HR総合調査研究所は楽天「みんなの就職活動日記」と共同で、2012年12月19日から28日にかけて2014年卒業予定の大学生・大学院生に対し「2014年卒就職活動動向調査」を実施した。目的は2014年卒学生の就活初動の動きと意識を知ることにある。
 2013年卒採用から採用広報の開始が12月1日になり、2011年12月は企業と学生の双方に戸惑いが見られた。2014年卒は12月1日スタートの2年目になるが、学生はどのように動いたのだろうか。学生の動きをさっそく紹介しよう。

今年もサービス不能に陥った12月1日深夜の就職ナビ

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

まず見ておきたいのは12月1日の動きだ。昨年は就職ナビがダウンしたり、アクセスしづらくなったりするトラブルが続出した。就職ナビ側は学生のアクセスが集中することを予想してサーバを補強していたが、想定の倍以上のアクセスがあり、トラブルになった。就職ナビ関係者の話によれば、今年度は昨年のような集中に耐えられるように増強したそうだ。さてその対策は効を奏したのだろうか。

 学生へのアンケートは「12月1日の深夜に就職ナビにアクセスしたか」と「深夜」に限定して質問した。その回答は、文系全体で55%がアクセスし、理系全体では39%がアクセスした。そして就職ナビはまたもダウンあるいは極端にレスポンスが遅くなり、満足に利用できない時間帯が生じたようである。一昨年はリクナビ、マイナビのトラブルが報道されたが、昨年はその他の就職ナビも幅広くサービス不能状態に陥ったようだ。「アクセスしようとしたが、サーバが混んでいてできなかった」という学生のコメントがその間の消息を伝えている。
 ただ大学クラスで分析すると、旧帝大クラスのアクセス率は他と比べるとやや低い。文理ともに大学クラス別で最低であり、大まかに言えば上位校ほどアクセス率が低い傾向がある。

図表1:12月1日の深夜に就職ナビにアクセスしたか(文系全体・クラス別)

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

図表2:12月1日の深夜に就職ナビにアクセスしたか(理系全体・クラス別)

4割超の学生が参加した12月1日の合同企業セミナー

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

2014年卒採用では解禁日の12月1日が土曜日となり、多くの合同企業セミナーや学内企業セミナーが開催された。さて就活がスタートした段階で、学生はセミナーに参加したのだろうか。
 セミナーに参加した学生は文系全体の44%、理系全体の39%に達している。セミナーが開催されていないエリアもある中で4割前後の学生が参加している。驚くべき数字だと思う。また理系学生の動きは文系をつねに下回っているが、就活開始日に39%がセミナーに参加していることは注目していい。
 興味深いのは旧帝大クラス文系だ。就職ナビへのアクセスは低かったが、セミナーには51%と過半数が参加している。参加率が5割を超えているのは旧帝大クラス文系だけだ。

図表3:12月1日開催の合同企業セミナー、学内企業セミナー等への参加(文系全体・クラス別)

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

図表4:12月1日開催の合同企業セミナー、学内企業セミナー等への参加(理系全体・クラス別)

旧帝大・早慶クラスで飛びぬけて高い大手企業志向

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

学生の就活を困難なものにしている主因として、大手志向の強さがあげられる。大卒求人倍率はリクルートワークス研究所が5月の連休前後に発表しており、2013年卒の求人倍率は1.27倍だ。しかし企業規模で大きな違いがあり、300人未満では3.27倍、300~1000人未満0.93倍、1000人以上5000人未満では0.81倍、5000人以上では0.60倍だ。
 中堅中小企業に目を向けないと多くの学生は就職できないのだ。そこでキャリアセンターは優良中堅企業、BtoB企業の研究を学生にすすめている。さて学生の意識は中堅中小に向いているのか?
 結論から言えば大手志向は強い。「絶対大手企業に行きたい」「できれば大手企業に行きたい」を合わせた数字は、文系全体で53%、理系全体で63%と過半数を超えている。理系全体の方が10ポイント高いが、理系の方がメーカーに就職しやすいからだろう。理系学生はそのように考えているようだ。
 そして「中堅企業に行きたい」や「中小企業に行きたい」は両方を合わせ文理ともに2割を切っている。「企業規模は問わない」は2割以上だが、就活が進み数社を比較する段階になれば規模が大きい企業を選ぶ可能性が高い。
 大学クラス別の違いも大きい。大企業志向は旧帝大クラスと早慶クラスで飛びぬけて高い。大手を志向する旧帝大クラス文系は73%、早慶クラス文系で78%だ。旧帝大クラス理系は73%、早慶クラス理系が84%だ。他の大学クラスとの差は大きい。
 ただ大学クラス別の志向度の違いを見ると、身の丈を自覚しているように読める。旧帝大クラス、早慶クラスは企業が設定するターゲット校に選ばれており、就職できる可能性が高い。そして「その他国公立大学」「中堅私大クラス」「その他私立大学」は大手を志向
しても就活が無駄になる可能性が高い。そういう意識が反映されているのだろう。
(※大手企業=1000人以上、中堅企業=300~1000人未満、中小企業=300人未満)

図表5:希望する企業規模(文系全体・クラス別)

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

図表6:希望する企業規模(理系全体・クラス別)

前年よりも増えている文系のプレエントリー数

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

プレエントリー社数を見てみよう。まずわかるのはゼロの学生はほとんどおらず、活動を開始している。しかし文系と理系で違いがある。
 文系では「1~20社」「21~40社」くらいのプレエントリーは昨年より減っている。そして「41~60社」「61~80社」「81~100社」「101~120社」では増えている。プレエントリーの絶対数は前年よりも増えていると推測され、昨年よりもプレエントリーが減っている企業は、要注意である。

図表7:プレエントリー社数(文系、2013年卒・2014年卒比較)

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

一方、理系は文系と逆の傾向になっている。「1~20社」は昨年より増えているが、「21~40社」「41~60社」のプレエントリーになると減っている。この数字を見る限り、理系のプレエントリーは前年よりもやや減少しているようである。

図表8:プレエントリー社数(理系、2013年卒・2014年卒比較)

意外に高い理系の学内合同企業セミナー参加率

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

さきほど「12月1日のセミナー参加」の有無の数字を紹介し、就活スタート時の行動を点検した。12月はその後も学内合同企業セミナーが開催される大学が多いが、学生は参加しているのか?
 数字を見て少し驚くのは、つねに就活行動が文系より鈍い理系学生が、文系以上に学内合同企業セミナーに参加していることだ。文系全体の「参加した」は70%だが、理系全体は75%と5ポイント高い。
 参加率が高いのは「旧帝大クラス」と「早慶クラス」だ。なんと旧帝大クラス文系は89%が参加している。早慶クラス文系は78%と旧帝大クラス文系より10ポイント以上低い。しかし理系になると旧帝大クラス理系の80%を上回り、早慶クラス理系は88%が参加している。
 最も参加者が少ないのは「その他私立大学」だ。文系で43%、理系で53%と大学クラスのなかでもっとも低い。そして「まだ開催されていない」が最も多い。早い時期の学内合同企業セミナーには、大手企業や人気企業を中心に誘致することが多く、企業集めに苦労している姿が垣間見える。

図表9:これまでに学内合同企業セミナーに参加したか(文系全体・クラス別)

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

図表10:これまでに学内合同企業セミナーに参加したか(理系全体・クラス別)

旧帝大クラスで低く、早慶クラスで高いソーシャルメディアの威力

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

就職活動で使用しているソーシャルメディアについて、HR総研は何度も調査結果を発表してきた。世間で言われるほどには学生の利用は進んでいないが、利用度が上がる傾向にあるので注視する必要があるという結論だった。さて今回の調査結果を報告する。
 まず文系ではソーシャルメディアを使用していない学生は3割にとどまり、利用は進んでいる。しかし理系では54%が使用していない。理系採用ではソー活の威力は限定的に読める。
 圧倒的に支持されているはfacebookだ。続いてTwitterだが、その差は大きい。それ以外のソーシャルメディアは無視できるほど利用者は少ない。
 大学クラス別に見ると特徴がある。旧帝大クラスの利用者は少なく、文系で47%、理系で69%が使っていない。旧帝大クラスへの訴求メディアとしてソー活の効果は小さいだろう。
 早慶クラスも旧帝大クラスとは逆の特徴で目立つ。利用者が多く、「使用していない」文系学生は26%、理系学生は27%。大多数の学生がソーシャルメディアを使っている。早慶クラスへの訴求メディアとしてソー活は有効に思える。

図表11:就職活動で使用しているソーシャルメディア

昨年よりも利用者は増えているfacebook

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

facebookでの採用ページ閲覧社数を見ると、ソーシャルメディアが普及してきたことがわかる。理系の利用は文系より低いが、文理ともに閲覧社数は増えている。2013年卒文系の「見たことがない」は46%だが、2014年卒文系は35%に減少した。3分の2が見ている。
 2013年卒理系は66%と3分の2の学生が見ていなかったが、2014年卒理系は57%と10ポイント近く減った。
 閲覧社数でもっとも多いのは「1~3社」だが、「4~6社」と「7~10社」は確実に増えている。もっとも「20社以上」は皆無に等しい。

図表12:閲覧した企業のfacebook採用ページ社数(文系、2013年卒2014年卒比較)

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

図表13:閲覧した企業のfacebook採用ページ社数(理系、2013年卒2014年卒比較)

増加しているインターンシップ参加学生

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

今回の調査でインターンシップ参加学生が増加していることがわかった。2013年卒と2014年卒を比較すると文系の参加学生は33%から47%へ、理系の参加学生は33%から41%へと顕著な増大を示した。企業側の受入数の増加が推測される。
 「参加したかったが、選考に漏れた」を合わせると、2014年卒は文理ともに5割を超えている。

図表14:インターンシップへの参加(文系、2013年卒2014年卒比較)

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

図表15:インターンシップへの参加(理系、2013年卒2014年卒比較)

8割の学生が望む選考・内定直結型インターンシップ

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

アメリカではインターンシップを経由する採用が多いが、日本では選考・内定直結型インターンシップを実施する企業はユニクロ、ワークスアプリケーションズなど少数企業にとどまっている。
 経団連の倫理憲章は選考を目的とするインターンシップを禁じており、大多数の企業が順守している。しかし大学名や面接の印象で採否を決められる学生は、無意味な就活に疲弊する者が多い。実際に企業で働き、その結果評価されないならあきらめもつくだろう。しかし現実は面接で評価される。そもそも面接さえしてもらえない学生の方が多いはずだ。
 そんな就活の矛盾を考えると、選考・内定直結型インターンシップを取り入れる企業がもっと多くていいはずだが、増えない。
 しかし学生は選考・内定直結型インターンシップを望んでいる。文系理系の差はなく、2013年卒も2014年卒も約8割の学生が「参加したい」と回答している。
 こういう学生の希望に応える企業が増えることを期待したい。

図表16:選考・内定直結型インターンシップへの参加意向

就活メディアのメインはスマートフォンへ

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

この数年で学生が就活で使うツールが変わった。スマートフォンが登場する以前は、PC経由でのWeb閲覧が一般的だったが、いまではスマートフォンを併用するのが一般的だ。2013卒向け調査でも文系ではメインがスマートフォンで、サブがPCという学生の方が多く、2014年卒ではさらにその傾向が強くなっていると推測される。
 そこで携帯電話とスマートフォンの利用状況を聞いたところ、文系の93%、理系の86%がスマートフォンを使用していた。理系が少ない理由は、理系学生が研究室で過ごす時間は長く、研究室にPCがあるからスマートフォンを使う必要性が薄いからだろう。
 最も多いのは「スマートフォンのみの使用」だが、「携帯電話とスマートフォンを併用」という学生もいる。おそらく他社携帯電話と一般電話へのかけ放題の携帯電話を併用しているのだろう。

図表17:スマートフォン、携帯電話の利用状況

あらゆる情報収集にスマートフォンを活用

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

学生は就職活動でどのようにスマートフォンを活用しているのだろうか? もっとも多いのは「メールの確認」だ。「地図・乗換案内」も多い。
 「プレエントリー」と「説明会予約」は文系がかなり多いが、理系はそれほどでもない。理系はPC利用がまだ多く、室内でできることはPCという学生が多いのだろう。いずれにしても就活の情報収集のすべてのシーンでスマートフォンが使用されていることがわかる。
 棒グラフは全体・クラス別を掲載しており、読みづらいと思うが、旧帝大クラスだけかなり異なっており、「メールの確認」以外のすべての項目でもっとも使用度が低い。就活の行動特性が他大学と違っていることが読み取れる。

図表18:スマートフォンの就職活動での用途

3分の2の学生が望むスマートフォン用採用ホームページ

「2014年卒就職活動動向調査」結果報告

スマートフォンは就活のメインメディアになっているが、スマートフォン用に最適化した採用ホームページを持つ企業は少数派だ。そこで学生にスマートフォン用採用ホームページの是非を問うてみた。
 結果は文理ともに3分の2の学生が「スマートフォン用の採用ホームページがあった方がよい」と回答した。そして3分の1の学生が「PC用のホームページのままで不便は感じない」と回答している。
 確かに小さなスマートフォンのディスプレイでWeb閲覧しても、画面を拡大できるので不便は感じない。にもかかわらずスマートフォン用の採用ホームページを望む声が多いのは、iPhoneでFlashを使ったホームページを閲覧できないからではないかと思う。
 採用ホームページにFlashを使っている企業はスマートフォン用のホームページを別に作った方がいい。

図表19:スマートフォン用採用ホームページのニーズ

【調査概要】

調査主体:楽天『みんなの就職活動日記』
調査企画:HR総合調査研究所(HRプロ株式会社)
調査対象:2014年卒業予定の大学生、大学院生
調査方法:webアンケート
調査期間:2012年12月17日~12月28日
有効回答:1149名(文系749名、理系400名)

この先は、会員の方だけがご覧いただけます。会員の方はログインを、会員でない方は無料会員登録をお願いします。

HRプロ会員の方はこちらから

まだ会員でない方はこちらから

登録無料!会員登録された方全員に、特典資料をプレゼント!

HRプロとは

  • 1