HR総研:「多様な働き方」実施状況調査【1】全般、テレワークテレワーク導入企業は25%。メーカーと非メーカーで差異が目立つ。

「働き方改革」は、生産性の向上だけが目的ではない。就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作り、「多様な働き方」を実現することも大きな目的だ。
安倍内閣は、女性活躍推進、高齢者雇用などを推進する一方で、育児や介護、病気療養などで、在宅を余儀なくされる人々の就業機会拡大策として、時間や場所、契約に囚われない「多様な働き方」の導入を進めている。テレワークや兼業・副業がその例だ。
今回実施したHR総研の調査によると、テレワーク導入率は25%、兼業・副業の推奨・容認は、わずか7%だった。
調査レポートの第1回目は、「多様な働き方」の全般および「テレワーク」の現状について、詳細を報告したい。

●施策のトップは「多様な勤務時間の導入」(65%)

「多様な働き方」の実現に向けて、どのような施策を導入しているのかを質問した。
トップは「多様な勤務時間の導入(フレックスタイム制、時短勤務、スライド勤務など)」(65%)で、2位は「柔軟な勤務制度の導入(育児・介護・病気療養等の支援や、法定外休暇の設置など)」(58%)であった。これらは「勤務時間」という側面で、勤務の多様性に対応する施策と言えるだろう。
一方で、テレワークや兼業・副業の推奨・容認、限定正社員などの制度は、「勤務場所」や「雇用契約」の多様性に対応する施策と言える。今回の調査では、導入率は「テレワーク」(25%)、「多様な正社員(限定正社員)の雇用」(18%)、「兼業・副業の推奨・容認」(7%)という結果となった。
この数字を見る限り、「勤務時間」の多様性は、受容体制が比較的整ってきたと言えそうだ。しかし、「勤務場所」や「雇用契約」の多様性は、まだまだ受け入れが難しい様子である。
特に、官民で議論が紛糾している「兼業・副業」に関しては、67%の企業が「禁止」していることが分かった。何が導入の足かせとなっているのか。多数の有益な意見が寄せられたが、こちらは後日報告する。
「その他」(5%)の内容では、「配偶者転勤帯同制度」という回答が見られた。配偶者の海外転勤に同行する場合、最長3年間の休職を認めるというもので、2013年11月15日に成立した国家公務員対象の「配偶者同行休業法」を機に、地方公務員にも広がった。転勤に伴う離職の防止だけでなく、女性活躍推進にもつながるため、導入する企業も増えている。この制度の変形として、育児期の配偶者を持つ社員に対する転勤一時見合せ措置、配偶者転勤時帯同転勤、転勤同行に伴う退職時の再雇用制度の導入などがある。
【図表1】「多様な働き方」の取り組み施策

●テレワークを実施しない理由。メーカー1位は「テレワークに適した業務がない」、非メーカー1位は「情報漏えいが心配」。

ここからは「テレワーク」にテーマを絞ってレポートする。テレワーク導入企業の割合は、全体で25%、メーカーでは28%、非メーカーでは23%だった。
そこでまず、テレワークを導入していない企業にその理由を聞いてみた。
全体の数値を上から順に見てみると、「テレワークに適した業務がない」(38%)、「勤怠管理が困難」(35%)、「情報漏えいが心配」(34%)、「コミュニケーションが不安」(27%)、「設備・環境の用意が大変」(23%)、「業績評価が困難」(20%)などが続く。
一方、業種別で見ると、メーカーと非メーカーで違いが見られた。
メーカーの1位は「テレワークに適した業務がない」(47%)だが、非メーカー(33%)よりも圧倒的に割合が高い。非メーカーでは「情報漏えいが心配」(40%)が1位を占め、メーカー(23%)よりも割合が高かった。
また、メーカーでは「必要性を感じない」(19%)という回答が5位に上がるなど、業種とテレワークとの親和性に疑問を抱いている印象だ。
【図表2】テレワークを導入しない理由(全体)
【図表3】テレワークを導入しない理由(メーカー)
【図表4】テレワークを導入しない理由(非メーカー)

●テレワークの勤務形態は、「在宅勤務」(91%)が最多

次に、テレワークを導入している企業に、その勤務形態について質問した。トップは「在宅勤務」(91%)である。「モバイルワーク」の導入は54%、「サテライトオフィス勤務」は28%だった。
サテライトオフィスの導入には、オフィスコストやその選定、移動コストとの兼ね合い等もあり、人事としては若干の検討が必要となる。普及にはもう少し時間がかかる印象だ。
【図表5】テレワークの勤務形態

●導入対象の条件は「全社員対象」と「妊娠・育児中である」が最多。

テレワークの対象条件はどうだろう。調査の結果、「全社員対象」(32%)、「妊娠・育児中である」(32%)が同率で最多となった。
テレワークを利用できる頻度について質問したところ、「制限なし」(39%)が全体のトップとなった。しかし、メーカーでは「制限なし」と「特定の期間のみ」、「週1日以内」がいずれも24%となり、非メーカーでは「制限なし」(52%)、「特定の期間のみ」(13%)、「週1日以内」(10%)という結果で、非メーカーのほうが柔軟性が高い傾向にある。
業種によって、容認できるテレワークの頻度に制限がかかるのは仕方がないだろう。
【図表6】テレワーク対象者の条件
【図表7】テレワークの頻度

●テレワークの目的は「生産性向上/業務効率向上」と「ワークライフバランス」が最多。

そもそも、企業はテレワークをどのような目的で実施しているのだろう。質問した結果、「生産性向上/業務効率向上」(72%)と「ワークライフバランス」(72%)が同率1位となった。
その効果の実感について質問したところ、「ワークライフバランス」は実施企業のうち69%が「効果を実感している」と回答した。「生産性向上/業務効率向上」は、効果の実感が60%とやや低めにとどまっている。生産性向上を測る指標がはっきりしていない企業も少なくないと思われる。
「健康維持」や「オフィスコストの削減」などは、そもそも目的に掲げる企業が少ないので割愛するが、それ以外はどのテーマ(目的)も4割以上がテレワークの効果を実感している。効果の実感が5割に満たないテーマ(目的)は、テレワーク以外の手段も模索する必要があるだろう。
【図表8】テレワークの目的
【図表9】テレワークで効果を実感した主なテーマ(目的)
実際にテレワークを導入した企業に、どのように導入を進め、どのような変化が見られたのか、フリーコメントで回答してもらった。まだ導入に踏み切れていない企業は、これらのコメントをぜひ参考にしてほしい。

<導入方法>
・利用者と上司ともにアンケートを実施し、効果の測定と懸念事項の排除を行った。(1,001名以上/メーカー)
・半年間のトライアル期間を設けて、トライアル実施者にアンケートやヒアリングを行った。集中できる、安心できるという声があったと同時に、改善点も見つかり、半年程度のトライアルは有効だったと感じる。(1,001名以上/メーカー)

<導入して良かった点>
・営業職の時短につながっている。(301〜1,000名/商社・流通)
・育児中に子育てをしながらも一定の業務に関わる社員が増え、仕事と育児の両立がしやすくなった。自宅で子供を見ながら仕事する感覚を早期に知ることができるため、復帰意欲の旺盛な女性が増えた。(300名以下/マスコミ・コンサル)
・遠方の社員がわざわざ来なくても良いのでその分の効率が上がった。(300名以下/マスコミ・コンサル)

<新たに生じた課題>
・作業環境整備のためのコスト、情報セキュリティの確保、対象者の拡大要請。(1,001名以上/メーカー)
・自宅勤務中の事故(ケガ)などがあった場合に勤務中によるものか、プライベートによるものか、の判別が難しい。(1,001名以上/メーカー)
・勤怠システムが対応しておらず、手作業で集計が必要となった。(1,001名以上/メーカー)
・就業規則上の取扱、就業時間管理の問題(長時間労働防止、残業規制)(301〜1,000名/サービス)
・活用部署が固まっていて、全体に広がっていない。(301〜1,000名/メーカー)
・チームメンバとのコミュニケーションの不足、新技術を学ぶ機会の減少。(300名以下/情報・通信)
・本当に実務をしているかが不明。(300名以下/マスコミ・コンサル)

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「多様な働き方」実施状況に関する調査
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2018年2月16日〜2月22日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び非上場企業の人事担当者・働き方改革、女性活躍推進等担当者
有効回答:213件

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