「人生100年時代」、「人口減少」が叫ばれる現代社会においてシニアと呼ばれる高齢者の活躍が強く求められている。
高年齢者雇用安定法が改正され、2021年4月からは企業に対して、70歳までの就業機会の確保への努力義務が設けられる。
企業は、このような努力義務をどのように捉え、どのようにして効果のあるシニア活躍支援を行っていくのだろうか。
HR総研では、昨年12月に企業におけるシニア活躍支援の実態について調査した。その結果についてフリーコメントを含めて以下に報告する。

<概要>
●7割の企業で「60歳定年」
●10年後には半数の企業で「50代以上の社員数の割合30%以上」
●「高齢者活躍推進」に向けた措置、「65歳までの継続雇用制度を導入」が7割
●継続雇用後に変更される勤務形態や条件、「給与」「雇用形態」が8割
●企業規模が大きいほどシニア社員のモチベーションは下がる傾向
●「シニア社員のモチベーション低下」の企業で「5年後の企業の生産性低下」は半数
●活躍しているシニア人材は「自律的かつ積極的」の傾向
●シニア社員に対して抱く同僚・上司の最大の課題は「健康面の不安」、一方「健康管理していない」が4割
●認知度は8割ながら、「70歳までの就業機会の確保に向けた対応をする」企業は2割
●70歳までのシニア人材の就業機会の確保における課題は「給与体系」と「モチベーション維持・向上」
●「シニア向け研修」の予算比率「0%」が半数以上
●シニア人材の増加により期待される効果は「豊富な知見や技術、人的ネットワークの活用」

7割の企業で「60歳定年」

まず、現在のシニア人材の雇用状況を見てみる。
「定年退職の年齢」については、「60歳」が圧倒的に多く69%とほぼ7割を占めている。
次いで「65~69歳」が13%、「61~64歳」が9%などとなっている。

【図表1】定年の年齢

HR総研:シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果

10年後には半数の企業で「50代以上の社員数の割合30%以上」

次に、社内の50代以上の社員数の割合について、現在・5年後・10年後で見てみると、現在から10年後までいずれも最も多い割合は「20~30%未満」であり、回答企業の3割を占めている(図表2)。
図表1で示すとおり定年を60歳と規定している企業が多いことを踏まえ、20代~50代の年代別4区分を等分すると1区分の割合は25%になるため、「20~30%未満」となる企業が多いことは適正な割合であると考えられる。一方で、「30~40%未満」より多い企業については、現在で31%→5年後で44%→10年後で50%と、今後10年間で50代以上のシニア社員の割合は着実に増加し続けることが予測できている。
このような実態を見ると、今後の企業におけるシニア社員の雇用の在り方を見直していく必要があるのではないだろうか。

【図表2】50代以上の社員の割合(現在、5年後、10年後)

HR総研:シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果

「高齢者活躍推進」に向けた措置、「65歳までの継続雇用制度を導入」が7割

現在の「高齢者活躍推進」に向けた措置については、「65歳まで(それ以上を含む)の継続雇用制度を導入」が圧倒的に多く71%となっている。その他は「65歳まで(それ以上を含む)定年年齢を引き上げ」が14%、「60歳以上高齢者のキャリア採用促進」が7%、「定年制廃止」はわずか3%にとどまる(図表3)。

【図表3】「高齢者活躍推進」に向けた措置

HR総研:シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果

継続雇用後に変更される勤務形態や条件、「給与」「雇用形態」が8割

「65歳まで(それ以上を含む)の継続雇用制度を導入」を選択した企業を対象に、「継続雇用後の雇用形態に伴って変更される勤務形態や条件」について聞いてみると、「給与が変更される」が81%と最多で、次いで「雇用形態が変更される」が80%、「人事査定がなくなる」が24%などとなっている(図表4)。
一方、「定年前の条件と変更はない」はわずか1%と、ほぼすべての企業で継続雇用後は雇用条件が変更されていることがうかがえる。

【図表4】継続雇用後に伴って変更される勤務形態や条件

HR総研:シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果

企業規模が大きいほどシニア社員のモチベーションは下がる傾向

続いて、現状におけるシニア社員の定年前と比較した、業務に対するモチベーションの傾向について、全体で見てみると「変化なし」が44%と最多であり、次いで「現役時よりやや下がっている」が40%、「現役時より下がっている」が13%などとなっている。「現役時よりやや下がっている」と「現役時より下がっている」を合計すると53%で、過半数の企業で定年後のシニア社員のモチベーションは下がっている傾向にあることが分かる(図表5)。
「現役時よりやや下がっている」と「現役時より下がっている」の合計である「現役時より下がっている傾向」にある割合について企業規模別に見ると、従業員数1001名以上の大企業では66%、301~1000名の中堅企業では58%、300名以下の中小企業では44%と企業規模が大きいほどシニア社員のモチベーションは下がる傾向にあることがうかがえる。
一方、「モチベーションが上がっている」とする企業の割合は、企業規模に関わらず5%にも満たない。
シニア社員のモチベーション低下の要因として、図表4でも分かるとおり、「給与の変更」やポジションなど雇用条件の変化が関わっているものと推測される。企業規模が大きいほどシニア社員のモチベーションが下がる傾向の背景には、定年前と比較した給与の落差が影響しているのではないだろうか。
このようなシニア社員のモチベーション低下は、企業全体の生産性に少なからず影響が出てくるのではないだろうか。

【図表5】シニア社員の業務に対するモチベーションの変化

HR総研:シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果

「シニア社員のモチベーション低下」の企業で「5年後の全社生産性の低下」は半数

では、現状のシニア人材への対応を5年間維持した場合(その他の要因は変化しないものとする)、「企業全体の生産性はどのように変化するか」についての回答企業の予測を見てみると、全体では「ほとんど変わらない」が59%と6割を占め、「5~30%未満程度の低下」が28%などとなっている(図表6-1)。「5~30%未満程度の低下」と「30%以上の低下」を合計した「低下する側」の割合は30%となる。
「低下する側」の割合について企業規模別に見ると、大企業では39%、中堅企業では35%、中小企業では25%となり、企業規模が大きいほど企業全体の生産性低下に繋がると予測する企業が多い。
シニア社員のモチベーション変化別に5年後の企業全体の生産性変化の傾向を見ると、シニア社員の「モチベーション維持傾向」にある企業では、企業全体の生産性が「低下する側」の割合は11%である一方、「モチベーション低下傾向」にある企業では、49%と約5割を占めている(図表6-2)。
このように、シニア社員のモチベーション低下は企業全体の生産性の低下に繋がる恐れがあることがうかがえる。

【図表6-1】シニア人材への対応の5年間維持による全社生産性の変化

HR総研:シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果

【図表6-2】シニア社員のモチベーション変化と5年後の全社生産性の関係

HR総研:シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果

活躍しているシニア人材は「自律的かつ積極的」の傾向

シニア社員の割合が増加することが予測される中、シニア社員がモチベーション高く活躍することが企業全体の生産性に繋がることを踏まえ、現在活躍しているシニア社員と活躍していないシニア社員の特徴について傾向を見てみる。
活躍しているシニア人材の特徴は、「担当業務に責任を持って自律的に遂行している」が最多で74%、次いで「経験・スキル、能力などに自陣を持ち、仕事に活かそうとしている」が70%、「現役社員に対して威圧的な態度を取らない」が65%などとなっている。一方、活躍していないシニア人材は、活躍している人材と比較するといずれの項目に対しても当てはまる割合が大きく低下している(図表7)。
これらの結果から、活躍しているシニア人材には、仕事に対して自律的かつ積極的に動く特徴があり、自身の成長意志や個人的な人生への希望の有無はあまり関係が強くないことがうかがえる。
 
【図表7】シニア人材の特徴

HR総研:シニア活躍支援に関するアンケート 調査結果

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HRプロとは

【調査概要】

アンケート名称:HR総研:シニア活躍支援に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2020年12月7日~13日
調査方法:WEBアンケート(SurveyHR)
調査対象:企業の人事責任者、担当者
有効回答:201件

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Eメール:souken@hrpro.co.jp

※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
詳細につきましては、上記メールアドレスまでお問合せください。

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