エンゲージメントの高さは「受付」を見れば分かる【7】

Inside HR−人事はここを見ている

近年HR領域では「エンゲージメント」への注目が高まっています。人事におけるエンゲージメントとは、企業や組織に対する従業員の愛着や絆のことです。転職市場の活性化に伴い、採用におけるマッチングや離職防止の観点から、エンゲージメントの重要性を多くの人事が認識しています。しかし、終身雇用が前提で同じ企業に勤めることが当たり前だった、日本企業の人事にはエンゲージメント向上のノウハウがほとんどありません。具体的にエンゲージメント向上はどのように取り組めばよいのでしょうか。そこで今回は少し変わった視点で「ここを見ればエンゲージメントの高さがわかる」というポイントをご紹介します。

「受付」で企業文化が見えてくる

私は企業理念やインナーブランディングの仕事に携わって6年以上の経歴があります。理念が浸透している企業は、どのような組織なのか。その答えを知りたい一心で、これまで仕事を通しつつ、個人的に強い興味を持って100社以上の企業に訪問してきました。そこで一つの持論にたどり着きました。それは「『受付』がその企業の文化をわかりやすく表している」ということです。

例えば、あるベンチャー企業にお邪魔した際に受付全体がとても鮮やかなオレンジ色で統一されていました。人事責任者に理由を訪ねてみると、「コーポレートカラーであるオレンジを通じて、来社されるお客様に対して私たちの情熱や成長性を感じてもらいたい」と熱く語ってくれました。また、ある大手上場企業では受付に行くとすぐに受付担当者がテーブル席に案内し、飲み物を勧めてくれました。お礼とともに担当者に理由を訪ねてみると、「ごくあたり前のことをしているだけですが、私たちは日本人のおもてなしの文化を大切にしています」と答えてくれました。

このように、受付をよく観察してみるとその企業の文化や社風が見えてきます。

エンゲージメント向上のための受付づくりチェックポイント

従業員とのエンゲージメントが高いと言われる企業の受付の傾向を下記の通りまとめてみました。

●企業の理念、ビジョンが掲示してある
●企業の歴史がわかる
●企業を代表する特徴的な製品やサービスが展示されている
●社長だけではなく、役員や社員の顔がわかる
●お客様をお待たせしていない
●社長の趣味のものなど、企業文化に関係ないものを受付においていない

これら6つのポイントに全てチェックがつくようであれば、従業員とのエンゲージメントが高い企業である可能性があります。

私は「受付づくり」でエンゲージメントは向上できると考えています。なぜなら受付は企業の顔であり、従業員が毎日通る場所だからです。例えば、ベンチャー企業の多くは受付に企業の理念やビジョンを掲げています。なかには、創業以来の歴史や製品をたくさん展示している企業もあります。こうした企業の社員の方に話を伺ってみると、必ず企業のビジョンや自分自身の仕事の意義を熱く語ってくれます。

いっぽうで、エンゲージメントを下げる可能性があるダメな受付にも特徴があります。あなたの所属する企業ではお客様を待たせていないでしょうか。受付の椅子に収まらないほどお客様を待たせている企業は、担当者のアポイントの取り方や時間管理の仕方がまずいと言えます。こうした企業に社内の課題をヒアリングしてみると、組織が縦割りで社内コミュニケーションが取りづらいという答えが返ってくる傾向にあります。

エンゲージメント向上は小さなことから

Googleで「エンゲージメント」と検索してみると、エンゲージメント向上のためのツールや施策がたくさん出てきます。たいていはクラウド型のサーベイシステムなど、大掛かりなものが多いでしょう。しかし、ここまで紹介したように、エンゲージメントはほんの少しの工夫で高めることができます。なぜなら、エンゲージメントは企業に対する従業員の「愛着」だからです。

私は企業への愛着は、製品やサービスへの愛着から始まると考えています。エンゲージメントの高い企業で、「会社は好きだけど、売っている製品やサービスが好きではない」という話は聞いたことがありません。

エンゲージメントを高めるには自社の製品・サービスがどのように世の中に貢献しているかを企業の存在意義である理念やビジョンとともにストーリー化するのが効果的でしょう。例えば、社員が毎日目にする受付や通用口に自社の理念、ビジョンと代表的な製品・サービスを展示するだけでもエンゲージメント向上につながるはずです。さらに、製品・サービスに対するお客様の声を紹介するのも効果的です。企業が世の中に役立っている、そして自分が企業を通じて社会に役立っている、この実感を社員が持つことがとても大事です。現状分析も大事ですが、いきなりエンゲージメントサーベイを導入しようとするのではなく、まずは社員に製品、サービスを好きになってもらう方法から考えましょう。エンゲージメント向上は小さなことの積み重ねなのです。
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著者プロフィール

中野 在人

東証一部上場大手メーカーの現役人事担当者。

新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。

立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。

個人でHRメディア「HR GATE」を運営中。
HRメディア「HR GATE」

HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019 アフターレポート公開中

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