「70歳までの就業機会確保」がシニアと若手にもたらす影響は? 定年後再雇用時の年収は平均4割減、職務は変化なしが最多

株式会社パーソル総合研究所は2021年5月28日、シニア人材の就業実態および意識に関する調査結果を発表した。調査期間は2021年1月6日〜12日で、全国の企業に勤務する男女6,000名(50〜60代のシニア従業員3,000名、20〜40代の若手従業員3,000名)から回答を得た。これにより、シニア向けの人事施策の実態や、若年従業員への影響などが明らかになった。

約9割の定年後再雇用者は「年収が下がった」と回答

70歳まで就業する時代を迎えたいま、シニア人材の年収や職務の実態はどのようになっているのだろうか。

まず「定年後再雇用による年収の変化」を尋ねたところ、「定年前とほとんど変わらない」が8%、「定年前より上がった」は2.2%で、残りの約9割は「年収が下がった」と回答した。内訳をみると、「50%程度下がった」(22.5%)、「50%より下がった」(27.6%)となり、合わせて5割は年収が半減。全体平均は「44.3%低下」という結果だった。一方、再雇用者に「職務の変化」について尋ねると、過半数以上は「ほぼ同様である」と回答した。「同一労働同一賃金」やモチベーションの維持の観点では、問題があると言える結果だ。
定年後再雇用者の年収・職務の変化

シニア人材の処遇に抱く「不公平感」とは?

続いて「シニア人材が得ている給料や評価についてどう考えているか」を全ての年代に尋ね、「私の会社では、シニア社員が給料を貰いすぎていると思う」および、「私の会社では、シニア社員が成果以上に評価されていると思う」という質問に対し、「とてもそう思う」もしくは「そう思う」の合計値をまとめた。すると、20代ではいずれの質問も約3割が同意しており、不公平感を抱いていることが判明。特に、若い年代ほどその傾向が強くなった。
自社のシニア人材に抱く不公平感

シニア人材の働き方が若手社員の離職に影響していることが判明

また、「シニア人材の働き方が職場に与える影響」を探るべく、「シニア人材の仕事の不透明さと疎外状況の有無」と「若手社員の転職意向」の関係性を調べた。

シニア人材がどのような業務を行っているかわからないという「不透明さがある職場」では、「転職意向あり」は47%だった。一方、「不透明さがない職場」では、「転職意向あり」は21.5%にとどまり、25.5ポイントの差がついた。

また、シニア人材が「疎外された状況にある職場」では、20〜40代の「転職意向あり」が48.9%だったのに対し、「ない職場」では22.8%と、26.1ポイントの差があった。シニア人材の働き方は、若手社員の離職にも影響していると推察できる。
シニア人材の働き方が若手従業員に与える影響

約8割のシニア人材が「教育・研修が不十分」と回答

次に、「シニア人材向けの教育・研修の実施」について尋ねた。すると、「実施されており、充実している」は19.5%と約2割にとどまり、「実施されていない」が50.7%、「実施されているが、充実していない」が29.8%だった。シニア人材の就業環境の変化に伴う教育・研修は、「職務との適合性」や「モチベーション」の観点でも重要と言えるが、現状は十分に行われていないようだ。
シニア人材向けの教育・研修の実態

「70歳まで働きたい」というシニア人材は約8割

最後に、「いつまで働き続けたいか」を50代と60代に尋ねたところ、50代は「〜60歳」が28.3%、「61〜65歳」と「66〜69歳」の合計が40.8%、「70歳」が13%となった。60代では「〜69歳」が54.1%、「70歳」が28.3%で、60代の方が「より高い年齢まで働きたい」という傾向だった。

さらに、「71歳以上働けるまで」はいずれの年代も1割強だった。「70歳までの就業機会確保」を行うことで、50代と60代の回答者の9割弱のニーズが満たされることがわかった。
50代・60代が働き続けたい年齢
シニア人材活用の課題解消には、「定年後再雇用時の賃金見直し」や「教育・研修の充実」など、従業員のモチベーションを上げる工夫が有効になりそうだ。「高年齢者雇用安定法」の改正で掲げられた「70歳就業機会確保の努力義務」に対応するため、自社でもできることがないか、人事制度や施策全体を見直してみてはいかがだろうか。