これまでの記事ではALIVEで行われているリフレクションについての内容や考察、そこで交わされるコミュニケーションの有用性について触れてきた。今回は、多様な人材が交わりあうALIVEプロジェクトという枠組みを通じて、実際に生み出された新しい可能性について言及したい。

緻密に設計された7日間のプログラム

現在行われている異業種混合型の研修プログラムのなかで、参加者数・参加企業数ともに日本で最大規模といっても過言ではないALIVEプロジェクト(2021年8月現在でのべ124社・570名)。これだけの数の企業に利用いただいている理由の一つに、約3ヵ月のプロジェクト期間で用意している全7日間のベースプログラムがある。どの業種・規模の企業メンバーが参加しても、一定以上の気づき・学びを持ち帰っていただけるよう、本連載記事の第1〜3回でも触れてきたリフレクションのタイミング、問いかけ、フィードバックの方法などを、細かく研修のプログラムを設計している。
加えて、私たちが提供しているプログラムは、金太郎飴のように同じものを繰り返しているわけではない。ALIVE発足の2017年の頃より、プロジェクト終了後には毎回、人事・参加者から生のフィードバックをぶつけてもらい、改善点を明らかにしながらアップデートを重ねてきた。

それゆえ、いかなる答申先団体との協業や毎回変わる各企業人事との事務局体制においても、参加者に一定レベルの価値を感じていただくことができており、70%近い割合で各社からリピートいただいている。

ナマモノだからこそ起こる想定外の連続からの学び

とは言え、いくら緻密にプログラムをデザインしたとしても、主役はあくまでも人。そして向き合う対象はケーススタディではなく、リアルな社会課題。プロジェクトが始まれば、想定外のことがたびたび発生する。

異業種混合のメンバーが集まるため、バックグラウンドにある知識や仕事の進め方・向き合い方も様々。自分の思うようにチームのプロジェクトが進まず、モヤモヤが積み重なり、メンバーと激しい衝突を起こすこともある。「これ以上このチームでやりたくない」と弱音を吐くメンバーが出てくることもある。協業パートナーである答申先団体の経営が傾き、団体存続の危機でこの先プロジェクトが進められるかの判断を迫られることもあった。

動画「ALIVE密着ドキュメンタリー」より

そんな想定外の困難やトラブルに、どう向き合い、いかに自己選択的に対処していくのかが、参加者にも我々運営サイドにも常に求められる。そこには、デザインしようにもしきれない、ナマモノとしての学びがある。

多様な価値観がぶつかりあうからこそ、新しいものが生まれる

想定外は、なにも困難やトラブルだけではない。我々の想像を超えたところでの新しい価値がいくつも創り出されてきた。例えば、「JAL×ポケットマルシェ」の”青空留学”(※1)。

※1:「JAL×ポケットマルシェ」の”青空留学”の詳細はこちら

当時、答申先団体として参加いただいた、ポケットマルシェの運営母体である日本食べる通信リーグ。同じタイミングで、JALからの参加者は、栃木県の地方自治体テーマの課題に向き合っていた。ALIVEプロジェクトの期間中ではほとんど触れ合うことのなかった両者が、プロジェクト最終日の懇親会で意気投合。そこから会社を巻き込んでの新しい取り組みが発足した。それが「JAL×ポケットマルシェ」の”青空留学”だ。
他にも、「いけばな草月流×音楽座ミュージカル」によるコラボレーション公演(※2)につながった例もある。どちらも、ALIVEプロジェクトの参加者から提案を受ける答申先団体の立場であるにも関わらず、同じタイミングで参加したプロジェクト終了後に、その枠を超えて団体同士でのコラボ企画が誕生した。単発企画では終わらず、その後も何度もご一緒されている状態である。

※2:「いけばな草月流×音楽座ミュージカル」によるコラボレーション公演の詳細はこちら

この紹介した二つの事例以外にも、異なる企業の参加者同士が会社の壁を越えて勉強会を開いたり、定期的に連絡を取りながら情報交換しあったり、プロジェクト終了後に答申先団体にプロボノ的に参画したりなど、新しい機会創出が自然と起こっているといった話はあとを絶たない。

これらはすべて、3ヵ月のプロジェクトの外で生まれたものであり、業種・職種の異なる人間が集い、深く向き合うからこそ生じる、化学反応的なイノベーションの種だと感じている。
他にも、ここでの紹介は割愛するが、3ヵ月のプロジェクトの中で提案された企画が、実際に答申先団体の新事業として採択され、稼働しているというケースも数多く存在する。
これまで数多くのプロジェクトを伴走させていただいて感じるのは、多様な価値観がぶつかりあうことによる学びの多さは、計り知れないものがある。そして、そこから生み出される成果の可能性は無限大であるということ。

よく企業の人事担当者から「イノベーション人材を育てたい」、「自社に新しい風を吹かせたい」といった悩みを聞かせていただくことがある。本記事をご覧の方で同じような課題感を感じている人がいらっしゃるのであれば、ALIVEというスキームを使うかはさておき、自社の壁を飛び出し、多様な価値観と本気でぶつかり機会を用意することを、強くおススメしたい。
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