適格退職年金制度(以下、適年)から確定給付企業年金制度(以下、DB)に移行する際に議論となる事項の一つとして、「予定利率」の見直しが挙げられる。適年では積立基準に対する制約がきつくないため、依然として旧来の5.5%を継続して使用しているケースが散見される。一方DBでは、厚生労働省への最近の認可申請において、4.5%以上の予定利率ではその妥当性について厳しくチェックされるとの話も耳にする。予定利率の決定は会社の資金計画に直結する問題であるため、今回はその考え方について述べてみたい。
確定給付型の企業年金制度の財政運営では「給付=掛金+運用収益」という関係式に則り、長期的な資金計画をたてるのが基本となる。ここで給付が一定ならば、運用収益を高めに設定する、つまり予定利率を高くすると、その分掛金負担が少なくて済む見込みとなる。逆に予定利率を低くすると、その分掛金負担が大きくなる見込みとなる。では、予定利率を高めに設定した方が得かというと、そう簡単な話でもない。

 単純化(※)のために、一年後に100万円を支払う制度において、予定利率が0%の場合と10%の場合の掛金を比較してみたい。予定利率0%ということは、運用収益の見込みが0ということであるため、一年後の支払いに備えて現時点で100万円を掛金として積み立てる必要がある。一方、予定利率が10%の場合は、運用収益率が10%と想定しているため、現時点で91万円掛金として積み立てておけば、一年後には100万円(=91万円×110%)となり給付を賄えることになる。

 ここで、実際の1年間の運用利回りが0%であった場合を考えてみる。予定利率を0%としていた場合は予定通りであったため、1年後に100万円を支払って終了となる。しかし、予定利率10%の場合は、1年後も91万円しか準備されていないため、9万円を追加で掛金拠出しないと100万円を支払えない。結局、トータルで100万円の掛金負担ということになる。

 つまり、予定利率をどう設定しようと「給付=掛金+運用収益」という関係式が成り立つ以上、給付を賄う運用収益(実績)が一定ならば、掛金の負担総額は常に同額となる。しかし、その運用実績は資金計画を立てる段階では当然分からない。そこで、予定利率を設定することによって、いわば掛金支払いのタイミングを決定する訳である。上述の例でいえば、将来の給付支払いに対し早めに備えたい場合は予定利率を低く設定し、少し様子をみたい場合は高く設定するという具合である。

 ただし、だからといって予定利率を適当に決めていいという訳ではない。予定利率を高く設定した場合は、本来的にはそれを達成できると期待できる資産構成(アセットミックス)を組む必要があり、結果リスクの高い運用となる可能性が高くなる。この場合、市場環境によっては拠出額が大きく変動し、会社のキャッシュフローが不安定となる恐れがある。逆に、予定利率を低く設定しすぎた場合、市場環境が好調であれば負債に対して必要以上の年金資産が積み立てられることも考えられる。この場合、DBの法令上、年金制度上の剰余金はすべて加入者に帰属し会社には戻ってこないという制約があるため、資金の有効活用の機会を損失する可能性があることに留意する必要がある。

 下のグラフは、DBにおける予定利率の分布である。5.5%を使用している先も見られるものの、大半の制度で2.5%から3.5%に設定している。多くの企業で、最近の市場環境を勘案した率を設定していることが伺える。

 予定利率をいくつに設定するかについて、唯一の正解というものはない。しかしながら、上述のように会社の資金計画に直結する問題であるため、例えば人員構成・市場環境などをファクターにした将来推計(ALM分析)を行い、自社のリスク許容度(例えば突発的な株式市場の低迷があった場合に追加資金負担に耐えられるかなど)を考慮のうえ、予定利率を設定することも必要であろう。
第4回 企業年金制度の予定利率について
(※)予定利率には下限が設定されており(下限予定利率)、DBにおいては「10年国債の応募者利回りの直近5年平均または直近1年平均のいずれか低い率を基準として厚生労働省が決定する」とされている。ちなみに平成22年度では1.3%となっている。
  • 1

この記事にリアクションをお願いします!