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「KPI(重要業績評価指標)」とは
「KPI」とは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では、「重要業績評価指標」を意味する。目標達成に至るまでの中間プロセスにおける達成度を評価する指標で、中間目標と言い換えても良いだろう。「KPI」を用いて目標への達成状況を評価・分析することで、組織のパフォーマンスを把握できる。もし、計画とのギャップが大きいようであれば、何らかの施策を講じて目標達成にもつなげていける。「KPI」と関連する用語に、「KGI」や「KSF」「OKR」などがある。それぞれどう違うのかを見ていこう。
●「KGI」との違い
「KGI」とは「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」、「経営目標達成指標」を指す。いずれも、ビジネスで達成すべき最終目標(ゴール)を数値で指標化したものと言い換えられる。一方、「KPI」は「KGI」の達成に向けたプロセスを計画的に管理する評価指数を意味する。「KPI」の達成が「KGI」に直結するよう、逆算して設定するようにしたい。●「KSF」との違い
「KFS」は「Key Factor for Success」の略となる。日本語では、「重要成功要因」を意味する。ポイントは、目標を達成するための「指標」ではなく「条件」や「要因」であることだ。同様の意味の用語として、「CSF(Critical Success Factor)」がある。「KFS」を指標に落とし込んだものが「KPI」となる。
●「OKR」との違い
「OKR」とは「Objectives and Key Results」の略だ。日本語では、「目標と主要な成果」と訳され、最終的な目標の達成に向けて求められるさまざまな結果を設けて、その進捗を管理する手法を言う。米国のGoogle社やOracle社が導入したことで、一躍有名となった。OKRの主たる目的は、組織や個人の生産性向上だ。そのため「KPI」が目標の100%達成を目的とするのに対し、OKRは60~70%の達成率を目指す目標を定めることが一般的である。「OKR」の意味や特徴とは? 企業事例やMBO、KPIとの違いなどを解説

「KPI」の具体例
次に、「KPI」の具体例を職種別、業種別に見ていこう。●職種別の「KPI」例
「KPI」は目標達成に向けたプロセスを管理するための指標なので、職種によってさまざまな項目が想定される。例えば、営業部門では「KPI」として商談数や受注率、テレアポ数、アポイント獲得率、新規顧客商談数などの指標が設定される。それらの「KPI」を確認していくことで、大目標(KGI)となる「売上」や「受注数」を達成しやすくなる。例えば、以下のようなものがある。
・採用:採用人数、採用充足率、選考応募者数、内定承諾率
・人員配置:管理者比率、年齢比率、配置への従業員満足度
・労務管理:平均残業時間、有給休暇消化率、産休休暇利用率、コンプライアンス違反件数
・エンゲージメント:定着率、離職率、従業員満足度、エンゲージメントスコア
・人材育成:研修実施数、研修受講者数、研修の満足度
【営業のKPI例】
売上、アポイント件数、受注率、成約率、平均受注単価、リピート率
【マーケティングのKPI例】
新規顧客獲得数、顧客満足度、リピート率、ページセッション数、広告インプレッション数、広告CTR、広告コンバージョン率、サイトユーザー数
【システム開発のKPI例】
エラー件数、標準化率、プロダクト改善数、テスト終了件数
【財務のKPI例】
ROE(自己資本利益率)、ROA(総資本利益率)、当座比率、固定比率、負債資本比率、純利益、当座比率、純売上高、従業員一人当たりの経費
●業種別の「KPI」例
「KPI」は業種によって大きく異なってくる。それぞれの特性に合わせて、「KPI」を設定し業務プロセスの改善につなげていく必要がある。例えば、製造業では労働生産性・総合設備効率・製造リードタイム・稼働率・不良数・不良率・歩留まり率・製造原価率・事故(ヒヤリハット)発生件数・クレーム件数などの指標が設定されることが多い。
稼働率、総合設備効率、ライン編成効率、不良率、ヒヤリハット(事故)発見件数
【物流・配送業のKPI例】
配送時間遵守率、貨物積載効率、燃費効率、配送コスト、返品・誤配送率
【不動産業のKPI】
媒介契約取得数、物件案内数、チラシ配布数、物件掲載数
【小売業のKPI例】
来店客数、購買率、平均客単価、商品回転率、一坪あたり売上高
【飲食業のKPI例】
顧客回転率、原価率、FL比率(材料費と人件費の比率)、リピーター率、口コミ評価指数
【宿泊業のKPI例】
客室稼働率、RevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益)、平均客室単価、顧客満足度スコア:宿泊客の評価平均値、リピート予約率
【Saas事業のKPI例】
MRR(月次経常収益)、チャーンレート(契約解除率)、LTV(顧客生涯価値)、CAC(顧客獲得コスト)、NPS(顧客推奨度指数)
「KPI」の設定方法
次に、「KPI」の設定方法について説明したい。「KPI」を設定するには、以下の手順で行っていく。(1)KGIの設定
(2)KGIの細分化とKSFの洗い出し
(3)KSFを基にしたKPIの設定
(1)KGIの設定
「KPI」を設定するには、前提となる「KGI」を設定しなければいけない。その際には、達成の期限をクリアにして、現実的でしかも具体的な数値目標を設けることが重要だ。(2)KGIの細分化とKSFの洗い出し
「KGI」を設定したら、それを達成するためのプロセスとしてKFS(重要成功要因)を洗い出そう。フレームワークとしては、「3C分析」、「5F分析」、「PEST分析」、「バリューチェーン分析」、「SWOT分析」などが挙げられる。それらを活用して、「KGI」を達成するための成功要因を多角的に洗い出していこう。【図解で解説】SWOT分析とは? やり方や企業の分析例を解説
(3)KSFを基にしたKPIの設定
選別した「KFS」に基づいて、適切な数値目標を設定し「KPI」とする。その際には、「KPI」をできるだけ細分化し、行動を起こしやすくすることが重要だ。「KPI」設定のためのフレームワーク
次に、「KPI」を設定するための代表的なフレームワークを紹介したい。●SMARTの法則
まずは、「SMARTの法則」だ。「Specific(具体的な)」、「Measurable(測定可能な)」、「Achievable(達成可能な)」、「Relevant(関連した)」、「Time-bound(期限が明確な)」という5つの観点を用いて目標を設定することで、達成までの精度が高まる。・Measurable:「計測可能な、数字になっている」
・Achievable:「達成可能な、同意して」
・Relevant:関連した、「適切な」
・Time-bound:「期限が明確な、期限を定めた」
●KPIツリー
KPIツリーとは、「KGI」の達成に必要な「KPI」を設定し、ツリー状に可視化した図だ。これを作成することで、「優先的に取り組むべき課題が共有できる」、「組織目標に対する共通認識を得られる」、「重複や漏れを防げる」などのメリットが得られる。達成状況を定点観測する際にも、未達成につながりかねないボトルネックを発見しやすくなる。
「KPI」を設定・管理するメリット
ここでは、「KPI」を設定・管理するメリットを提示したい。●行動指針が明確になる
「KPI」を設定すると、目標を定量的に把握できる。それだけに、組織や個人が採るべきアクションが明確化される。また、進捗ぶりを数値で客観的に判断できるので、必要なタイミングで行動改善や軌道の修正も行いやすい。●プロセスを可視化・共有できる
「KPI」と「KGI」のつながりが明確であると、ゴールへのロードマップが可視化され、組織間でのプロセスを共有しやすくなる。自ずと、組織としてどんなアクションをすべきが見える化できるので、何か問題が発生してもフォローしやすい。●公平な評価基準ができる
「KPI」は人事評価の基準にもなり得る。なぜなら、定量的かつ客観的な数値で個人のパフォーマンスを検証できるので、誰が見ても公平で納得感のある評価をしやすいからだ。また、評価基準が定量化されるので、“評価する側”であるマネジメント層からしてみると、業務負荷の軽減も期待できる。●目標達成への心理的ハードルが下がる
数年スパンで目指す最終目標を追うよりも、直近の中間目標の方が、従業員にとっては関心が高い。それらを着実に成し遂げていけば、最終目標に到達できると考えることで心理的なハードルも低くなるはずだ。●PDCAサイクルを素早く回すことができる
「KPI」を継続的に測定・監視し、業務の振り返りや改善活動を行うことで、PDCAサイクルを迅速かつ円滑に回すことができる。何らかの理由で、「KPI」の数値と実績に大きなギャップが生じた場合は、「KPI」を設定し直したり、日々の業務そのものを見直したりする必要が出てくる。「KPI」の設定・運用のポイント
「KPI」を効果的に機能していくためには、幾つかのポイントがある。それらを整理したい。●シンプルで定量的な指標を設定する
最初のポイントは、誰であっても容易に理解できる、シンプルかつ定量的な指標を設定することだ。「KPI」がわかりやすければ、どのように行動すれば良いのか判断しやすい。従業員のモチベーションも高められるはずだ。また、「KPI」が複雑であったりすると管理や分析もしにくいので、結果的に生産性の低下につながりやすくなってしまう。●事業フェーズに応じた適切な指標を設定する
実績を踏まえて、問題点を分析し「KPI」を再設定するなど、継続的にアップデートさせていく姿勢が求められる。あくまでも、中間指標であるのが「KPI」の利点だからだ。その強みを活かすためにもPDCAを繰り返し、スピーディーな意志決定や改善活動につなげていくことが大切になってくる。●取り組みの優先度を決める
「KPI」が多いと、リソースが分散し十分な成果が得られない可能性がある。それだけに、「KPI」の優先順位を明確にしなければいけない。順位を決める際には、上位の「KPI」に対する影響度や実現性の高さを考慮しよう。●ツールを活用して進捗管理する
「KPI」を効率的にマネジメントするには、ツールの活用が有益だ。具体的には、MA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援システム)などだ。これらのツールを活用すれば、数値のデータ化やチーム全体での情報共有が迅速かつ容易となる。さらに、各ツールを連携して情報を一元管理すれば、より大きなメリットが期待できる。●定期的に見直す
「KPI」は一度設定したら終わりではない。定期的に見直し、成果や改善点を把握していかなくてはいけない。場合によっては、ブラッシュアップも必要となる。そのためにも、チームで目標に対する現状の成果を把握・分析するとともに、得られたノウハウや知見を共有することも重要となる。「KPI」設定におけるよくある失敗例
「KPI」を設定する際に陥りがちなミスを取り上げたい。これは、「SMARTの法則」の逆パターンに集約される。すなわち、「逆SMART」だ。この形式で「KPI」を設定してしまうと、目標達成までのロードマップが描きにくくなる。・Not Specific:「曖昧な」
人によって解釈が変わってしまう「KPI」は設定すべきではない。例えば、「社内コミュニケーションの活性化」という指標は、何をもって活性化とするのか基準が不明確で、評価者によって全く異なる判断がなされてしまう。・Not Measurable:「測定できない」
目標達成に向けた進捗を数値化できない、達成状況を測定できないなどといった「KPI」は設定してはいけない。例えば、「ブランドイメージの強化」という目標を具体的な測定方法や指標なしに掲げると、何をもって達成とするか判断できない。・Not Achievable:「達成不可能な」
あまりにも高すぎる目標を設定してしまうと社員のモチベーションが下がってしまう。仮に新規事業部門に対して、立ち上げ初年度から既存事業並みの利益率を求めるKPIを設定しても、チーム全体が早々に挫折感を味わってしまうことになる。・Not Relevant:「不適切な」
戦略との関係がわかりにくい項目は設定すべきではない。品質向上を重視する製造部門に対して単純な「生産数量」だけをKPIにすると、品質を犠牲にした数量追求が起こり、最終的な顧客満足度や返品率の悪化を招くことがある。・Not Time-bound:「期限を定めていない」
いつまでにと設定されていないと行動を起こす気持ちになりにくい。例えば、「新規顧客開拓100社」という目標を掲げても、四半期ごとの達成目標や最終期限がなければ、多くの社員が期末に慌てて活動を増やすといった非効率な行動パターンを生み出してしまう。「KPI」活用の企業事例
最後に、効果的に「KPI」を設定・活用し、成果を上げた企業の事例を紹介する。●丸井グループ
丸井グループは「人の成長=企業の成長」という経営理念の下、サステナビリティとWell-Beingを収益と両立させるため、グループ全体で多様なKPIを導入している。特に注目すべきは、多様性推進の取り組みだ。2014年3月期から開始した女性活躍推進プロジェクトでは、「女性イキイキ指標」という独自のKPIを設定し、男女の多様性に関する本質的な課題に取り組んできた。その結果、2019年3月期以降は男性社員の育休取得率が5年連続で100%を達成し、女性の上位職志向も大幅に向上したという。そうした先進的な取り組みが高く評価され、同社は、8年連続で女性活躍に優れた上場企業「なでしこ銘柄」に選定されてもいる。
●トヨタ自動車
日本のモノづくりを代表するトヨタ自動車の生産方式は、徹底的なムダの排除とジャストインタイム(JIT)のシステムにより、「必要なものを、必要なときに必要な量だけ造る」という効率性を追求している。このトヨタ生産方式において、現場の状況を正確に把握するために活用されているのが「KPI」だ。稼働率、不良率、生産稼働率、設備稼働率などの指標を可視化することで、ムダの特定と継続的な改善を実現している。また同社は、全従業員が心身ともに健康で安全な環境で活躍できる職場づくりも重視しており、健康・安全に関する「KPI」を会社総括安全衛生管理者が選定し、全地域・全職場で取り組みを推進している。
●JAL
JALは2010年の経営破綻から驚異的なスピードで再建を果たした。再建過程で重視したのが、LCCとは一線を画すフルサービスを提供する「JALブランド」の確立である。「お客さまに最高のサービスを提供する」という企業理念の下、「定時到着率」を重要な「KPI」として設定。定時運航のための情報収集強化や、全社員による機内清掃、手荷物搭載時間の短縮など様々な業務改善を実施し、顧客満足度の向上に成功した。その結果、2015年には「定時到着率世界一」を達成。さらに2024年には、国内線・国際線を合わせた運航実績において、アジア・パシフィック部門で1位を獲得するなど、顧客満足度と業績の両面で成果を上げている。現在はコロナ禍からの回復期を成長への転換期と位置付け、「事業戦略」「財務戦略」「ESG戦略」を経営の3本柱とし、各分野で明確な「KPI」を設定して社会課題にも積極的に取り組んでいる。
まとめ
「KPI」は、目標の達成に向けたプロセスを管理する指標だ。これを設定することで、組織や個人が何に取り組むべきかが明確になるだけでなく、そのパフォーマンスに合わせて軌道修正もかけやすい。ポイントとなってくるのは、指標の状況をスピーディーに把握できるデータ環境が構築されているかどうかだ。必要なデータを収集・管理して、「KPI」マネジメントを高度化していくためにも、IT環境を整備しておく必要がある。具体的には、ITツールの活用を推奨したい。社内で一度検討してみてはどうだろうか。「プロジェクトマネジメント」に関する資料ダウンロード、セミナー、サービス、ニュースなどの最新コンテンツはこちら
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