ハラスメント対応の仕組はこう作る!

財務省の不祥事はとどまるところを知らない様相を呈している。特に、財務事務次官のセクシャル・ハラスメント及びこれにまつわる財務省の組織や構成員の非常識極まりない対応には、ただただ驚くばかりである。全くといっていいほど、セクシャル・ハラスメントの本質がわかっていない。今回は、この財務省のセクシャル・ハラスメントへの対応を反面教師として、ハラスメント全般にわたって必要となる、企業のマネジメント対応を考えてみよう。

ハラスメント対応の仕組づくり

最近になって、顧問先からハラスメントに関する相談が増えてきた。相談といっても、「〜〜のようなハラスメントが起こったみたいで、被害者が精神疾患を発症し、休職させました。今後どうしたらいいですか?」のように対症療法をとらざるを得ない相談であることが多い。後からの対応もしようがないわけではないが、ハラスメントが抱える問題点を十分に理解し、予め社内の体制や仕組を作っておけば、予防的リスクヘッジが有効に機能する。

ハラスメントを防ぐための枠組は、ざっくりと分ければ、@経営者の方針表明、A相談窓口の設置、B調査体制の整備、C処分措置、D是正措置・再発防止対策、となろう。これらを一つひとつ解説してみる。

@経営者の方針表明
経営トップが、ハラスメントに対して断固たる姿勢を表明することは、何をおいても必須である。社内外を問わず、どのようなスタンスで臨むのかを具体的に表明しなければならない。過去のハラスメントに目をつぶってきた企業も、役員そのものがハラスメント行為に及んでいた企業も、この経営者の方針表明と、社員研修等の具体的な対策との組み合わせを「大義」として、真剣に取り組まなければならない。

A相談窓口の設置
相談窓口の設置にあたっては、通報者の秘匿や不利益取扱の禁止といった「通報しても会社が守ってくれる」という環境整備が最も大切である。理想的には、監査役や社外取締役など経営にかかわりを持ちながらも、一般の経営陣からは独立しているような窓口が望ましいだろう。社外の相談窓口を検討する場合、顧問弁護士などは、利益相反の観点から、避けた方が無難である。また、社内の一定の部署に窓口を設置せざるを得ない場合は、事前に社員との意思疎通や信頼関係を具体的に醸成するとともに、セクシャル・ハラスメントを想定し、男女各1名を相談員として配置すべきである。

B調査体制の整備
通報があった場合の調査を担当する部署には、独立性を持たせ、独自の権限で調査させることが重要である。その前提として「社内調査協力規程」等を整備し、全社的に社員の調査への協力を義務づけることが必要となる。もちろん、調査に応じたことで不利益な取扱があってはならない。なお、調査は、被害者・加害者・第三者への予断を排除した、客観的な事実調査でなくてはならない。

C処分措置
事実調査が終了したら、企業の就業規則に基づく懲戒等の処分を検討しなければならない。それなりの企業等であれば「懲罰委員会」等が設置されているだろうから、そこで最終的な事実認定と懲戒処分を決定することになる。仮に、事実調査でハラスメントが認定された場合は、躊躇なく懲戒処分しなければならない。闇に葬るようなことがあれば、社内の風通しは一気に悪化することになるだろう。

D是正措置・再発防止対策
処分措置を行うと同時に取り組まなければならないのが、是正措置や再発防止策の社内への周知である。特に通報者や関係者には、丁寧にフィードバックしなければならない。またそれには具体性、迅速性も求められる。そうすることで、通報者のモチベーションや社員の企業へのロイヤリティが高まる。

もちろん、@〜Dの対応をとることと並行して、役員はもとより管理職や一般社員へのハラスメント理解のための研修会などを、定期的に実施していくことも必須である。組織に属する全員に意識づけを行わなければ、こうした仕組も画餅に帰してしまう。

最後に

以上のようなハラスメント対策を整備・実践することは、ガバナンスの問題としても各方面から注目を集めている。また、企業のCSRとしても、その価値を高めることができよう。今回、財務省がいい素材を提供してくれたからかどうかは分からないが、近年、管理職向けのハラスメント研修やコンプライアンス研修を請け負うことも多くなってきた。それだけ、企業のリスク感覚が鋭敏になってきていることの証左だろう。企業はハラスメントを軽んずることなく、大げさに言えば経営戦略としてこの問題を認識しなければならない。


株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP(R) 大曲義典

著者プロフィール

HRプロ編集部

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