今こそ「休み方改革」を。上手に休むことは日本人の働き方を変える第一歩

HRプロ × HR Trend Lab所長・土屋裕介 - コラボコラム

真の働き方改革を実現させるためには、まず初めに日本人の休み方を変えなければならない。そんな発想のもと2017年に政府主導で始まった「休み方改革」。官民一体となって休み下手な日本人の意識を変えようとするこの取り組みが今、少しずつ成果を出し始めている。「休み方改革」とは一体何なのか。そして、企業にどのようなメリットをもたらすのだろうか。

「休み方改革」こそ「働き方改革」の本質だ

あなたは自分自身が “休み下手”だと考えた事はないだろうか。休むことに後ろめたさを感じたり、せっかくの休日も頭のどこかでついつい仕事について考えてしまったり…そんな人は少なくないだろう。

2019年4月1日から「働き方改革関連法案」が順次施行され、働き方改革の波が着々と広がりつつある昨今、日本企業は社員が休暇を取りやすい環境を整えるなど、「休み方改革」にも注力する必要がある。“休み下手”な日本人にとって、休み方改革が働き方改革の第一歩になると言っても過言ではないからだ。

「休み方改革」とは、2017年に政府が提案した施策(※1)で、有給休暇を積極的に取得したり、長期休暇を見直したりと、官民一体となって休暇が取りやすい環境を作っていく取り組みである。労働生産性の向上や長時間労働是正など、働く時間にフォーカスした改革を働き方改革と言うのなら、休み方改革は、休む時間にフォーカスした取り組み全般を指す。働き方改革と休み方改革は、働きかける方向性こそ違えど、理想的なワークライフバランスの実現という大きな目標は共通しており、両輪をバランスよく走らせることが不可欠だ。

日本人の有給取得率、3年連続最下位

休み方改革が求められる背景には、日本社会や日本企業が抱えるいくつかの問題がある。第一に挙げられるのが、日本の有給休暇取得率の低さだ。厚生労働省が2017年に行った調査(※2)によると、日本の有給取得率は51.1%となっており、ほぼ半数は取得できていないという。また、エクスペディア・ジャパンが2018年に世界19の国と地域の有職者約1万1000人を対象に行った有給休暇や長期休暇に関する国際比較調査(※2)によると、日本人の有給休暇取得率は50%、取得日数は10日で、いずれも3年連続で最下位となった。さらに、有給休暇の取得に罪悪感があるかどうかという質問に対しては、日本人の58%が「ある」と回答し、これもまた最多となっている。こうした傾向は、働くことを美徳とする日本人特有の意識や、自分だけ休みづらいという同調圧力などに起因しているとも言えるだろう。いずれにせよ、日本人全体が意識を変革させなければならない。

2つ目の背景として挙げられるのが、長時間労働の常態化だ。厚生労働省の調査(※4)では、日本は欧州諸国と比べて年平均労働時間が長く、時間外労働(40時間/週以上)者の構成割合についても、特に週49時間以上働いている労働者の割合が高いことがわかっている。長時間労働が起こる要因としては、人手不足や業務過多、上司のマネジメント不足、企業全体の雰囲気など、さまざまなことが考えられるが、長時間労働が続けば、業務効率の低下はもちろん、心身の不調や、最悪の場合は過労死など、リスクも大きくなっていく。こうしたことからも、労働時間の短縮や休暇の見直しは喫緊の課題と言えるだろう。

休暇取得を促進する多彩な施策事例

具体的な施策例としては、大型連休を地域毎に新たに設け、家族が一緒に過ごせる時間を増やす「キッズウィーク」や、一定要件の下、年次有給休暇を計画的に割り振ることができる制度「仕事休もっ化計画」、リゾート地などで休暇を兼ねてリモートワークを行う「ワーケーション」、飛び石連休中の平日や年末年始休暇、土日前後などに年次有給休暇を取得することで連続休暇を1日プラスする「プラスワン休暇」、社員とその家族の心身のリフレッシュを目的に有給休暇とは別に休暇を取る「リフレッシュ休暇」などがある。

また先進的な企業事例としては、ソニーの取り組みが有名だ。同社は平日10日間、土日を含めて最長16日間の長期連続休暇が取れる「フレックスホリデー」(※5)制度を実施している。フレックスホリデーは会社所定休日のため、通常の有給休暇とは異なり、取得が義務づけられている。

政府の後押しで改革は加速するか

休み方改革を主導する政府は、これまでもさまざまな取り組みを行ってきた。始まりは2014年──。「経済財政運営と改革の基本方針2014」を閣議決定し、有給休暇を活用したシルバーウイークの大型化を促進する方針を打ち出した。さらに「休み方改革ワーキンググループ」も発足させ、2015年には厚生労働省が「働き方・休み方改善ポータルサイト」(※1)を開設。この頃から“休み方改革”という言葉が一般にも徐々に浸透し始める。そして2017年6月には「休み方改革官民総合推進会議」を新設し、官民をあげて休暇の充実した過ごし方等を提案している。政府が主導する施策としては、先に挙げた「キッズウィーク」や「仕事休もっ化計画」が知られており、また毎月最終金曜日15時に仕事を終わらせる「プレミアムフライデー」の取り組みも、政府が推進する休み方改革の一環だ。

休み方改革に関連した、助成金もある。その中の一つ、「時間外労働等改善助成金」(※6)は、時間外労働を削減し、労働時間の短縮に努める中小企業に支給される助成金だ。いくつかのコースに分かれており、例えば「職場意識改善コース」では週労働時間60時間以上の雇用者の割合5割減、年次有給休暇取得率70%の達成(2020年目標)を目指し、成果目標を達成した企業には最大100万円が支給される。また、「テレワークコース」ではテレワーク用の設備の導入などを行い、効果的に運用している企業に最大150万円が支給される。

その他にも各都道府県の労働局に「働き方・休み方改善コンサルタント」を設置し、労働時間の改善や休み方改革に関する相談などを無料で実施するなど、バックアップ体制も年々整ってきた。こうした政府の取り組みのもと、休み方改革を加速させる企業は今後ますます増えていくだろう。

【出典】
※1:働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)
※2:平成 30 年就労条件総合調査の概況(厚生労働省)
※3:世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018(エクスペディア・ジャパン)
※4:長時間労働対策(厚生労働省)
※5:ソニー株式会社は、厚生労働省が実施するイクメン企業アワードでグランプリを受賞(ソニー)
※6:労働時間等の設定の改善(厚生労働省)

HR Trend Lab所長・土屋 裕介 氏のコメント

働き方改革と併せて語られる事の多い休み方改革ですが、働き方改革と比べ圧倒的に知名度が低いのではないでしょうか。そもそも、労働人口の減少をきっかけに始まった働き方改革と有給消化率改善のために始まった休み方改革では、解決したい課題は異なります。
ただし、多様性を受け入れて柔軟な働き方を推進するという根っこの部分は同じですし、日本人のメンタリティーには働く量を抑制するよりも休む量を増やすという考え方のほうが、改革を進めやすいのではないかと個人的には考えています。働き方改革にも劣らず、広く浸透を目指してほしいところです。
働き方改革・休み方改革、双方の施策が奏功してすべてのビジネスパーソンが「働くことは楽しい!」「家庭も仕事も充実している!」と思えるようになると、日本の国際競争力も高まるでしょう。
土屋 裕介 氏
株式会社マイナビ 教育研修事業部 開発部 部長/HR Trend Lab所長

国内大手コンサルタント会社で人材開発・組織開発の企画営業を担当し、大手企業を中心に研修やアセスメントセンターなどを多数導入した後、株式会社マイナビ入社。研修サービスの開発、「マイナビ公開研修シリーズ」の運営などに従事し、2014年にリリースした「新入社員研修ムビケーション」は日本HRチャレンジ大賞を受賞した。現在は教育研修事業部 開発部部長。またHR Trend Lab所長および日本人材マネジメント協会の執行役員、日本エンゲージメント協会の副代表理事も務める。

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著者プロフィール

HRプロ編集部

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