リクルートホールディングスの研究機関・リクルートワークス研究所が4月24日、2015年3月卒業予定者の大卒求人倍率を発表した。
発表によると、2015年3月卒業予定の大卒求人倍率は1.61倍。前年の1.28倍より大幅に上昇した。全国の民間企業の求人総数は、前年の54.4万人から68.3万人へと13.9万人増加した(対前年+25.6%)。一方、学生の民間企業就職希望者数は、前年の42.6万人とほぼ同じ42.3万人だった(対前年-0.6%)。
大卒求人倍率上昇で浮かれてはならない

 こうした数字だけを見ると、景気回復で就活が楽になったように感じるが、実態はそんないに簡単ではない。
 求人倍率が上昇したのは中小企業の求人数が大幅に改善したからだ。従業員300人未満の企業の求人総数は前年に比べて11.7万人(+44.5%)も増加した。このため、300人未満企業の大卒求人倍率は4.52倍と、前年の3.26倍から1.26ポイントも伸びた。

 しかし、従業員5000人以上の企業の求人総数は、前年に比べてわずか0.2万人(+5.0%)しか増えていない。5000人以上の企業の大卒求人倍数は0.55倍と昨年並み(0.54倍)だ。
 「大企業は景気変動よって採用数を大幅に変更したりしない」(リクルートワークス研究所・戸田淳仁研究員)。過去に景気動向に合わせた採用をしたため、人員構成がゆがんで社業に悪影響を与えた反省から、大企業は採用人数を大幅に変更しないのだ。

 一方、「中小企業はここ数年採用を抑制していたが、ここにきてアクセルを踏んだ」(リクルートワークス研究所・豊田義博主幹研究員)。
 また、業種別に見ると求人倍率が高いのは、学生人気の低い建設業(5.61倍)、流通業(5.49倍)であり、学生人気の高い金融業は0.22倍と1倍を大きく割り込んでいる。

 要するに大手企業または金融業は依然として高嶺の花なのだ。
 ワークス研究所は現在の状況が、2006年3月卒の求人倍率が1.60倍になった時と似ていると言う。当時は1.3倍台が4年続いた後に、1.6倍にはね上がった。今回は1.2倍台が4年続いた後に1.6倍台にはね上がったというわけだ。
 ワークス研究所が指摘するように、現在の状況が2006年3月卒に似ているならば、今後さらに求人倍率は上昇していくことになる。多くの企業が採用に苦労しているのを見ると、確かにそうなると予想できる。しかし、人気企業に入社するのが簡単になることはない。2016年3月卒の学生やキャリアセンター関係者は求人倍率の高さだけを見て安心してはならない。


東洋経済HRオンライン編集長 田宮寛之

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