Indeed Japan株式会社は2023年6月22日、「LGBTQ+の従業員を支援する企業の取り組みに関する調査」の結果を発表した。調査期間は2023年4月28日~5月12日で、全国の20~50代までの会社・団体の経営者、役員、会社員62,325名(うち人事に携わる人500名)から回答を得た。本調査から、LGBTQ+(性的マイノリティ)の従業員に対する、企業の支援策推進の現状や課題が明らかとなった。
「LGBTQ+」の従業員への支援実施企業はおよそ4社に1社にとどまる。取り組む企業では従業員満足度が高い傾向も

「LGBTQ+の従業員への支援策」を行う企業は4分の1。中小企業は2割に満たず

近年、ダイバーシティ(多様性)を推進する施策の一つとして、「LGBTQ+当事者への支援」に取り組む企業が増えつつある。企業が多様な人材を活用するためにはLGBTQ+の従業員への支援策の現状と課題感を明らかにする必要があるが、その実態はどうなのだろうか。

まずIndeed Japanは、企業で人事・人材採用業務に就く20~50代の人を対象に、「自社での社会的マイノリティの従業員に対する制度や福利厚生・環境づくりに関する取り組み(ダイバーシティを推進する取り組み)の実施状況」を調べた。調査の結果、「女性」(63.6%)や「子どもをもつ人」(60.4%)への取り組みはそれぞれ6割を超えた。また、「障がいのある人」(49.9%)、「外国籍の人」(40.4%)に対しても、ともに4割以上の企業が実施していることがわかった。対して、「LGBTQ+の従業員に対する取り組み」は24.2%で最下位となり、4社中1社にとどまった。

「LGBTQ+の従業員に対する取り組み度合い」を企業規模別に見ると、大企業(従業員数
1,000名以上)は39%であったのに対し、中小企業(2~999名)は18%と、2割以下だった。

あわせて、「事業や社会的な取り組みとして、対外的に社会的マイノリティへの支援を行っているかどうか」を尋ねたところ、「LGBTQ+に対する対外的な取り組み」は約3割となり、「社内の従業員を支援する取り組み」よりも実施率が高いことがわかった。この結果から、社内でのLGBTQ+の従業員を支援する取り組みは、未だ広がっていないことがうかがえる。
「LGBTQ+」の従業員への支援実施企業はおよそ4社に1社にとどまる。取り組む企業では従業員満足度が高い傾向も

4割が「面接時に差別的な発言をしない」とした一方、求人票等への明記は2割未満

次に同社は、「直近1年でいずれかの雇用形態で人材採用を行い、かつLGBTQ+の従業員に対して取り組みを行っている」と回答した人(265名)を対象に、「採用段階における取り組み内容」を尋ねた。その結果、「面接や応募者とのやりとりにおいて、LGBTQ+への差別的な発言をしないようにしている」が40.8%と最多だった。

一方、「社外へ向けて取り組み内容の情報発信を行っている」と答えた企業の割合を見ると、「企業サイトにLGBTQ+の従業員への取り組みの有無を掲載している」と答えた企業は全体でわずか23%だった。企業規模別では、大企業の30.6%に対し、中小企業では15.3%と差が顕著で、2倍の開きがあった。

また、「求人票にLGBTQ+の従業員に関する制度や福利厚生の内容を記載している」とした企業は20.4%にとどまった。これを受け同社は、「企業サイトや求人票に情報を記載している割合は少なく、LGBTQ+当事者の仕事探しをより難しくしている可能性がある」との見解を示している。
「LGBTQ+」の従業員への支援実施企業はおよそ4社に1社にとどまる。取り組む企業では従業員満足度が高い傾向も

トランスジェンダー従業員に対し取り組みを行う企業は約2割。中小企業は特に少なく

次いで同社は、「LGBTQ+に関する取り組みを行っている」とした企業を対象に、「勤務先で、(採用段階に限らず)日ごろ実施していること」について尋ねた。すると、「トランスジェンダーの従業員に対する取り組み」のうち、「更衣室やトイレなどに関するトランスジェンダーの従業員への配慮を行っている(本人の望むトイレや更衣室の使用、健康診断における個別対応など)」は22.1%だった。「トランスジェンダーの性別移行をサポートする制度がある(長期休暇や有給休暇がとれるなど)」については、全体が21%だったのに対し、大企業が27.1%、中小企業は14.9%で、実施率に大きな差が開いた。

また、「アライ(当事者ではないが、当事者のことを理解・共感し支援する人)」が参加できる取り組みはさらに少なく、「アライであることを表明する制度がある」は17.8%、「LGBTQ+当事者やアライの社員が交流できるコミュニティグループがある」は15.3%だった。この結果から、企業においてトランスジェンダーの従業員に対する職場の設備や制度導入、LGBTQ+当事者が働きやすい環境をつくる上で重要な、アライの従業員が参加できる取り組みは、あまり進んでいないと考えられる。

対して、取り組みを実施していない企業に「取り組んでいない理由や障壁」を聞いたところ、大企業では「何かしらの取り組みをしたいが、何から始めてよいかわからない」が約3割で最も多く、中小企業の約1.3倍だったという。また、中小企業では2割強が「LGBTQ+支援に関心のある社員がどれくらいいるかわからない」と回答し、最多だったとのことだ。
「LGBTQ+」の従業員への支援実施企業はおよそ4社に1社にとどまる。取り組む企業では従業員満足度が高い傾向も

取り組み実施企業の約7割が「従業員の平均勤続年数が長い/伸びている」と回答

続いて、LGBTQ+に関する取り組みを実施している企業に対し、「自社の特徴」について質問した。すると、「平均勤続年数が長い/伸びている」がトップの70.1%で、実施していない企業(47.5%)の約1.5倍だった。

取り組み実施企業と未実施企業で最も差異が生じたのは「ダイバーシティ(多様性)が担保されている」で、未実施企業の32.9%に対して、取り組み実施企業は66.2%と、約2倍だった。次いで差異が生じたのは「お互いを認め合う/尊重し合う風土がある」で、実施企業は未実施企業の約1.6倍だった。このことから同社は、「LGBTQ+の従業員に対し取り組んでいる企業は、ダイバーシティのある企業文化が醸成され、当事者のみならず誰もが働きやすい環境が整備されている」との見解を示している。
「LGBTQ+」の従業員への支援実施企業はおよそ4社に1社にとどまる。取り組む企業では従業員満足度が高い傾向も

取り組みによる変化は「SOGIハラスメントが減少」が最多。都市圏外企業の実感が顕著

次に、「取り組みによる勤め先での変化」について尋ねると、取り組み企業全体では「SOGI(性自認・性的指向)ハラスメントが減少した」が27.4%でトップだった。エリア別に見ると、都市圏外の企業が37.5%、都市圏の企業(一都三県・愛知・大阪・福岡)が22.8%と、都市圏外の企業は都市圏の企業の約1.6倍だった。

また、「従業員の職場環境に対する満足度が上がった」の項目では全体が13.9%だったのに対し、都市圏外が25%、都市圏が8.8%と、同じく約2.8倍の差があることがわかった。このことから、地方企業のほうが都市圏の企業より、取り組みによる変化を顕著に実感しているとうかがえる。
「LGBTQ+」の従業員への支援実施企業はおよそ4社に1社にとどまる。取り組む企業では従業員満足度が高い傾向も

「LGBTQ+を理解するための研修」が必要な支援の1位に

さらに同社は、人事担当者を対象に、「勤め先で取り組みを実施するにあたり必要な支援」について聞いた。すると、「LGBTQ+について理解するための研修がある」が約3割、「具体的な取り組みの方法や進め方が分かる教材などがある」が2割強だったという。

あわせて、「取り組みを実施していない」企業にも同様の質問をしたところ、大企業は「経営陣がLGBTQ+について理解を深めることができるイベントやセミナー」(34.5%)が上位に挙がり、中小企業(18%)の約1.9倍だった。大企業においては、「経営陣の理解が重要である」と考える傾向があるようだ。
「LGBTQ+」の従業員への支援実施企業はおよそ4社に1社にとどまる。取り組む企業では従業員満足度が高い傾向も
本調査結果から、LGBTQ+の従業員の支援に取り組む企業は全体の4分の1程度で、中小企業は大企業の半数未満にとどまることがわかった。また、実施企業においては従業員満足度が高い傾向にあり、特に地方企業においてその傾向が顕著である実態も明らかとなった。人材不足が企業の重要課題である昨今、LGBTQ+の従業員への支援を推進し多様な人材を活かすことが、企業の成長につながるだろう。

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