AIは人事の未来をきっとこう変える【23】

Inside HR−人事はここを見ている

AIと人事部。これほど想像しづらい組み合わせはなかなかないのではないでしょうか。最先端の技術であるAIに対して、少し地味で事務的なイメージがある人事部。この2つが掛け合わさるとどのようなことが起こるのか、予想できないのも無理もありません。しかしデジタル化が進む企業では、人事部でもAIが活用され始めようとしています。そこで今回はAIが人事をどう変えていくのか、現場視点から考察してみます。

アメリカから見た日本企業の人事部は“石器時代”

少し前から、人事領域におけるAIの活用が話題にあがるようになりました。といっても、まだまだ興味本位のレベルです。多くは「AIが発達すると、代替される業務が増えて人事管理の在り方が変わるよね?」という話が中心です。

正直なところ、人事部はこれまでAIはおろか、ITにすら疎遠な部署でした。IT企業は別ですが、それ以外はITに詳しい社員がほとんどいません。多くの人事部は、やっと最近タレントマネジメントシステムが導入され始め、データ分析やビッグデータに触れられるようになった段階ではないでしょうか。

一方アメリカではIT活用が積極的に行われ、AIによる人材データの分析が少しずつ始まっているようです。アメリカからある日本企業に視察に来た学生が、ITの導入状況をみて「まるで石器時代だ」と言ったといいます。

日本企業の人事部では、いまだに一部の業務をファイルや紙で行っている場合もあります。まだまだExcelでの管理が中心という企業も多いでしょう。こんな状況を、そのアメリカ人学生がみたら、もっとびっくりするに違いありません。そのため、人事業務の中でAIを活用するのは、まだまだずっと先の未来だと感じています。

AIがあれば人事部はいらない!?

しかし、日本を代表する大手企業の人事部の中には、AIを活用しはじめている事例もあるそうです。

社員が数万人以上のある大手上場メーカーでは、社員のデータをビッグデータとしてAIに投入しています。たとえば、入社時のSPIの結果と昇格試験や業績データ、研修結果を組み合わせ、ポテンシャルのある人材を見極めて選抜育成に活用するトライアルを行っているとのことです。まだまだテスト段階ですが、教師データとして現社長や会長のデータを読み込ませてリーダー候補を探しており、そのことに一定の結果が見え始めているともいいます。

こうしたお話をお伺いすると、完璧なAIが完成したら人事部はほとんどいらなくなるのでは? と考えてしまうことすらあります。

人事部の業務は7割から8割ほどが事務作業や分析、管理の仕事です。ですが人件費の分析や最適な人員計画といったデータ分析は、AIが考えて自動で最適化したほうが良い答えがでるはずです。

また採用、教育業務も、AIで優秀人材や候補人材を分析して、性格検査の結果も照合すれば、面接などで選抜する手間もなくなるでしょう。さらには労務管理も、社員の健康データやエンゲージメント調査の結果をAIに読み込ませてリアルタイムで管理すれば、メンタル不調や離職を未然に防ぐこともできるはずです。そう考えていくと、人事部がAIに代替される可能性が見えてきます。

現在は投入された人事データが少ないので、まだまだその日は来ないと思いますが、AIがさらに進化した時には人事部をなくす企業も生まれるかもしれません。

著者プロフィール

中野 在人

大手上場大手メーカーの現役人事担当者。

新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。

立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。

個人で転職メディア「転キャリ」を運営中:http://careeruptenshoku.com/
他に不定期更新で人事系ブログも運営:http://hrgate.jp/

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