HR総研では、2015年11月25日~11月27日に、会員の人事採用担当者を対象に、「2017年新卒採用スケジュールに関する緊急アンケート」を実施した。
前回に引き続き、採用担当者が2017年卒採用をどう戦おうとしているのかを見てみたい。

▼「2017年新卒採用戦略策定のための2016年新卒採用徹底解剖CD-ROM」
お申し込みはこちら

目立つのは「インターンシップ」と「大学対策」と「ダイレクトリクルーティング」

2017年卒採用に向けて新しくはじめようとしていることをフリーコメントで回答してもらったので、抜粋して紹介しよう。

・仕事体験セミナー(インターンシップの一種)。(1001名以上、サービス)
・インターンシップの導入。(301~1000名、サービス)
・インターンシッププログラムの充実と実施。(301~1000名、サービス)
・スケジュール等については、2015年以前のまま2016年も活動しましたので、今後も変更しないと思います。インターンシップの受け入れはますます強化しようと考えています。(301~1000名、メーカー)
・インターンシップの強化、卒業生のいるゼミ・担当教授との関係強化。(301~1000名、メーカー)
・1dayインターンシップ。(301~1000名、情報・通信)
・インターンシップの実施と、採用業務への若手社員人員導入。(301~1000名、マスコミ・コンサル)
・インターンシップ(冬季、ワンデイ)。(300名以下、情報・通信)
・ダイレクトリクルーティング手法の導入。(301~1000名、メーカー/サービス)
・SNSやダイレクトリクルーティングなどの新しい手法は取り入れたい。(300名以下、メーカー)
・会社見学ではない、本当の意味でのインターン・就業体験を実施予定。(300名以下、メーカー)
・ナビサイトを通さない採用活動。(300名以下、商社・流通)
・リクルーターの活用による学校別の説明会、工場見学、により注力していきたい。(1001名以上、メーカー)
・広報開始から選考開始の短縮化により、採用活動そのものが短期決戦になるため、土日の選考もせざるを得ない可能性がある。(1001名以上、メーカー)
・大学との関係構築を今まで以上に進めること。(1001名以上、メーカー)
・大学への挨拶まわり、大学就職課・教授との関係強化。(300名以下、メーカー)
・新しくはないが、学校に出向いての採用活動の比率を上げていく。(300名以下、情報・通信)
・2月以前の学生との接点構築。(1001名以上、情報・通信)
・母集団確保のため、会社説明会を選考上のMUST条件とすることをやめようか検討中。(301~1000名、サービス)
・ナビエントリー者へすべて直接電話連絡する。(301~1000名、サービス)
・既卒者も対象に含めたルクルーティング広報活動の推進。(301~1000名、メーカー)
・webセミナー、地方採用。(301~1000名、金融)
・地域拡大。(300名以下、サービス)
・体育会系学生への接触を増やす。(300名以下、商社・流通)

最も目立ったのは、「インターンシップ」。新しく始める企業もあれば、これまでも実施していたが内容や回数を強化するという企業もある。「冬季」という言葉を使用している企業があるように、今年は昨年以上に「1月・2月」にインターンシップを実施する企業が多くなる見込みだ。「8月・9月」のサマーインターンシップの時期に2016卒採用の活動を継続していたために、サマーインターンシップの実施をあきらめてウインターインターンシップに切り替えた企業もあるだろうが、3月解禁前に接触しておかないことには出遅れてしまうと考え、今年から実施する企業も少なくない。サマーインターンシップと比べると、「1Day」タイプのインターンシップが多くなっているようだ。もともと「2月」は2015年卒採用までは個別セミナー開催のピーク時期でもあり、従来のセミナーを少しだけ内容を変形して名称をインターンシップにしただけのようなものまでありそうである。

そのほかに目立つのが「ダイレクトリクルーティング」である。「ダイレクトリクルーティング」とは、就職ナビや合同セミナー、新卒紹介等に依存するのではなく、採用担当者(企業)が能動的に採用活動を展開する手法である。社員や内定者による紹介制度や、SEOを施して自社ホームページからの応募を増やすことやSNSの活用なども含まれるが、最近増えてきているのが、「逆求人型サイト」の活用だ。これは、学生からの応募を待つのではなく、学生が登録しているエントリーシート内容を検索して、自社に合いそうな学生に対して、企業側から個別にオファーを出すというものである。
 従来のメールDMとの違いは、大学や学部といったコード化された条件にマッチした学生に一斉に同一文面のメールを送るのではなく、エントリーシートの内容を吟味して、それぞれの学生に即したメッセージを一人ずつ個別に送ることで、マッチング度を高めている点にある。大量の返信が期待できるわけではないが、もともとが採用ターゲットになりえる学生にだけオファーを出しているため、反応者のミスマッチ度は極めて低い。オファーを出す手間はかかるものの、返信者(エントリー者)の選考通過率は一般の就職ナビの数字とは比べ物にならない。
 2017年卒採用は16年卒採用以上に企業側の求人意欲は高く、採用難易度はさらに高まることが必至である。新しい採用手法として研究してみる手は大いにありそうである。

「大学ルート」も引き続き根強い。ターゲット大学を設定して、学内企業セミナーやキャリアセンターとの個別相談による母集団形成をねらうものである。こちらもやみくもにプレエントリー数を追うのではなく、あくまでもターゲット大学の母集団形成、ひいては選考通過率の高そうな母集団形成を狙っているといえる。
 プレエントリー総数の増減で一喜一憂していた時代は過ぎ、プレエントリー者の内容(大学・専攻・志向など)や選考通過率の高さ、選考効率重視の時代に変わった来た。より多くの応募者から選抜すればそれだけ優秀な学生が採用できるという考え方ではなく、もともとセグメントされた応募者と密度の濃いコミュニケーション活動を通じて、よりミスマッチの少ない採用活動を展開していこうというものである。

今回の対応には賛否両論あるものの、共通しているのは「学生目線の欠如」

最後に、就職問題懇談会や文科省、経団連のこれまでの動きに対する意見もフリーコメントで寄せられているので、こちらも紹介しておこう。

・どうか学生や企業の声をもっと聞き入れてください!と言いたいです。(1001名以上、サービス)
・年度のスケジュールをいじくっても、学生と企業が混乱するばかり。大学のなかで、より早い段階から就職を意識させるような取り組み(インターンシップの単位認定化など)を積極的に進めていくべき。大企業中心の就職活動から学生が早く抜け出せるような誘導が必要。(1001名以上、サービス)
・あまりにも、学校サイド(学生サイド)の意向を無視した政策だったと思います。(1001名以上、メーカー)
・ひとつの「枠」から出れず、狭い範囲の中で何とか折り合えるポイントを探しているにすぎない。抜本的に見直すため、ゼロベースでの議論を期待する。(1001名以上、メーカー)
・憲章や指針では、守らない企業が出てきた場合、同じことの繰り返しになる。ある程度強制力のある決まりにしないと変わらないと思う。(1001名以上、メーカー)
・毎年変更にするのではなく、8月選考開始で3年程度は続けてほしかった。(1001名以上、メーカー)
・ころころ変えすぎで、まったく学生を見ていない大人だと思う。採用の現場に本当に来たことがあるのだろうかはなはだ疑問。(1001名以上、情報・通信)
・2018年度新卒採用の方針を早めに確定させ、リリースして欲しい。(301~1000名、サービス)
・8月選考解禁の変更は迅速であったと評価できる。(301~1000名、サービス)
・採用スケジュールについては、過去に何度も失敗しているにもかかわらず、同じことを繰り返しているので、今回の反省を踏まえ、とにかく学生にとって負担とならないような仕組みを考えてほしいです。(301~1000名、メーカー)
・経団連の発想(活動開始時期の統一)そのものが、自分たちの会社の力、ひいては「国の力(経済力だけでなく)」を弱めていることに、早く気づくべき。(301~1000名、メーカー)
・大学側も、学生の授業への影響云々といわれるが、授業そのものに魅力がないのだからしかたがない。逆に、早期に就職を決め、残りの期間をがくぎょに打ち込んだほうがよい。(301~1000名、商社・流通)
・政治家が就活に口をはさむべきではない。(301~1000名、金融)
・日程うんぬんより、採用選考の中身についての意思統一を図っていただきたい。例えば、統一した企業情報の開示ツールなどがあればと感じる。(300名以下、サービス)
・学生の就職活動、企業の採用活動の固定化した文化を打破しようという姿勢がない。(300名以下、メーカー)
・そもそも大学が単なる就職予備校化していることが問題なのであって、留学がどうだ、学業がどうだ、というのはさして意味をなさない。経団連も政府からの要請とはいえ、意味がないことは分かっていたので、無能と言わざるを得ない。(300名以下、メーカー)
・一昨年までのルールの本当の問題点は何なのかをしっかりと見極めるべき。(300名以下、メーカー)
・早期の見直しは評価できるが、3月広報解禁を動かせなかったことは評価できない。(300名以下、商社・流通)

さて、皆さんはどんな意見?

【調査概要】

■調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
■調査時期:2015年11月25日~11月27日
■調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
■調査方法:WEBアンケート
■回答者数:138名(1001名以上 25名/301~1000名 47名/300名以下 66名)

  • 1