「上司」というのは、通常マネジャーのことを指します。多くの企業では、マネジャーの代表格と言えば「課長」と「部長」ですね。
では、「課長」と「部長」の大きな違いとは何なのでしょうか?
第88回 「部長」として上司力を発揮する
課長から部長になったばかりのいわゆる「新任部長」は、課長の時と同じ感覚でマネジメント業務を行っているケースが散見されます。もちろんそれでうまくいく部分も多いのですが、経営層から見ると「物足りない」と感じられることが多いようです。
「物足りない」ということは、「強いチーム(部)」をつくる部長としての動きができていないということです。
しかし、当の本人は「私は毎日部下の相談にも乗っているし、管理業務や育成にも手を抜いていない。目の前の仕事を一生懸命やっているじゃないか」と不満を漏らすかもしれません。課長から部長になった人ですから、当然有能でしょうし、熱心に仕事をやっているのは間違いありません。ただ、「目の前の仕事を熱心にやることが美徳」という価値観が「強いチームをつくる部長」への脱皮を妨げているといっても過言ではありません。
このような部長は、課長レベルの業務から脱せない「大課長」もしくは「部長もどき」と呼ばれています。

課長はいわば現場の責任者です。経営層や部門長から降りてきた目標や方針に従って、いかにチーム(課)の目標を達成するかを考え、メンバー一人ひとりの動きをマネジメントするのが重要な仕事です。つまり、「日々の管理業務」に比重が置かれます。
しかし、部長は違います。部長は、課長を通じてメンバーの管理を行っています。つまり、日々の管理は基本的に課長に任せるのが基本です。課長に任せられずに、日々の管理業務中心になっているのが「大課長」「部長もどき」なのです。

では、管理業務が減った分、部長は何をするのか?それは、「創造業務」です。
部長は、単なるマネジャーというレベルではなく、「部門経営者」であるといわれています。部門の人・モノ・金・情報を生かして、1年後・2年後の「ビジョン」を考え、そこに向かうための戦略を練りこみます。そして、戦略をいかに部門全体に浸透させるかを考え実行します。
目の前の仕事で大変忙しい課長と一緒に、部長も目の前だけに追われていては、1年経っても、2年経っても、何も変化が起きない。当然変化が起きなければ、時代の波に乗ることができず、組織が衰退するリスクが高まります。

実際、経営層に部長に期待することを聞くと、「部門の経営者として、将来を見据えた動きをしてほしい」という人が多いようです。ただし、「期待通りに動いてないけどね」という言葉もついてくることが多いですが……。

「目の前の仕事を熱心にやることが美徳」で、そのことによって評価されてきた人が、目の前の仕事を誰かに任せて将来のことを考える創造業務に充てることは、かなり勇気がいります。最初のうちは「こんなことしてていいのだろうか……」と罪悪感に襲われる人さえいます。その罪悪感に耐えられず、日々の結局管理業務に集中してしまい、本当の部長に脱皮できないケースが多いのです。
 
思い切って価値観を変えることが、部長としての責任を全うする第一歩です。
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