調査レポート

HR総研:働き方改革「多様な働き方とダイバーシティに関するアンケート調査」vol.2
仕事と育児の両立支援は実施4割、退職率低減に寄与

働き方改革における「多様な働き方とダイバーシティに関するアンケート調査」のうち、今回は主に、仕事と子育ての両立支援、女性活躍推進、および副業・兼業について報告する。

仕事と子育ての両立支援を行っているのは全体では40%で、女性活躍推進に取り組んでいるのは47%である。両立支援を行っている企業のうち「退職率低減」は約50%、「モチベーション向上」は約30%が効果がでている、という結果が判明した。

大手で目立つ「女性活躍支援」と「子育て両立支援」への取り組み
「多様な働き方の取り組み施策」では「子育て両立支援」「女性活躍推進」「高齢者雇用」「外国人雇用」「障害者雇用」から、取り組んでいる施策はどれかを選択してもらった。全体でもっとも多いのは「女性活躍支援」(47%)、2位「子育て両立支援」(40%)、3位「障害者雇用」(37%)、4位「高齢者雇用(33%)」、5位「外国人雇用」(17%)だった。
 全体で見ると取り組み企業は5割以下だが、「1001名以上」では「女性活躍支援」(78%)と非常に高く、「子育て両立支援」にも56%と過半数が取り組んでいる。大企業ほど、女性活躍推進や子育て支援に積極的に取り組んでいることがわかる。

[図表1]実施している多様な働き方の取り組み施策(全体・規模別)
仕事と子育て両立支援施策では「時短勤務制度」を8割が導入
実施する「仕事と子育ての両立支援策」で多いのは「短時間勤務制度」(80%)、「女性の育休取得率70%以上」(51%)、「始業・就業時刻を繰上げまたは繰下げる制度」(42%)の3つだ。

かなり多くの企業が両立支援施策を実行しているが、突出しているのは「1001名以上」の取り組みだ。「短時間勤務制度」は94%とほとんど企業が導入している。また「フレックスタイム制度」(63%)、「女性の育休取得率70%以上」(61%)、「始業・就業時刻を繰上げまたは繰下げる制度」(56%)、「男性の育休の取得(1名以上)」(56%)、「育児休業法を上回る育休」(50%)の項目は50%を超えている。

[図表2]実施、または達成している「仕事と子育ての両立支援策」(全体・規模別)
両立支援で活用されているのは「短時間勤務」「育休取得」
仕事と育児の両立支援施策で活用されているのはどれだろうか。よく使われているのは「短時間勤務制度」(72%)と「女性の育休取得」(67%)だ。子育てには役立つ制度だろう。「フレックスタイム制度」と「始業・就業時刻を繰上げまたは繰下げる制度」も27%使われている。

[図表3]社員に比較的良く活用されている(対象者の5割以上)子育て両立支援策(全体)
仕事と育児の両立支援の効果は「退職率低下」約5割、「モチベーション向上」約3割
仕事と育児の両立支援制度の活用による効果も大きい。「社員の退職率が低下」(47%)は人事にとってうれしい効果だ。「社員のモチベーションが向上」「社員のストレスが低減」という効果もあり、「業務の生産性が向上」がもたらされている。そして副次的な効果として「学生の応募増加」と「ブランドイメージ向上」もあった。

 フリーコメントでは、両立支援施策の効果が表現されている。
・「女性の妊娠を機に退職する割合が削減された」(メーカー、1001名以上)
・「出産によって女性の退職割合が大幅に低下した」(メーカー、1001名以上)
・「過去10年以上を育児を理由に退社した者がいない」(情報・通信、1001名以上)
・「出産が理由の退職はなくなった」(情報・通信、1001名以上)
・「女性社員のご懐妊を理由とする退職がほとんど発生していない。計測方法は退職時の退職理由の任意回答を求めていること」(サービス、301〜1000名)
・「短時間勤務をしながら子育てをしている社員から採用活動への積極的なコミットをいただけたり、学生に対しての企業イメージが向上して魅力ポイントに挙げていただくことが多くなった」(マスコミ・コンサル、300名以下)

仕事と子育てを両立できる仕組みを提供することで、企業は女性社員の退職による戦力低下を防ぎ、採用ブランディングにもなっている実態がよくわかる。

[図表4]子育て両立支援による効果(全体)
1年以上経過した「女性活躍推進法」、全体の64%が取り組み実施
女性活躍推進法は平成28年4月1日に施行され、1年が経過した。
現在の女性活躍推進への取り組みだが、全体の64%が取り組んでいる。大手ほど取り組みに熱心で、「1001名以上」では89%、「301名〜1000名」では79%だが、「1〜300名」で取り組む企業は42%と半数を割り込んでいる。

[図表5]女性活躍推進に継続して取り組んでいるか(全体・規模別)
女性活躍推進法行動計画により「女性の積極採用」」達成6割
「行動計画」について達成できた項目では、「女性の積極採用」が最多で65%、「女性の積極登用・評価に関する取り組み」33%、「配置・育成・教育訓練に関する取り組み」が32%であった。

取り組みの効果についてはプラス評価が多く、「女性社員の退職率が大幅に下がった」(メーカー、300名以下)、「社内が明るくなりました」(情報・通信、300名以下)など、社内の雰囲気が良くなったという声が多い。

意識が変わったという報告もある。
・「一部の女性社員の中に、将来的には管理職を目指したいという意見が散見された」(メーカー、301〜1000名)
・「社員、特に管理職の意識・考え方、女性自身の意識・考え方が変わってきている」(メーカー、301〜1000名)
・「全社員が自社の女性積極採用や女性活躍推進についての認識を持つようになったと感じる」(情報・通信、301〜1000名)
・「女性管理職の割合が上がった」(メーカー、1001名以上)
・「女性の管理職登用数がダイナミックに変化した」(メーカー、1001名以上)。

ネガティブだったり、慎重な意見もあるが、数は少ない。
・「無理に女性採用。女性採用優遇により、男性採用減少。安部総理の影響か、女性昇格に甘く、モチベーション低下」(メーカー、1001名以上)
・「厚生労働省の提示した項目による当社の課題は「管理職の登用」だった。1年間経過して、時短勤務者の管理職が誕生したことは、評価できる点。しかし、管理職手前層女性の人数が非常に少なく、続く登用が困難。まずは、女性への業務アサインなどを見直すことなどを、各現場と話し合いができた。しかし、変化には時間がかかる」(情報・通信、1001名以上)

[図表6]女性活躍推進法により定めた「行動計画」によって達成できた目標(全体)
「社員の兼業・副業」は禁止しているが71%
「働き方改革」では、政府が社員の兼業・副業を後押しすることになった。従来は厚生労働省の「モデル就業規則」には副業・兼業の禁止規定があったが、「原則禁止」から「原則容認」に転換する。複数の企業に勤める場合の社会保険料や残業代などの指針もつくるという。政府としては副業・兼業を認めることで、働く人がその専門性や能力を柔軟に発揮できる機会を増やし,生産性の高い社会を実現することを目指している。

しかし、労働時間の扱いなど兼業・副業には課題が多く、「社員の兼業・副業に関する方針」を聞いたところ、「推進している」は全体の2%と少ない。「容認している」はアルバイト的な副収入については特に制限を設けない、ということだろう。そしてもっとも多いのは「禁止している」の71%だ。

[図表7]社員の兼業・副業に関する方針(全体)
社員の兼業・副業を「禁止している」理由の最多は「労働時間の管理が困難」
社員の兼業・副業を「禁止している」理由は「社員の労働時間の管理が困難」(53%)、「社員の長時間労働の助長につながる」(39%)、「労働災害時の原因の区別がつきにくい」(37%)となっており、社員を管理できないということだ。「情報漏洩のリスク」(36%)と「競合に雇用され利益相反となるリスクがある」(28%)はビジネスにデメリットをもたらす可能性を指している。

フリーコメントでは、賛成派と反対派がハッキリしている。まずセキュリティ面からの反対派の意見。
・「セキュリティ産業なので、情報漏えいは絶対に許されない産業です」(サービス、1001名以上)
・「B to Bの仕事で守秘義務もあり、他社での就業を容認するようなことは難しい」(サービス、300名以下)

制度を含めて環境が熟していないという意見もある。
・「働き方改革のひとつの考えとして理解はできるが、本業が疎かになる。ワークライフバランスと言っているのに労働時間が増えるなど、矛盾も感じられる」(メーカー、1001名以上)
・「健康保険制度などが兼業に対応しているとは言い難い。兼業時の労働災害時の原因と共にそのサポートについての考え方や制度が確立してくると実施に前向きになれるのでは」(メーカー、1001名以上)

一方、兼業・副業を容認する意見は、高齢社会、労働人口の減少などを考慮して賛成しているものか多い。
・「定年後の働き方として、60才以降の契約社員については兼業・副業を認めている」(情報・通信、1001名以上)
・「方向性は賛成。一つの会社で一生を終える時代ではない。自分の能力や可能性を多方面で活かす事が結果的に社会貢献につながる。しかし、実際の運用面では難しいところも多い。フルタイム勤務の中で、副業を行うと土日や夜などの時間を使うことになる。その場合、健康面の不安もつきまとう。自分の能力向上と、健康管理をどのように両立するかを更に検討する必要があるのではないか?」(商社・流通、1001名以上)
・「労働人口の減少への対応や所謂働き方改革の推進のためには必要な施策だと考える」(情報・通信、301〜1000名)

安倍政権の「一億層活躍社会」実現のための「人づくり革命」で有識者の一人として専任されたリンダ・グラットン氏が提唱する「100年時代人生戦略」においては、自分を「リ・クリエーション=再創造」していくことが重要とされる。終身雇用社会から人材流動性のある社会へと移行するにあたっては、兼業・副業も容認されていく方向になるだろう。一方で、労働時間の管理や長時間労働の削減が唱えられるなかでは、兼業・副業による長時間労働化が懸念され、人事担当者を悩ませることになる。兼業・副業への対策も含めて、企業にとっても、労働者にとっても有益になるような新しい働き方を模索していくことになるだろう。

[図表8]社員の兼業・副業を「禁止している」理由
【調査概要】
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2017年5月10日〜5月17日
有効回答:212件(1,001名以上:25%、301〜1,000名:26%、300名以下:48%)

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