キャリア目標や将来設計、成長意欲などを持ち合わせているかどうかである。それらが明確であれば、仕事に対して積極的に取り組んでくれると期待できる。面接でも「人生の目標や将来の夢」、「ビジョンの実現に向けた働き方」などを質問するのが効果的だ。

・社会人としての基本的なスキル
言葉遣いやマナー、コミュニケーション能力など、社会人としての基本的なスキルを持ち合わせているかも見極めのポイントとなる。もちろん、現時点ですべてが完璧である必要はない。今後、身に付けていく意欲があるかどうかも考慮したい。

・何気ないコミュニケーション
面接では、応募者もかなり身構えているはずだ。限られた時間内で本質、本音を引き出すのは、相当なテクニックを要する。むしろ、面接に入る前の何気ないやりとりや雑談、面接の日程調整など、面接以外のコミュニケーションから応募者の「ポテンシャル」を見極められることがある。応募者のさまざまな言動から総合的に見極めることが重要だ。

「ポテンシャル」の高め方

「ポテンシャル」を高めるには意識を変えることが重要になる。では、どう意識を変えたらいいのか。その方法を解説していきたい。

●自責思考で物事を捉える

何事も自分の責任であると捉えて物事を考えるようにしよう。何か問題が起きた時に自分事として捉えずに他者の責任だと考える癖があると、せっかくの成長の機会を損失してしまう。

●チャレンジ精神を持つ

新しいことにチャレンジすることで、さまざまなスキルや知識を身につけることができる。また人と接する機会が増えるため、価値観が広がるきっかけにもなる。

●主体的に動く

主体的な意識を持てば、自分の意思や判断に基づいて行動するため、おのずと思考力や行動力が培える。一方で受動的なままだと、指示されたことをただ遂行するだけで自分の意思を持てず、判断力が磨かれない。

●明確な目標を持つ

明確な目標を持つことは「ポテンシャル」を高めるうえで非常に重要だ。目標を達成するために、どんな行動をとったらいいのか、どんな意識を持ったらいいかなど自分の行動指針が具体的に見えてくる。そうすることで自分の能力を引き上げやすくなる。

●行動を振り返る

客観的に自分の行動を振り返ることで、課題や気づきを得られる。課題を解決するためにはどうすればいいのか、気づきを次にいかに活かすのか、そうした反省を踏まえて次のアクションに向かっていけるのだ。また自分の強みと弱みも理解できるため、キャリアプランを描きやすい。

人材育成で役立つ「ポテンシャル」の引き出し方

最後に、人事担当者やマネジメント側の視点に立ち、人材育成で役立つ「ポテンシャル」の引き出し方についても解説していこう。

●自責で考えさせるようにする

たとえ、「ポテンシャル」が高くても、他責にしがちな人材はすべてを会社や組織環境、同僚らに問題の根源を求める傾向が強い。それでは、潜在的な能力を引き出すのは難しくなってしまう。そのため、人事担当者は第一に、何事も自責で考えられる環境づくりを心がけることが重要であると言える。

●受け身の姿勢を変えさせる

例えば、自発的に取り組める仕事をつくってみてはどうだろうか。公募でメンバーを募るのもアイデアの一つとしていいかもしれない。受身の姿勢を変化させる良いきっかけとなってくれるはずだ。

●自己分析の癖をつけさせる

自己分析を行うことで本来の能力に気づきやすくなるはずだ。取り組み方を検証することで、本人もまだ気づいていなかった素養を発見できるかもしれない。

●具体的な目標設定をさせる

部下の行動指針を明確にするため、1on1や評価制度などを通じて、具体的な目標を設定させよう。その際、簡単ではないが頑張れば手が届くという程度のストレッチ目標にすることで、より能力を引き出すことができるだろう。

●適性に合った職務を与える

「ポテンシャル」を引き出すには、適性に合った職務を与えるのも重要だ。強みを活かせる業務に取り組ませることで、前向きな姿勢も持ってもらえる。人材の能力を把握しておき、人材配置の参考にすると良いだろう。

まとめ

「ポテンシャル」はごく一部の人だけが持ち合わせているわけではない。誰でも多少なりとも備えているものだ。問題は、それを発揮していけるかどうかである。企業の人事担当者にとっても、従業員の「ポテンシャル」をいかに発揮させていけるかは重要なテーマとなってくる。そのためにも、従業員一人ひとりが自主的に仕事に取り組める職場環境や人事制度を作り上げていく必要がある。また、「ポテンシャル」は能力が顕在化されていないので、見えにくい点も課題だ。面接官によって指標が異なる可能性もあるので、見極めのポイントは統一しておく必要がある。いずれも、今回の記事を参考に取り組んでいただきたい。

よくある質問

●「ポテンシャル」が高い人の特徴は?

「ポテンシャル」が高い人は、素直、失敗を恐れない、自己分析が得意、好奇心旺盛、行動力がある、ポジティブ、責任感がある、成長意欲があるなどの特徴がある。

●人材の「ポテンシャル」を引き出すには?

人材を育成する際には、自責で考えさせるようにする、受け身の姿勢を変えさせる、自己分析の癖をつけさせる、具体的な目標設定をさせる、適性に合った職務を与えるといった点に注意することで、その人の「ポテンシャル」を引き出すことができる。
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