コラム・対談・講演録
『キャリアエンゲージメント:ミドルシニアの自律と越境』田中 研之輔 (著), 桝中 美佐 (著)(千倉書房)
書籍・本 紹介/レビュー
キャリアエンゲージメントとは、組織や現在の職務の枠を超えて、「自分のキャリア全体」にどれだけ主体的に関わっているかを示す概念である。組織への愛着を測る組織エンゲージメント、仕事への没頭度を見るワークエンゲージメントとは異なり、時間軸も対象もより長期かつ広い。本書では、定義・対象・目的・動機の源泉といった観点で三者を対比した整理が示されており、現代のキャリア理論を理解するうえで示唆に富んだ内容となっている。
著者は前書きでミドルシニアを「40代後半から60代手前」と定義し、この世代がある時期を境に、自分の意思や可能性を語らなくなっていく現象への危機感を率直に綴る。そうした「諦め」とも「慎み」ともつかない静かな停滞を、いかに自律と越境へと転換していくか――本書は、この問いに理論・調査・豊富な事例から応答する一冊である。電通が提唱しニューホライズンコレクティブ(NH)が提供する「ライフシフトプラットフォーム(LSP)」での参与観察データや、学び直しと仲間づくりを組み合わせたリスキリングの仕組みCo‑Skillingなど、実践現場からの知見が随所に織り込まれている点も特徴だ。
人事にとって本書は、ミドルシニア層をどう捉え、どのレベル(組織・仕事・キャリア)のエンゲージメントを高めたいのかを整理するための概念的な土台を提供してくれる。キャリア自律支援や制度設計、越境機会の設計を検討する際の「前提理解」を深めるテキストとして、一読の価値があるだろう。
【ぜひ手に取っていただきたい人】
・ミドルシニアの活性化やキャリア自律支援の施策を考えたい人事・人材開発担当
・「キャリア」単位でエンゲージメントを設計したい経営層・HRBP
・40代後半以降の部下や自分自身の「静かな停滞」に危機感を持つ管理職・リーダー
【書籍基本情報】
書籍名:キャリアエンゲージメント: ミドルシニアの自律と越境
著者: 田中 研之輔, 桝中 美佐
出版社:千倉書房
書籍発売日:2026年1月30日